薬局薬学
Online ISSN : 2434-3242
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最新号
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総 説
  • 武田 真莉子
    2025 年 17 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2025/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

    GLP-1受容体作動薬は,抗糖尿病作用に加え,多様な生理活性を有し,その重要性がますます高まっている.近年,作用時間の延長を目的とした分子の化学修飾が進められ,超持効性の薬物動態を持つアナログであるセマグルチドが開発された.さらに,セマグルチドは注射剤だけでなく,経口製剤であるリベルサス®が誕生し,2型糖尿病患者に新たな治療選択肢を提供している.本稿では,まずリベルサス®錠の臨床開発の概要を紹介し,その開発成功の鍵となった経粘膜吸収促進剤「サルカプロザートナトリウム(SNAC)」について解説する.具体的には,SNACの開発の歴史,物性,安全性,薬物間相互作用,およびSNACによるセマグルチドの吸収促進機構に焦点を当てる.セマグルチドは胃で吸収されるという特異な特性を持ち,さらに,錠剤の約80%がSNACで構成されるという点で従来の製剤とは一線を画す.そのため,服用前の絶食時間,服用後に最初の食事を摂るまでの時間,飲料のpH,飲水量といった要因が,セマグルチドの胃吸収に大きな影響を及ぼす.適切な服薬指導と管理を徹底することで,リベルサス®の臨床効果を最大限に引き出し,より良い糖尿病治療につながることが期待される.

  • 小林 道也
    2025 年 17 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2025/03/05
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,情報通信技術の急速な発展を背景に,デジタルトランスフォーメーション(DX)が様々な分野において推進されている.医療においても厚生労働省を中心にしていくつもの施策が検討・実施されており,すでに保険薬局の業務にも大きく影響している.マイナンバーカードによる患者の医療情報の閲覧や電子処方箋はその一つであり,薬局における調剤時には正確な患者情報をリアルタイムに得ることができるようになる.これらの情報を用いて保険薬局薬剤師は業務の効率化を図るとともに,患者に寄り添った業務を行うことができるようになる.また,医療DXの利活用を通じて薬局薬剤師による臨床研究を行い新たなエビデンスを構築することは,医療の質の向上にもつながることが期待される.

原 著
  • 村上 晴美, 中原 麻佑, 面谷 幸子, 名徳 倫明
    2025 年 17 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/10/03
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,薬局薬剤師も患者を中心とした治療への参画が求められている.外来診療において個々の患者に応じた対応を行うためには,医療機関との患者情報の共有が必要となる.本調査では保険薬局での投薬時に患者が薬局薬剤師から提供を希望する情報を把握することを目的にアンケート調査を行った.外来時に医療機関での情報が保険薬局にすぐに伝わっていると思う患者は56.3%であった.薬局薬剤師から提供を希望する情報は「副作用とその程度」が最も多く,次いで「処方変更理由」「処方意図」であった.医療機関に提供を希望する内容は,「残薬があること」が最も多かった.さまざまなオンラインシステムを利用した即時性のある情報共有システムが構築される中,薬局薬剤師が患者の希望する情報を正確に伝え,地域医療における薬物治療に貢献できるようにするためにも,保険薬局—医療機関間の情報共有の内容の検討を行っていく必要があると考える.

  • 染谷 光洋, 樋浦 一哉, 吉田 莉子, 西田 愛, 川田 悠貴, 石尾 有司, 木下 隆市, 山下 美妃, 谷口 亮央, 中島 史雄
    2025 年 17 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/10/09
    ジャーナル オープンアクセス

    電話による服薬フォローアップを契機に提出されたトレーシングレポート(TEL/TR)を分析し,有効性の評価を行った.期間内に提出したTEL/TRは907枚であり,TR全体の46.5%(907/1,952枚)を占め,電話連絡が重要な情報源となっていた.内訳は,副作用・アレルギー関連:1,387件,病識・薬識・生活環境関連:603件,併用薬・用法用量・剤形関連:33件,服薬アドヒアランス関連:452件(TR1枚あたり複数件の報告あり)であった.処方提案を含むTRは140件あり,その内68件は提案通りに処方が変更された.また変更されなかった場合の理由を22件,調査できた.処方提案という形での記載はないが,TRで患者状況を医療機関側に報告した後に,処方などが変更された事例が106件あった.服薬フォローアップから得られた情報を医療機関へ提供することにより,次回診療時にその情報が活用され,薬物治療をサポートする一助になっていることが明らかとなった.

  • 櫻井 秀彦, 伊藤 敦, 平井 里奈, 岸本 桂子, 丹野 忠晋, 谷川 琢海, 古田 精一, 奥村 貴史
    2025 年 17 巻 1 号 p. 30-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/10/28
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,保険薬局における医療機関との患者情報の授受と地域医療情報連携ネットワーク(以下,NW)参加の現状,併せてそれら関連要因のアンケート調査を実施し,分析した.NWに参加している薬局は調査回答のあった159店舗中14店舗であり,その割合は少なかった.検定の結果,NW参加薬局は在宅患者数や患者情報の授受実績のある医療機関数などが,不参加の薬局に比べ有意に多かった.また,回帰分析の結果,これらがNW参加の関連要因であることが示された.さらに,費用負担がない前提では,情報授受の不便さがNW参加意向に関連した.反対に,NW参加に対して一定数の消極的な回答者群が存在した.以上の関連要因は,“患者のための薬局ビジョン”や地域包括ケアシステムでの主体的役割を担うことにも関連することから,薬局のNWへの参加は薬局機能の向上に資する可能性が高いことが示唆された.また,NWの普及には,費用対効果の明示の重要性が示唆された.

  • 面谷 幸子, 龍野 祥一, 岩浪 亮人, 中原 麻佑, 名德 倫明
    2025 年 17 巻 1 号 p. 42-53
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本邦では,液体栄養と半固形栄養,それぞれの在宅経管栄養に係る肉体的・精神的負担を調査・比較した報告はない.本調査ではケアマネジャー・訪問看護師を通じ,在宅経管栄養患者(液体群96名,半固形群93名)の主たる介護者に栄養・水分管理状況について聞き取りを行うとともに,経腸栄養剤の投与操作を行っている方の肉体的・精神的負担感を調査した.結果の概説として,1日の投与熱量は両群とも約1,000 kcalであり,投与時間は半固形群が有意に短く,両群共に一切水分の追加投与が行われていない人も一定数存在し,半固形群は液体群より内服薬の種類数が有意に多かった.経腸栄養剤投与の負担感の程度は両群で違いは無かったが,負担を感じる内容には違いがみられ,半固形では内服薬投与の準備や注入に力が必要な点,液体では投与時間が長い点が負担となっていた.これらの軽減のために,多職種による連携と介入が重要であると考えられた.

  • 倉橋 翔太郎, 松野 純男, 髙橋 克之, 山口 眞希, 石川 佳奈, 山本 卓資, 川畑 篤史, 大鳥 徹, 榊原 幹夫
    2025 年 17 巻 1 号 p. 54-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/21
    ジャーナル オープンアクセス

    高齢者では肌の乾燥が亢進し,痒みをもたらすことが知られている.長期にわたる痒みはQOL(quality of life)を低下させるため,介護の現場では高齢者の適切なスキンケアが求められる.そこで住宅型有料老人ホームに勤務する介護者の外用薬塗布に関する理解度向上を目的として,入居患者の痒み症状の確認と介護者に対するアンケートを用いたスキンケアの実態調査を行い,薬剤師の指導により患者の痒みや介護者の理解度が改善されるか確認した.その結果,介護者の薬剤に対する理解度は指導前後において多くの項目で改善が見られた.また患者の約半数に痒みが認められ,薬剤師の指導後に患者の痒みNRS(numerical rating scale)は有意(p<0.001)に低下していた.薬剤師が介護者に対して指導を行うことで介護者の外用薬に関する理解度が向上し,介護者の理解度が向上することで患者に対し適切なスキンケアが実施され,患者の痒みの軽減につながる可能性が示唆された.

  • 野口 岳史, 長谷川 佳孝, 伊藤 将, 月岡 良太, 大石 美也
    2025 年 17 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/12/09
    ジャーナル オープンアクセス

    抗血小板薬2剤併用療法による消化管出血について,そのリスク増加や発現時期の傾向を,出血部位ごとに評価した研究はほとんどない.本研究では,日本国内の有害事象報告データベースを用いて,抗血小板薬2剤併用療法によるリスク増加と発現時期の傾向を評価した.有害事象自発報告データベースより上部消化管出血および下部消化管出血の症例を抽出し,アスピリンとP2Y12阻害薬の単剤群と併用群に分けて調整報告オッズ比を比較した.また,消化管出血発現までの日数を計算し,その分布から発現パターンを特定した.その結果,アスピリンとP2Y12阻害薬の併用は上部消化管出血の発現リスクを増加させる可能性が示唆され,上部消化管出血と下部消化管出血では異なる発現パターンが示唆された.これらの結果は,抗血小板薬2剤併用療法の施行時に,薬局薬剤師が計画的に消化管出血をモニタリングすることの重要性を示唆している.

  • Taiki Nagatomo, Mihiro Kanai, Mitsuyoshi Fukuda, Manabu Shimazaki, Yos ...
    2025 年 17 巻 1 号 p. 74-85
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/12/19
    ジャーナル オープンアクセス

    Background: In Japan, prescribing syrup formulations is the mainstay of drug therapy for pediatrics. Pharmacists measure the prescribed amount of these solution syrups using an easy-to-use metering glass. However, when measuring high-viscosity syrup in portions, some of the syrup may remain on the inner wall of the metering glass, significantly reducing the accuracy of the measured volume. Objective: The purpose of this study was to improve dispensing accuracy by identifying the syrups with the lowest amount of residue in the metering glass among the original and four generic syrups for pediatrics containing ambroxol hydrochloride. Methods: Three metering glasses made of different materials (glass, polypropylene, and polymethylpentene) were used and residual adhesion rate was calculated from the amount of syrup remaining on the metering glass. Results: In all metering glasses used for the measurements, the original syrup containing ambroxol hydrochloride had a higher viscosity and a significantly higher residual adhesion rate than its generic products. Conclusion: It was suggested that selecting generic drugs with low residual adhesion rates for syrups containing ambroxol hydrochloride improves the accuracy of dispensing syrups.

ノート
  • 黒川 瑞己, 武田 香陽子, 阿部 孝行, 北村 哲, 一宮 知佳子, 渡辺 一弘
    2025 年 17 巻 1 号 p. 86-100
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/09/13
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    本研究は視覚障がい者が薬を管理する方法と体調変化があった場合の対応方法について調査し,薬剤師として求められているサポートや服薬指導方法を検討した.調査は2023年5月~8月に視覚障がい者に対して対面でアンケート調査を実施した.結果,「薬に関して困ったこと」の質問に関する回答では重度の視覚障がい者(30名)は「ある」が16名(53.3%),「薬の情報を理解するのが難しい」が6名(20%),「薬を購入する時に選ぶのが難しい」が4名(13.3%),「薬の管理が難しい」が5名(16.7%),「薬を服用する時に見分けるのが難しい」が8名(26.7%)等であった.薬剤師は視覚障がい者に同じ質のサポートができるよう,薬局間での対応方法をQRコードのような音声データを導入して共通化し,必要な情報を提供するなど,最新技術を利用しながら今後さらに視覚障がい者への対応を検討する必要があると考えられた.

  • 牛田 誠, 宮川 弘考, 安藤 希, 長谷川 洋一
    2025 年 17 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/09/20
    ジャーナル オープンアクセス

    薬剤師による,薬剤使用期間中の患者フォローアップ(以下,患者フォロー)の重要性が唱えられている.しかし,どのようなケースでどのように行うかなどの検討が不足している.そこで,糖尿病治療薬の処方変更時に行われた患者フォローについて,後方的な調査を行った.結果,66%の患者に患者フォローが実施されており,複数の服薬アドヒアランス不良や有害事象の発現が確認されていた.若年層では実施率が低い一方で,有害事象の発現やその他相談事項に関する対応が多くみられた.また,かかりつけ薬剤師の有無との関連が認められた.以上より,患者フォローは,患者の有害事象や疾患に関する不安解消に有効であり,薬物療法を安全で安心して継続するための意義が大きいと考える.一方で,より効率的かつ効果的な患者フォロー実施には,実施方法や実施時期の検討,かかりつけ薬剤師機能を利用した患者フォローの患者理解が必要であると考えられた.

  • 伊野 陽子, 志賀 美月, 玉木 啓文, 長内 理大, 井口 和弘
    2025 年 17 巻 1 号 p. 108-116
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/11/01
    ジャーナル オープンアクセス

    無菌製剤処理に対応できる薬局は非常に少なく,2012年に無菌調剤室の共同利用が可能となったが利用実態に関する報告は少ない.そこで薬局における無菌製剤処理と共同利用の現状と課題を明らかにすることを目的として,岐阜県内の在宅医療対応が可能な薬局に対しアンケート調査を行った.調査項目は薬局の基本情報と無菌製剤処理に関する現状や今後の考えとした.共同利用や他薬局の紹介を含め無菌製剤処理に何らかの対応が可能な薬局は35.1%(91/259)であったが,実際に無菌製剤処理への対応を行った薬局は,自店単独または共同利用で対応可能な薬局57軒のうち7軒(12.3%)であり,うち共同利用は1軒のみであった.無菌製剤処理への対応の可否を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,地域連携薬局の認定,在宅実施の2項目が無菌製剤処理への対応可能な割合を有意に増やす因子であった.無菌製剤処理と共同利用の現状や対応に関連する因子が明らかになった.

  • 髙橋 渉, 池田 佐和子, 丸一 泰雅, 南 泰博, 岡野城 智美, 島村 香織, 斎藤 大樹, 加藤 慎一, 吉村 知真
    2025 年 17 巻 1 号 p. 117-125
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/12/26
    ジャーナル オープンアクセス

    2023年6月に販売開始されたフルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液の後発医薬品は,アラミスト点鼻液®とは異なるデバイスを有するが,その影響は十分に検証されていない.本研究は,アラミスト点鼻液®から後発医薬品への変更に対する患者評価を調査し,後発医薬品選択の参考情報を提供することを目的とする.2023年9月1日から11月30日に11薬局で切り替えた85名に対し,物理的特性,操作性,使用後の感覚・経験に関する11項目の5段階評価およびデバイスの選好についてアンケートを実施した.物理的特性と操作性では評価が分かれたが,使用後の感覚・経験に差はなかった.デバイス選好は後発医薬品26人(30.6%),先発医薬品30人(35.3%),どちらでもよい29人(34.1%)であった.物理的特性と操作性の評価は異なり優劣の判断は難しいが,使用後の感覚・経験に差はなかったため,デバイス変更時には丁寧な説明が必要である.

  • 近藤 慎吾, 前瀬 鞠, 古堅 彩子, 岩田 紘樹, 小林 典子, 山浦 克典
    2025 年 17 巻 1 号 p. 126-135
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    [早期公開] 公開日: 2024/12/26
    ジャーナル オープンアクセス

    腎機能評価に必要な検査値は薬局で入手困難であるため,over the counter(OTC)医薬品販売時に腎機能を加味した介入が難しい.そこで本研究では,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の一般用・要指導医薬品情報検索サイトを用いて,腎機能低下者に注意が必要なOTC医薬品を特定し,同一成分の医療用医薬品の添付文書と腎機能関連の注意表記を比較して課題を明らかにすることを目的とした.要指導・第一類医薬品の添付文書の「使用上の注意」に注意表記があったものは,要指導医薬品で64%(9/14件),第一類医薬品で80%(107/134件)みられた.ファモチジンやニザチジンを含むOTC医薬品では,通常用量が医療用医薬品よりも減量され,さらに腎機能低下者への使用が禁忌となっていた.保険薬局で腎機能測定を可能にすることで,OTC医薬品の適応範囲拡大,セルフメディケーションの推進につながると考える.

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