山梨英和大学紀要
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最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 山本健吉・小林秀雄との関係をめぐって
    川島 秀一
    2023 年 21 巻 p. 1-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    本論稿の目的は、近代文学の精神史において、遠藤文学を改めて相対化することにある。そのために、その結節点として、山本健吉の『正宗白鳥』を置く。先ずは、終生その親交の変らなかった山本健吉との関係を検証しながら、健吉の遠藤文学への評価の内実、特に遠藤にとって、その文学的テーマの根幹ともなった「日本の風土」に対する認識と評価について考察する。前半では『海と毒薬』をめぐる二人の論争について、後半では『沈黙』と『侍』について、健吉の文学的立場や文学的創造の基盤を確かめ、批評家山本健吉の批判的な座標に改めて遠藤文学を映し出してみる。あわせて、両者のなかに現われる「日本人的キリスト者」についても、その意味を明らかにしたい。最後の章では、小林秀雄の「正宗白鳥の作について」(絶筆)に触れて、「信じるということ」をめぐって、「宗教と無意識」という問題について検証する。文学史において、「正宗白鳥」という水脈をたどるささやかな試みでもある。
  • 窪内 節子
    2023 年 21 巻 p. 17-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    臨床心理士資格取得者の増加により、臨床心理士の私設心理相談室の増加が予想される。その際に、臨床心理士の仕事は、医療だけでなく、教育、産業、司法、福祉など人間社会全体に関わる仕事として対象領域を広げることが重要と思われる。その実践する場として、まず筆者が運営する私設心理相談室の成り立ちやしつらえ等を紹介した。次に、実践例として、命の維持の選択に関する事例と、犯罪的家庭内騒動の事例の概要を示した。さらに、このような私設心理相談室を運営していくには、経済的基盤確保のためのNPO法人格の取得や、臨床心理士の質向上のための機関創設の必要性とSNSを利用した広報に参入する必要があることを示唆した。
  • 朴 憲郁
    2023 年 21 巻 p. 27-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    同じ1947 年に、「日本国憲法」と最初の「教育基本法」が施行された。この教育基本法の第一条に、教育の目的として人格の完成を目指すと明記された。また同年に施行された「学校教育法」によって、学校教育制度の根幹が定められた。2006 年12 月22 日に改訂された教育基本法の第一条も、最初の「教育基本法」を踏襲している。  教育基本法の制定から75 年を経て、戦後の民主主義の教育を受けた世代の人々にとって「人格」「個々人の尊厳」という言葉は馴染まれてきた。だがそれだけに、多様に語られる人格および人格教育の内容とは何か、それに対するキリスト教独自の理解と特性および今日的意義は何かが改めて問われている。それに答えて、神学およびキリスト教教育学の視点から一つの考察を試みる。その出発点として今回は特に、人格と顔との関連に注目し、第II 章においては近代日本の教育思想家における人格論へと視点を移して論じ、最後にキリスト教学校における人格教育の使命について言及する。
  • 甲府市立南中学校の事例
    根本 彰
    2023 年 21 巻 p. 37-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    戦後占領期に,連合国軍総司令部の指示により,教育改革の一環として学校図書館を設置して教育課程を支援する取り組み(図書館教育)が試行された。本稿では全国の教育委員会に先駆けて山梨県教育委員会が1949 年から実施した実験学校プログラム参加校のうちで,甲府市立南中学校が4年間実施した事例を同校報告書に基づいて検討する。初年度に文部省資料と先行事例を参考にしながら図書館指導を織り込む計画を立て,これを2年目にはリーディングガイダンスと名付けて実施しようとした。しかし3年目には生徒指導を中心とするガイダンスと名称を変え,4年目には事実上図書館教育の実施はうまくいかなかったと報告した。うまくいかなかった理由として,発足したばかりの新制中学校における生徒指導など,より困難な問題への対応を優先したこと,教員全体が合意して取り組んだものではなくまた実施するための専任職員が配置されたわけではなかったことがあった。
  • ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』におけるメルヴィル的含意とテクスト生成過程
    杉村 篤志
    2023 年 21 巻 p. 53-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    This paper seeks to redefine the autobiographical implications of allusions to Herman Melville in Jack Kerouac’s On the Road (1957) by analyzing the author’s alterations to the novel’s original 1951 scroll manuscripts. In a letter to his former mentor Elbert Lenrow dated on 28 June 1949, Kerouac noted, “Meanwhile, I’m making On the Road a kind of Melvillean thing, in spite of myself.” Kerouac’s alter-ego, Sal Paradise, calls his bohemian friend Dean Moriarty“ that mad Ahab at the wheel” during their return journey from San Francisco to New York. Interestingly, this suggestive allusion to Melville’s Moby-Dick (1851) does not appear in the original manuscripts. Meanwhile, Kerouac eliminated an overt allusion to Melville from the opening chapter of On the Road by striking out the original reference to the name of Ishmael, narrator of Moby-Dick. By so doing, Kerouac obscured the Melvillean overtones charged in his literary self-portrait as a son of his mother. In Desolate Angel: Jack Kerouac, the Beat Generation, and America (1979), Dennis McNally places special emphasis on 25-year-old Kerouac’s“ extraordinary dependence on his mother” who provided domestic support while leaving her son free to write his fictions. Kerouac’s identification of Dean as “that mad Ahab” and elimination of allusion to Ishmael from Sal’s self-portrayal would suggest a subtle shift in the author’s perspective on the possibility and condition of On the Road as a new form of American spiritual autobiography.
  • 初期詩篇と長篇について
    並木 信明
    2023 年 21 巻 p. 63-77
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
     愛するEstelle Oldham の結婚はWilliam Faulkner の心を動揺させ、1918 年Canada の英国空軍に入隊させた。第一次大戦の休戦条約により彼の飛行士になる夢は絶たれたが、彼は故郷に戻り、負傷した飛行士の将校の演技をするようになった。空中戦で撃墜されたという偽りの経験から、才能あるFaulkner は重傷を負った飛行士を最初は詩に、その後は小説に登場させた。時々海外から帰郷して長期滞在をしたEstelle Franklin はFaulkner の想像力の源泉であり、詩を献呈する対象であり、作品中のニンフや若い娘のモデルでもあった。戯曲The Marionettes の中で、彼はPierrot と彼のShade という二つのタイプのキャラクターを作った。Soldiers’ Pay, Mosquitoes, Flags in the Dust / Sartoris など初期長篇の登場者に彼らの子孫を見出すことができる。The Sound and the Fury のBenjy の中でこの二つのタイプは首尾よく一体化している。
  • 杉村 篤志
    2023 年 21 巻 p. 78-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    This paper seeks to explore F. Scott Fitzgerald’s narrative strategies in constructing“Winter Dreams”(1922) and The Great Gatsby (1925) as paired semi-autobiographical narratives. In a letter written in June 1925 addressed to his editor Maxwell Perkins, Fitzgerald refers to“ Winter Dreams”as“a sort of first draft of the Gatsby idea.” The relationship between Nick Carraway and Jay Gatsby can be seen as a transformation that mirrors the doubling of Dexter Green, the protagonist of “Winter Dreams.” In a letter to Ludlow Fowler written in 1924, Fitzgerald highlights the central theme of Gatsby.“ That’s the whole burden of [Gatsby ]—the loss of those illusions,”relates Fitzgerald, “that give such color to the world that you don’t care whether things are true or false as long as they partake of the magical glory.” By reexamining Nick and Gatsby as paired fictional instruments for the author’s conflicting impulses for voicing and muting, we can define the way Fitzgerald’s narrative agenda for displacement and identification creates an intimate space of empathy for the reader, narrator, and author.
  • 小林 一之
    2023 年 21 巻 p. 85-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    芥川龍之介の「死後」(1925)は、夢の中では死んでいるという設定の〈僕〉という話者によって語られる作品である。本論では、ジークムント・フロイトの夢解釈の理論を根拠として、ジャック・ラカンのシニフィアンの理論も参照し、作品内の夢を中心に分析した。
     作者は、〈僕〉という話者(語る主体)を、現実と夢の世界を往来して意識と無意識とを媒介する中間者的な存在として設定し、睡眠前の日常と入眠直前から、夢の場面を経て、覚醒後までの過程を語った。夢の記述を通じて無意識を開くことによって、芥川は生きることへの欲望をはからずも書いてしまった。フロイト的な無意識の露呈によって、作者芥川は末尾の一文に〈フロイドは――〉という言葉を召喚したのである。
     晩年の芥川は夢をモチーフとする小説を書き続け、自らの無意識を顕わにしていく。「死後」は、芥川龍之介の無意識の欲望、生への欲望が刻まれた小説である。
  • 「 私の大切な子どもたちへ」
    渡辺 信二
    2023 年 21 巻 p. 100-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
  • 地方・地域からの発信
    芦名 定道
    2023 年 21 巻 p. 133-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
  • グリーフケアの展開を手がかりに
    島薗 進
    2023 年 21 巻 p. 139-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
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