山口医学
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54 巻, 4 号
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総説
  • 日野 啓輔
    2005 年 54 巻 4 号 p. 103-108
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/09/19
    ジャーナル フリー
    著者は山口大学医学部第一内科入局以来,主にウイルス性肝炎の病態と治療に関する研究を行ってきた.本総説ではC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染機序と肝発癌機構についてわれわれのデータを紹介しながら考察を行った.HCVが末梢血単核球細胞内に感染することにより宿主の免疫応答から回避する可能性や,外被タンパク内に存在する超可変領域の変異を繰り返すことによる中和抗体からの逃避が持続感染機序の一要因と考えられた.こうしたHCV持続感染は究極的には高率な肝細胞癌の発生へと繋がるが,肝発癌にはHCVがもたらす酸化ストレスが関与していると考えられる.しかし,HCVのみの酸化ストレスでは肝発癌には不十分であり,酸化ストレスを増強する2nd hitが重要と考えられる.臨床的には加齢,アルコールなど酸化ストレス増強因子はいくつか上げられるが,われわれはC型肝炎病態の特徴の一つである肝内鉄過剰に注目しC型慢性肝炎の鉄過剰状態に類似したHCVトランスジェニックマウスを作成し,肝発癌機構の解析を行った.その結果,HCV感染における鉄過剰状態はミトコンドリア障害を引き起こし,酸化ストレスを増強することで肝発癌を促進することが明らかとなった.今後はこの発癌モデルを利用して,C型肝炎からの肝発癌を抑制しうる効果的な治療を開発したいと考えている.
ミニ・レビュー
  • 井上 宣子, 大草 知子, 名尾 朋子, 李 鍾国, 松本 奉, 久松 裕二, 佐藤 孝志, 矢野 雅文, 安井 健二, 児玉 逸雄, 松崎 ...
    2005 年 54 巻 4 号 p. 109-115
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/09/19
    ジャーナル フリー
    心筋細胞間のギャップ結合の発現・分布はコネキシン蛋白の半減期が短いことにより様々な病態において直ちに変化しうる.高頻度電気刺激 (RES) によるギャップ結合リモデリングへの効果はいまだ明らかにされていない.
    培養5日目のラット心室筋細胞に120分間3HzのRESを負荷した.RESによりCx43蛋白質および遺伝子発現量は60分後には有意に増加した.免疫染色においても同様の結果であった.心筋細胞中のangiotensinII (AngII) は15分後に約2倍に上昇した.MAPK系のリン酸化型ERKは2峰性に5分と60分で,またリン酸化型JNKも15分と60分で著明に活性化された.リン酸化型p38 MAPKは5分後に1峰性に活性化された.細胞外電位記録法により心筋細胞の興奮伝播特性の変化を解析したところ,RESにより伝導速度は有意に増加した.これらの変化はlosartanにより抑制された.RESによるCx43の発現増加はまたERK,p38の特異的阻害剤にても抑制された.
    RESは,早期より心筋細胞内のAngII産生を増加し,MAPK系を活性化することによりCx43発現量を増加させた.その結果,細胞間の刺激伝播異常を引き起こし,不整脈基質の一つとなる可能性が示された.
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