和歌山保健看護学会誌
Online ISSN : 2760-3555
Print ISSN : 2435-1512
最新号
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原著
  • 阪口 将登, 宮井 信行, 納谷 和真, 小林 啓晋, 中 律子, 有田 幹雄
    原稿種別: 原著
    2026 年16 巻1 号 p. 5-11
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル 認証あり

    【目的】高齢心不全患者を対象に,在宅での運動習慣が1 年後の骨格筋量およびサルコペニアの変化に及ぼす影響を検討した.

    【方法】対象者は,某A病院で心臓リハビリテーションを2021年9月から2022年12月まで継続した患者31名(平均年齢77±9歳,男48%)であった.対象者には,リハビリテーションの開始時および1年後に骨格筋量,握力,歩行速度を測定した.骨格筋量は四肢筋量を身長で補正した骨格筋指数で評価した.また,サルコペニアは,Asian Working Group for Sarcopenia 2019の基準を用いて判定した.運動習慣は,屋外での散歩を週3回以上かつ週に90分以上実施している場合と定義した.

    【結果】対象者のうち,散歩を習慣的に行っていたのは17名(55%)であった.運動習慣のある群では,1年後に骨格筋指数が微増したのに対して,運動習慣のない群では減少し,群間で開始時からの変化量に有意な差が認められた(0.11±0.06kg/m2 vs. -0.21±0.07kg/m2,P=0.003).また,重回帰分析では,年齢,性別,開始時の値を調整しても,運動習慣の有無が骨格筋指数の変化量と有意に関連していた.一方,握力および歩行速度は群間に有意な差はみられず,サルコペニアの有病率についても,運動習慣の有無との間に明確な関連を認めなかった.

    【結論】高齢心不全患者において,在宅での散歩の継続は1年後における骨格筋量の維持に寄与したものの,筋機能の維持・向上を含むサルコペニアの改善には,レジスタンストレーニングなどを組み合わせた包括的な介入が必要と考えられた.

  • 辻 久美子, 宮井 信行
    原稿種別: 原著
    2026 年16 巻1 号 p. 12-19
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/13
    ジャーナル 認証あり

    【目的】高血圧は末梢血管の硬化や血管反応性の低下を通じて末梢循環を阻害し,冷えの誘因となることが報告されている.本研究では,地域在住の中高齢者を対象に,客観的な冷えの指標である前額部と手指先部の温度較差と血圧レベルとの関連を検討した.

    【方法】対象者は,和歌山ヘルスプロモーション研究に参加した県内に在住する住民885名(年齢:62.5±8.8歳)であった.赤外線サーモグラフィを用いて前額部および手指先部の皮膚温を測定し,両部位の温度較差を算出した.血圧は,座位にて安静を保持した後に,左上腕部より2回測定し,その平均を代表値とした.

    【結果】皮膚温は,前額部が33.3℃,手指先部が28.3℃で,温度較差は5.0℃であった.高血圧管理・治療ガイドラインによる血圧区分で比較したところ,温度較差は血圧レベルが上昇するにつれて連続的に拡大した.また,この変化は降圧薬の非服用者に比べて,服用者で大きい傾向にあった.さらに,温度較差8℃以上を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行った結果,高血圧の有無は,年齢,性別,体脂肪率,喫煙,飲酒,身体活動の影響を調整後も独立の規定因子であった.

    【結論】血圧レベルの上昇は末梢皮膚温の低下を介して前額部と手指先部の温度較差を拡大させることが示唆された.また,降圧薬による適正な血圧管理がその影響を軽減する可能性が示された.

研究報告
  • 川邊 哲也, 樫葉 雅人, 宮井 信行, 有田 幹雄
    原稿種別: 研究報告
    2026 年16 巻1 号 p. 20-28
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/13
    ジャーナル 認証あり

    【目的】過大な血圧変動は心血管疾患の発症リスクとされる.本研究は,腸内細菌叢の変化が血圧変動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

    【方法】高血圧の治療歴がない集団健診参加者を対象とした.糞便サンプルを用いた16SrRNA解析により,α多様性指数の1つであるシャノン指数および属レベルでの各腸内細菌の相対比率を算出した.さらに,2週間連続の家庭血圧測定から得られた日内および日間の血圧変動との関連を解析した.

    【結果】16名(平均42.4歳)を解析対象とした.シャノン指数が低いほど,起床時の収縮期および拡張期血圧が高く,起床時収縮期血圧の最大日間差が大きいという関連が認められた(p<0.05).一方,この日間最大差を中央値で二分した群間比較では,各腸内細菌の相対比率に有意差は認められなかった.

    【結論】腸内細菌多様性の低下は,家庭血圧で評価した起床時血圧レベルの上昇および一部の中期血圧変動指標の増大と関連していた.

実践報告
  • 福井 早苗, 辻 久美子, 山田 ゆかり
    原稿種別: 実践報告
    2026 年16 巻1 号 p. 29-37
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/13
    ジャーナル 認証あり

    【目的】産褥早期のシミュレーション演習の実践内容と得られた成果についてまとめ,教育的意義と今後の課題について考察する.

    【方法】看護系大学3年次生を対象に講義2コマを用い,4~5名の小グループで模擬患者へのロールプレイと振り返りを3回繰り返した.1回目は観察項目の抽出,2回目はアセスメント視点に基づく分類,3回目は情報を用いたアセスメントを課題とし,最後にグループで共有・統合した.

    【結果】演習を通じて学生の観察項目は増加し,情報収集や臨床判断の精度が向上した.即時の振り返りによって知識の定着が促進される一方,模倣による形式的対応も一部に見られた.

    【考察】本研究により,産褥早期のフィジカルアセスメントに関するシミュレーション教育は,看護学生の観察力や臨床判断力の向上に有効であることが確認された.一方で,形式的な模倣行動が課題となり,今後はシナリオの多様化や内省支援の強化が求められる.

研究ノート
  • −感染対策研修の受講歴・WHO手指衛生ガイドラインの理解 ・看護師経験年数に焦点をあてて−
    赤井 美智代, 池田 理恵
    原稿種別: 研究ノート
    2026 年16 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/13
    ジャーナル 認証あり

    【目的】地方中規模病院の病棟看護師を対象に,WHO「手指衛生の5 つのタイミング」に基づく手指衛生の実施状況を把握し,その関連要因を明らかにすることを目的とした. 関連要因として,感染対策研修の受講歴,WHO手指衛生ガイドラインの理解,看護師経験年数に焦点を当てた.

    【方法】2021年10〜11月に無記名自記式質問紙調査を実施し,67名から有効回答(有効回答率90.5%)を得た. 質問項目は感染対策研修の受講歴,WHO手指衛生ガイドラインの理解,看護師経験年数と,16の看護ケアにおける手指衛生実施状況とした. 基本属性は単純集計し,手指衛生は4段階尺度を得点化・二値化した. 研修受講歴とWHO手指衛生ガイドラインの理解との関連はフィッシャーの正確確率検定で検討し,経験年数4 群の差はKruskal–Wallis検定を用いた.

    【結果】「オムツ交換前」の手指衛生の実施においてのみ,研修受講歴による有意差がみられた(p=.03). WHO手指衛生ガイドラインの理解は,いずれの看護ケアにおいても手指衛生の実施と関連を示さなかった. 看護師経験年数では,清拭前・検温前・吸引前で差がみられ,0–4年群および20年以上群で実施率が高かった.

    【考察】手指衛生の実施には経験年数が最も強く関連し,中堅層で遵守率が低下することが示唆された. 新人教育や熟練者の経験は実施率向上に寄与する一方,知識提供のみでは行動変容に結びつかない可能性がある. 経験段階に応じた教育内容の最適化と実践を支援する環境整備が必要である.

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