山口医学
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54 巻, 1 号
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総説
  • 神田 隆
    2005 年 54 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/09
    ジャーナル フリー
    中枢神経では血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB),末梢神経では血液神経関門(Blood-nerve barrier, BNB)が神経系の内外を隔てるバリアーの実体であるが,現在ではBBB,BNBは物質交換を妨げる単なる壁ではなく,現在では神経系に対する物質透過を選択する能動的なシステムであると考えられている.臨床的な立場からは,BBB,BNBは炎症細胞や各種液性因子が神経実質内へと侵入する際の窓口であると共に,難治性神経疾患治療薬が神経細胞・神経軸索へと到達するのを阻む最大の障壁ともとらえることが可能で,BBB,BNBの人為的な操作は各種神経疾患の新たな治療法開発へ新たな地平線を開くものである.
原著
  • 黒川 徹
    2005 年 54 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/09
    ジャーナル フリー
     クモ膜下出血 (SAH) 後の脳血管攣縮 (CV) は,患者の予後を左右する重要な病態である.しかし,その機序は十分に解明されておらず,治療法も確立されていない.患者の生命的/機能的予後を改善するためにも,CVの機序解明と,有効で非侵襲的な治療方法の確立が望まれる.
     臨床的に,CVに対してカルシウム拮抗薬による治療では十分な効果が得られないことから,CVの機序として,平滑筋のカルシウム非依存性収縮が注目されている.その一つにRhoA/Rho-kinase系が知られているが,我々の研究室ではRho-kinaseの上流因子としてsphingosylphosphorylcholine (SPC) の存在を突き止めた.SPCとCVの関係を明確にするために,SAH患者より採取した髄液のSPC濃度を測定した.また,イヌのSAHモデルとSPC投与モデルでCVを確認し,髄液中SPC濃度の測定も行った.
     SAH患者9例から採取した髄液を固相抽出法と三連四重極型質量分析計を用いてSPC濃度を定量した.Controlとして測定した正常圧水頭症3例では2.667±4.619 nMであったが,SAH患者のday8の髄液からは29.012±6.306 nMと有意に高値となっていた (p<0.01) .また,イヌの髄液中SPC投与 (髄液中にSPCが最終濃度100μM相当となるように注入) モデル (n=2) では,投与120分後は投与前に対して明らかな上昇は見られなかった.
     SPCは正常な髄液中には微量 (数nM) しか存在せず,SAH後の脳槽内髄液中には有意に上昇することがわかった.また,イヌの実験結果より,大量のSPCを投与しても,生体の髄液内ではすぐに希釈されることが推察された.このことから,SAH後の髄液内SPCは今回測定された定量値以上に多量に放出されていると思われる.以上から,SAH後のCVの一因としてSPCの関与が示唆された.
  • 三隅 俊吾
    2005 年 54 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/09
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者7名,正常7名に対し右手指対立運動を課題とした機能的MRIを用い,外的リズム・内的リズムの脳機能への影響を検討した.パーキンソン病群・正常群とも一次感覚運動野・補足運動野・両側小脳半球の賦活を認めた.パーキンソン病群では正常群に比較し一次感覚運動野・補足運動野・小脳半球の機能低下を認めた.パーキンソン病群の補足運動野は外的リズムに比較し内的リズムにより活動が改善する傾向にあった.パーキンソン病患者では外的リズムによる運動誘発と同様,学習された内的リズムが補足運動野機能改善に有用な可能性がある.
  • 吉井 英樹
    2005 年 54 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/09
    ジャーナル フリー
    新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome, RDS)を発症した極低出生体重児75例の血清中Krebs von den Lungen-6(KL-6)を出生時から生後3ヵ月まで1ヵ月毎に測定した.また,新生児慢性肺疾患(chronic lung disease, CLD)を発症したCLD群25例と発症しなかった非CLD群50例にわけて比較検討し,CLDにおける血清中KL-6測定の臨床的有用性について検討した.
    出生時の血清中KL-6値は在胎週数と出生体重に影響されずほぼ一定で,基準範囲は55~160U/ml(中央値102)/105±53U/ml(平均値±1.96SD)だった.また出生時の血清中KL-6値はCLD群と非CLD群で有意差は認めなかったが,両群とも出生時から生後1ヵ月にかけては有意に上昇し(p<0.0001),生後1ヵ月時の血清中KL-6値はCLD群が220.2±15.7U/ml(平均値±SE)で非CLD群の147.6±6.1U/mlに対して有意に高値を示した(p<0.0001).ROC曲線から得られた生後1ヵ月のCLD発症診断のカットオフ値は178U/mlで感度76%,特異度82%であった.
    RDSを発症した極低出生体重児における生後1ヵ月での血清中KL-6値>178U/mlはCLD発症の客観的指標となり,診断の補助として有用であると考えられた.
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