Adiantum属植物は世界に200種余りが知られ, アジア地区には約50種が分布している. そのうち世界的には20数種, アジア地区では約17種がその全草あるいは葉や地下部が薬用に供されるされている. 中国では一般に清熱, 解毒, 利尿薬として, 咳, 皮膚病, 去痰, 通経, 赤痢, 蛇毒, 鎮痛, 炎症などに用いられており, またインドをはじめとするアーュルウェーダ医学の系統をもつ国々では, 去痰, 利尿のほかに, 強壮薬や緩和薬, 収斂薬としても使用されている. しかしこれまで, 本属植物を基源とする生薬の基源解明に関する研究は全くなされておらず, また広い地域で多種が利用されているにもかかわらず, その利用情況は不明であった. 市場には通常全草品が出廻るため鑑別は比較的容易であるが, 刻まれたり破損した生薬も多く, 外形による鑑別が困難な場合も多い. 一方, 本属植物の内部形態に関する記載はわずかに見られるが, 系統的な研究はなく, 商品の鑑別には利用し難い. そこで本属植物に山来するアジア地区産生薬の内部形態による鑑別法を確立し, 市場品の基源を明らかにする目的で市場調査を行うとともに, アジア産の本属植物の比較組織学的研究を行った.
秦 (CHING) の分類によると, 中国及びその隣邦に分布する本属植物は7 sericsに分けられる. このうちseries
Caudata CHINGに属する植物は葉 (Fig.1-A) が1回羽状複薬で, その先端は通常鞭状に延長し地面に着ぎ, 幼根を生じ無性繁殖を行い, 小薬は平多くが非対称形, 少数のものが団扇形を呈するなどの点で平, 他のseriesとは大きく異なっている. 本seriesの植物はアジア地区に約14種が分布し, その内
A. caudatum L., A.
philippense L. 及び
A.capillus-junonis RUPR. の3種が薬川にされると記されている. 本報ではこの3種を含む中国及びその周辺諸国に分布するseries
Caudata植物7種の内部形態を検討し, 入手し得た市場品中本seriesに属するものの基源を明らかにしたので報告する.
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