日本におけるマガン(
Anser albifrons)の主要な中継地となっている北海道石狩泥炭地の宮島沼を対象に,渡り性水鳥の飛来が湖水の栄養塩濃度に及ぼす影響を調べた.水収支および水の流入出による全窒素(TN)と全リン(TP)の移動量を,2007・2008 年の湖水の非結氷期(4 ~ 11 月)に調べた.栄養塩収支の残差を水鳥の飛来期と不在期で比較することで水鳥の影響を評価した.水鳥による負荷は,マガン飛来期の前半において,TN で11 ~ 18 kg d
-1,TP で2.0 ~ 3.6 kg d
-1 を示した.これらの負荷は,同じ時期にあたる非灌漑期の流入水による栄養塩供給量に対し,TN で1 ~ 3 倍,TP で4 ~ 30倍程度となり,とくにTP の供給源として水鳥の影響の大きさが示唆された.宮島沼の富栄養化抑制のためには,流入水による栄養塩供給量の削減だけでなく,水鳥による負荷の削減も重要であると考えられた.
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