山口医学
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62 巻, 3 号
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報告
  • 笠岡 俊志, 戸谷 昌樹, 田中  亮, 宮内  崇, 金田 浩太郎, 河村 宜克, 小田 泰崇, 鶴田 良介
    2013 年 62 巻 3 号 p. 137-141
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
    山口県ドクターヘリは,国内で24機目のドクターヘリとして,平成23年1月21日に運航を開始した.運航開始から約2ヵ月後の3月11日,未曾有の大災害である東日本大震災が発生し,災害派遣医療チーム(DMAT)とともに山口県ドクターヘリにも出動要請があった.関係機関と協議の上,出動を決定し3月12日午前11時09分,医師1名,看護師1名および運航スタッフ(操縦士1名,整備士1名)2名で山大病院のヘリポートを離陸し被災地に向かった.3月13日午前10時45分,参集拠点の福島県立医大のグランドに着陸しDMAT本部に到着報告を行った.13日は宮城県災害対策本部からの要請により,宮城県総合運動公園から石巻赤十字病院に2名の患者搬送を行った.翌14日には大津波で甚大な被害を受け,孤立した石巻市立病院の入院患者をドクターヘリ5機で石巻総合運動公園まで搬送する避難支援活動を行った.ドクターヘリ1機で1回のフライトにつき担送患者1名と座位可能患者2名の合計3名を搬送した.日没までにドクターヘリのみで患者・家族合わせて91名の搬出を行い,さらに日没後に自衛隊機の協力を得て,全入院患者の搬出を完了することができた.山口県ドクターヘリでは入院患者・家族・スタッフなど合わせて約20名の搬送を行った.山口県ドクターヘリは14日の夕方には被災地を後にして,東京まで戻り,翌15日16時18分,無事山大病院に帰還した. 災害現場におけるドクターヘリの活用により「防ぎ得た死;preventable death」の減少が期待される.効果的な活動を行うためには指揮系統の確立が不可欠であり,そのために確実な通信手段の確保などの課題も明らかとなった.今回の貴重な経験を今後の災害現場活動に活かしていきたいと考えている.
  • 江見 咲栄, 福田 吉治
    2013 年 62 巻 3 号 p. 143-148
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
    山口大学医学部医学科4年生(当時)2名が,平成24年3月の4日間,東日本大震災の被災地の医療を研修するために,宮城県女川町を訪問した.女川町は,人口約1万人の町だったが,今回の津波により人口の1割近くの方が亡くなった.訪問した震災約1年後においても,がれきの残る平地のままの街の姿が,被害の大きさを表していた.研修を行った女川町立病院も地震と津波で大きな被害を受けたが,災害直後から,齋藤充院長のもと,入院患者や住民の救護にあたった.全国から多くの医師の支援を受け,急性期を乗り越え,訪問時には,一般診療に加えて,仮設住宅の訪問診療など,慢性期の災害医療に取り組んでいた.研修では,外来患者へのインタビュー,保健師や理学療法士等と一緒に,仮設住宅でのイベントへの参加や訪問リハビリへの同行を行った.多職種が連携しながら,被災地の住民の健康支援をする姿に,生活に密着した医療の必要性を強く感じた.また,元気で明るいスタッフや地域の方との多くの出会いの中で,自分自身が勇気づけられ,大学でのこれからの学習の大きなモチベーションとなった.女川の復興は少しずつ進んでいる.女川町立病院は女川町地域医療センター『輝望の丘』と変わり,家庭医によるプライマリ・ケアを中心とした地域医療を提供し始めた.大震災という経験を通じて構築される女川の医療は,これからの新しい地域医療の形として全国のモデルとなるだろう.
症例報告
  • 久保 秀文, 中須賀 千代, 多田 耕輔, 宮原  誠, 長谷川 博康
    2013 年 62 巻 3 号 p. 149-155
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
    われわれは異時性に胃癌と食道癌を重複した1例を経験した.順次的に放射線化学療法を行い比較的長期の病勢コントロールが得られたので文献的考察を加えて報告する.症例は69歳,男性.2009年11月心窩部痛を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で前庭部に3型の腫瘍を指摘され生検で腺癌であった.幽門側胃切除を施行し,術後DTX(docetaxel)+S-1療法を5コース投与した.術後1年目の上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道に凹凸不整な粘膜を認め,生検で扁平上皮癌と診断された.開腹すると広汎な腹膜播種を認め迅速病理で胃癌からの腺癌の播種性転移であった.CDDP+S-1を6コース投与し奏効した.その4ヵ月後に食道癌の再燃を認め,CDDP+S-1を4コース追加したが増悪を認めたため順次的に食道癌に対して放射線照射を追加し,腫瘍およびリンパ節転移は縮小した.その2ヵ月後に食道腫瘍の再燃が疑われたためDTX+CDGP療法を開始して現在,経過観察中である.
  • 大石 景士, 宇都宮 利彰, 村田 順之, 坂本 健次, 大藤  貴, 神徳  済, 上岡  博
    2013 年 62 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代男性.乾性咳嗽を主訴として近医を受診した.胸部聴診で喘鳴を認め,気管支喘息と診断され,6ヵ月に渡り吸入ステロイドを含む治療を受けたが症状の改善は認められなかった.胸部CT検査が行われ,気管狭窄を指摘されたことから当院に紹介受診となった.当院での胸部CT検査では気管狭窄に加えて右上肺野に微細粒状影と気管支壁肥厚が認められた.気管支鏡検査では,気管下部で内腔の発赤,腫脹,狭窄を認め,左主気管支には白苔を伴う潰瘍性病変がみられた.気管支洗浄液の抗酸菌塗抹検査で抗酸菌を認め,PCR法で結核菌陽性であったため,肺・気管支結核と診断した.抗結核療法により,肺野陰影および症状の改善が認められ,治療後の気管支鏡検査では,左主気管支の白苔は消失したが,気管下部は瘢痕狭窄を来していた. 気管支喘息の経過中に十分な治療を行っているにもかかわらず,症状が改善しない場合には,気管支結核の可能性を考える必要があり,喀痰検査や画像診断を適宜施行し,必要に応じて気管支鏡検査を考慮することが望ましい.気管支結核症は排菌率が高く,かつ病態の進展に伴い中枢気道の狭窄・閉塞をきたす可能性があるので,早期の診断・治療が必要である.
  • 久保 秀文, 中須賀 千代, 多田 耕輔, 宮原  誠, 長谷川 博康, 小野寺 学
    2013 年 62 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/11/20
    ジャーナル フリー
    われわれは急性の閉塞に対してステント留置を行い一期的な切除手術が可能であったS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.北海道を旅行中に突然の腹痛を来して地域の病院へ入院となった.検査でS状結腸に腫瘤を診断されたが,患者が地元(山口県)での手術を希望したため閉塞に対して金属ステントが留置された.ただちに腹痛は消失し多量の排便を認め,その後当院へ紹介入院となった.S状結腸切除術が施行されたが術後経過は良好であり術後第10病日目に軽快退院した.患者は現在も再発徴候なく健在である.急性の大腸閉塞に対して術前の金属ステント留置は侵襲が少なく複数回の手術を回避することができ有用な方法と考えられる.
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