日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
Print ISSN : 1345-9074
ISSN-L : 1345-9074
11 巻, 1 号
選択された号の論文の34件中1~34を表示しています
巻頭言
研修講演
ランチョンセミナー
特集 急性腰痛に対する脊柱矯正法の現況―適応,手技,効果,限界―
特集 腰痛に対する保存療法の理論と実践
  • 井口 哲弘, 笠原 孝一, 金村 在哲
    2005 年 11 巻 1 号 p. 85-91
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    腰痛に対する薬物療法(特にNSAIDs,筋弛緩薬,抗うつ薬)のEBMについてCochrane Reviewを中心に調査した.まずNSAIDsは急性腰痛に対して効果があるが消化器系合併症が問題となる.NSAIDs間の効果に違いはなく,鎮痛剤より効果があるかは中等度のエビデンスがあった.慢性腰痛に対する効果は証明されていないが,これは絶対的なRCT量の不足による可能性が強い.筋弛緩薬は急性腰痛に対して強いエビデンスがあるが,長期効果は証明されていない.検討された筋弛緩薬には非ベンゾジアゼピン系薬剤が多く,中枢神経系の副作用はプラセボの約2倍であった.慢性腰痛に対する抗うつ薬はプラセボと比較して,疼痛は軽減させるが日常生活の改善度は差がなく,抗うつ薬使用群は有意に眠気,口内乾燥感,フラツキなどの副作用が多い結果であった.欧米と本邦では薬剤そのものや,その分類法が異なり国際的な分類の統一と本邦独自のメタアナリシスが必要と思われた.
  • 宮本 雅史, 伊藤 博元
    2005 年 11 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    慢性腰痛に対する運動療法は重要な保存的治療法である.しかし現在の医療制度の中では,その治療効果についての科学的根拠が確立されていないという理由から,診療報酬を削減される危機に陥っている.従来のシステマテックレビューには個々の論文の間で慢性腰痛の定義や治療効果を判定するためのアウトカム指標が統一されていないことや,運動療法の種類や対照群の治療法がさまざまであるなどの問題点が指摘されている.近年,Liddle SDらはこれらの点に改善を加えた新しいシステマテックレビューを行い,運動療法は慢性腰痛患者に対し特に腰痛の特異的機能評価の観点から効果的に作用すると報告した.国内でも現在,慢性腰痛に対する運動療法に関する質の高いRCTが進行中であり,運動療法の有効性に対する評価を見直すべき時期にきているといえるであろう.
  • 矢吹 省司, 菊地 臣一, 添田 幸英, 菊田 京一
    2005 年 11 巻 1 号 p. 97-101
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    腰痛に対する物理療法(温熱療法と牽引療法)の理論と実際について述べた.温熱療法と牽引療法は,ともに効果発現機序の理論を裏づける研究が十分とは言えない.また,それらの有効性に関しても,現時点では「腰痛に対して,温熱療法や牽引療法が有効である」という科学的根拠はないと言わざるを得ない.腰部脊柱起立筋の筋硬度を指標として温熱療法と牽引療法の効果を腹臥位と前屈位で検討した.その結果,施行前の値に比して,牽引後は腹臥位での筋硬度が明らかに減少していた.また,ホットパック後は前屈位での筋硬度が明らかに減少していた.脊柱起立筋の筋硬度の解析は,温熱療法と牽引療法の治療効果発現の機序の解明に役立つ可能性があると思われた.今後,各種物理療法の組織に与える影響や鎮痛効果の作用機序の解明とともに,適切なrandomized controlled trial(RCT)を行って,科学的に物理療法の有効性を証明する必要がある.
投稿論文
  • Yoichi AOTA, Atsushi HONDA, Takayuki YAMASHITA, Noriyuki BABA, Tomoyuk ...
    2005 年 11 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    The invasive schwannoma in the spine is a rare clinical entity. There have been no reports of schwannoma arising from tuberculous spine. The authors report on a case in which invasive cystic schwannoma arose at old tuberculous spine and paraplesia progressed by the tumor. The tumor excision and resection of the sequestra achieved satisfying neurological improvement. Although development of cystic tumor in the tuberculous spine may be extremely rare, it should be considered in the differential diagnosis, especially when systemic symptoms of tuberculosis were absent.
  • 豊田 耕一郎, 金子 和生, 田口 敏彦
    2005 年 11 巻 1 号 p. 107-109
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    (はじめに)急性腰痛症に対するMcKenzie法について少数ながら試みたので報告する.(対象および方法)50歳以下で発症から2週間以内の急性腰痛患者でMcKenzie法を施行し,追跡調査できた11例を対象とした.男性6例,女性5例,平均年齢は30歳であった.併用療法は湿布のみである.初回の体操直後,翌日,1週間後に再評価を行い1週間後,1カ月,3カ月のVAS(0-100)を直接検診または電話で追跡調査した.従来の消炎鎮痛剤,湿布,腰椎牽引および電気治療を併用した急性腰痛患者9例を対照群(以下従来群)とした.(結果)運動直後の治療効果は腰痛が半減したものは8例67%であった.VASは初診時の(平均)52が1週間後に18,1カ月後に14,3カ月後に10と疼痛は軽減した.時期による疼痛消失の割合は1週間ではMcKenzie群27%,従来群33%であり,1カ月で18%,44%であり,3カ月以上で55%,28%であった.
  • 小西 均
    2005 年 11 巻 1 号 p. 110-114
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    心因的要因が疑われる慢性の腰痛および下肢痛に対して選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を使用した.対象および方法:症例は27例(男4例,女23例)で,平均年齢は64.6歳(23~86歳)であった.評価はVisual Analog Scale(VAS)にて痛みの評価をした.結果:VASが半減以上となった症例を有効と判断すると,有効16例(59%),無効11例(41%)であった.有効例(16例)においてVASの変化は投与前6.3(4~8)から投与後1.9(1~4)に改善した.心因性の関与の強いことが疑われる患者に対しては有効な治療法のひとつと考える.
  • 遠藤 健司, 駒形 正志, 西山 誠, 池上 仁志, 田中 恵, 山本 謙吾
    2005 年 11 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    画像診断にて原因不明な腰・下肢痛の中には,脊髄終糸の過緊張によって発症するものも存在する.今回,25例のTight filum terminale(以下TFT)に対して,終糸の切離を行った症例の術後経過を検討した.TFTの診断は,腰痛または下肢痛,膀胱直腸障害,脊椎不橈性,非髄節性神経障害,TFT誘発テストにより臨床診断を行った.手術は,終糸切離をS1高位で行った.術後の症状は全症例中,腰下肢痛の改善が96%に,筋力の回復が68%,知覚異常の改善が68%,膀胱直腸障害の改善は79%,体幹前屈制限の改善は80%で認められた.疼痛の経過は,VAS(Visual Analog Scale)で評価したが,術前の最大疼痛を10とすると,術後平均は3.3(0~7)であった.TFTは腰椎椎間板ヘルニアと鑑別を要するが,膀胱直腸障害の存在,MRI所見,誘発テストが陽性であることが異なる点である.画像診断で神経圧迫症状のない腰痛,下肢痛の鑑別診断としてtight filum terminaleを考慮する必要があると考える.
  • 鍋田 正晴, 佐藤 栄修, 百町 貴彦, 吉本 尚
    2005 年 11 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    1998年以降に当科で行ったヘルニアの再手術例49例の手術成績を検討した.このうち初回手術は他院が27例,当院が22例である.初回手術から再手術までの期間は7日~11年であった.再手術時,ヘルニア摘出のみを行ったのは42例で,固定術を追加したのは7例であった.ヘルニア摘出のみを行った42例のJOA scoreは術前平均11点から術後24.5点へ改善した.固定術を追加した7例は平均10.5点から25点へ改善し,全例骨癒合が完成し,現在のところ隣接椎間障害もない.再発ヘルニアに対する手術術式はヘルニア腫瘤の再摘出でおおむね良好な成績が得られ,第一選択の術式と考える.しかし,少数ではあるが,再発の繰り返しや,不安定性がある場合,あるいはヘルニア摘出に際して後方要素の破壊を要する例も存在し,このような症例に対しては固定術を追加すべきである.
  • 圓尾 圭史, 夫 徳秀, 李 一浩, 岡田 文明, 草野 芳生, 立石 博臣
    2005 年 11 巻 1 号 p. 126-130
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ(以下RAと略す)患者における頚椎病変についてはその治療法も確立されつつあるが,腰椎手術に関しては周術期合併症,骨脆弱性やinstrumentの緩みなど多くの問題があり,その治療に難渋することが多い.特にRA長期罹患例やステロイド使用例ではステロイド性骨粗鬆症により著しい骨塩量の低下をきたしている.またステロイド性骨粗鬆症の治療は近年めざましく変化しており,ガイドラインでも徐々にその対象が拡大され,より早期からビスフォスフォネートの投与が提唱されている.今回われわれは,第4腰椎椎体圧潰に対して前後法からの固定術を行い,固定椎間の骨癒合はすみやかに完成したが,その上位椎に次々と圧迫骨折をきたしその治療に難渋した症例を経験したので報告する.
  • 佐藤 公昭, 永田 見生, 朴 珍守, 神保 幸太郎, 横須賀 公章
    2005 年 11 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    L4/5あるいはL5/S1高位の腰椎椎間板ヘルニアに対して,同一術者が行った片側単椎間のMED法の初期症例とLove変法の各20例を比較した.MED法は,男性12例,女性8例,平均年齢32.8歳,高位はL4/5が8例,L5/S1が12例であり,手術時間平均85.1分,出血量44.2 gであった.Love変法は,男性13例,女性7例で,平均年齢36.9歳,高位はL4/5が9例,L5/S1が11例であった.検討項目は手術時間,術中出血量,歩行開始日,術後3日間の鎮痛剤使用回数とした.また,術前と最終調査時の状態についてVisual Analogue Scale(VAS)とRoland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)を用いたアンケート調査を行った.手術時間,術中出血量に有意差はなかったが,MED法では有意に鎮痛剤使用回数が少なく,早期離床が可能であった.またVASとRDQの値は両群間に有意差はなく同等に改善していた.
  • 瀬尾 理利子, 久野木 順一, 小林 篤樹
    2005 年 11 巻 1 号 p. 137-142
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者の腰椎椎間板ヘルニアの臨床像を検討した.【対象および方法】1988~2001年に手術を施行した60歳以上の腰椎椎間板ヘルニア59例を対象とし,臨床所見とMRI,ミエログラフィーまたはCT画像を調査した.【結果】年齢60~89(71.1歳),男性37例,女性22例で60・70歳代は男性が多かった.脊柱所見は,若年で前屈制限が多いが加齢に伴い後屈制限が増加した.Kemp徴候と歩行障害は,高齢者で高率にみられた.SLRテストの陽性率は年齢とともに減少し,その下肢挙上角度は年齢増加に伴い増大した.ヘルニア横位は,外側型ヘルニアの頻度が高かった.【考察】高齢者で神経根絞扼徴候を高率に認め,若年と比べADL障害が強かった.高齢者の臨床的特徴の原因は,加齢に伴う圧迫組織の変化や神経組織の脆弱性によるものと考えた.【結語】高齢者の腰椎椎間板ヘルニアでは,絞扼型神経根障害をきたしやすく画像所見上は脊柱管狭窄が明らかでなくても,combined stenosisとして対応すべき症例が多い.
  • 元文 芳和, 宮本 雅史, 今野 俊介, 中嶋 祐作, 堀口 元, 伊藤 博元
    2005 年 11 巻 1 号 p. 143-147
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    腰痛を主訴として外来を受診する患者の実態・経過を調査した.方法は書置き式アンケートで初診時,2週後,1年後の計3回行った.アンケートは449例に依頼し記載不備のものを除く359例を対象症例とした.内訳は男性160例,女性199例,平均年齢50.0歳であった.人体図を用いて疼痛の部位を記載する質問では72%は腰部に記載していたが,腰部に記載がなく臀部に印を付けていたものが18%にみられた.腰痛の既往は約80%にみられ,原因に関しては約半数があると回答した.治療歴は45%にあり,治療機関は他の整形外科が60%と最も多かったが接骨院が30%あった.外来カルテで知り得た腰痛の経過については軽快・治癒が20%,継続が11%,転医が3%であったが,237例については腰痛の経過は不明であった.腰痛の推移は2週間では19%で腰痛が消失し56%で改善していた.最終調査時では34%で腰痛が消失していたが,約30%は治療を継続していた.
  • Yoshihito SAKAI, Yukihiro MATSUYAMA, Naoki ISHIGURO
    2005 年 11 巻 1 号 p. 148-156
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    We evaluated the relative changes in tissue oxygenation during and after exercise in human lumbar muscle using near-infrared spectroscopy. Oxygenation changes in the trunk muscle were measured non-invasively using near-infrared spectroscopy (NIRS). The subjects analyzed were 111 volunteers over 60 year-old, comprised of two groups; the low back pain (LBP) group who complained of low back pain lasting more than 3 months and the non-LBP group who had no complaints of back pain. A near-infrared spectrophotometer was applied on the back, while maximally extending and bending the lumbar spine for 15 seconds, and isometric exercise in a standing position for 10 seconds. On lumbar extension, the amount of relative change in oxygenated hemoglobin (Oxy-Hb) and the tissue oxygen saturation index (SdO2) were significantly less in the LBP group than in the non-LBP group. No significant differences in deoxygenated hemoglobin (Deoxy-Hb) were found between the two groups on both extension and flexion. Relative changes of Deoxy-Hb and SdO2 were significantly higher in the LBP group than in the non-LBP group. The increase of Oxy-Hb during lumbar extension is conceived as the most available parameter in NIRS measurements, taking into account the performance of exercise even in patients with severe low back pain.
  • Masahiko KANAMORI, Hirokazu ISHIHARA, Yoshiharu KAWAGUCHI, Taketoshi Y ...
    2005 年 11 巻 1 号 p. 157-163
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    In this study the clinical results of surgery for posterior lumbar fusion by H-shaped autologous bone graft (H-graft) associated with ceramic interspinous block (CISB) are reported. The clinical results of this procedure have been excellent during the follow-up (average: 3.9±2.8 years) in all six cases. There was a marked improvement (recovery rate: 70.4%) of clinical symptoms assessed by the pre- and postoperative Japanese Orthopaedic Association low back pain score. In radiographic evaluation, the spinal alignment was maintained successfully. H-graft with CISB is a non-instrumentation, segmental fusion and decompression surgery. We believe that those most suitable for this method are young adults suffered from spondylolysis combined with upper adjacent level disc degeneration (type III), insufficient union after anterior interbody fusion (ALIF) or segmental stenosis with instability.
  • 伊藤 友一, 武田 陽公
    2005 年 11 巻 1 号 p. 164-168
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,腰痛予防対策として振動板トレーニング装置(Galileo装置, Elk社)が有用であるかを明らかにすることである.対象者は,介護福祉施設の職員のうちアンケート調査で腰痛があると答えた人で,神経学的異常がない14人である.男性2人,女性12人,年齢は22~54歳(平均38歳)であった.ストレッチ体操に加えGalileo装置を使用した.週2回,1回につき20分の介入を行い,観察期間を6カ月とした.介入による効果は,腰痛の程度をVASを用いて評価した.あわせて重心動揺の評価も参加前,6カ月の時点で行った.その指標には,総軌跡長,外周面積を用いた.6カ月経過時点での満足度と継続希望の有無も調査した.腰痛の改善は,介入後1~2週間でみられた.介入により重心動揺もよくなっていた.不安定な場所で訓練することにより重心動揺が改善したものと思われる.最終的に満足度が高く,継続希望者が多いことよりGalileo装置を用いた腰痛予防は有用であったといえる.
  • 若江 幸三良, 武者 芳朗, 小林 俊行, 水谷 一裕
    2005 年 11 巻 1 号 p. 169-172
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    間欠性跛行患者で,整形外科外来において脊柱管狭窄症と診断した200例に対して,血圧脈波検査装置で脈波伝播速度PWV・足関節/上腕血圧比ABPIを測定した.男性89例,女性111例,平均年齢は71.7歳で,PWV 7例,ABPI 6例が測定不能であった.PWV(平均,右1811・左1820)の165例が基準値の1,400以上であり,ABPI(右1.09・左1.10)は,0.9未満が9例・4.5%あり,測定不能例・6例を合わせると,15例・7.5%の症例に動脈閉塞が伺えた.0.91~0.99は境界領域とすると,1.0未満は,32例で測定不可能6例と合わせると38例16%に及んだことを考え合わせると整形外科でも,間欠性跛行を呈する患者には,慢性動脈閉塞などの血管性病変を常に念頭に置くべきである.
  • 矢部 嘉浩, 瀬良 敬祐, 池田 章子, 篠原 晶子
    2005 年 11 巻 1 号 p. 173-178
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    われわれが実施している個別性・継続性・チームアプローチを重視した『腰痛クリニック』の活動内容・治療成績について報告した.対象は最終評価が可能であった73例であり,臨床症状の改善度をVAS(visual analogue scale),JOA score(29点満点)で評価した.腰痛に対するVASは初診時4.6から最終評価時(平均17週後)2.6と改善していた.またJOA scoreは初診時21.5から最終評価時23.3と改善し,項目別では自覚症状の腰痛が1.4から1.7に,日常生活動作は9.5から10.6に改善していた.疾患別では腰椎椎間板障害・椎間板ヘルニアにおいて有意に改善していた.今回の結果より,クリニックにおける個別対応と継続したチームアプローチは腰痛症の患者に対して効果があり,またクリニックを通して患者自身が腰痛に対する理解を深め積極的に自己管理の習得に臨むことが,再発予防や症状悪化の防止につながると思われた.
  • ―第一報 健常人を対象とした検討―
    青田 洋一, 飯塚 晴彦, 石毛 勇介, 持田 尚, 吉久 武志, 斉藤 知行
    2005 年 11 巻 1 号 p. 179-185
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    長時間の着座に伴う腰痛を緩和する試みとして,椅子の背もたれ部の突出(Lumbar support)の収縮による腰椎用CPMを作成した.日常生活で腰痛のない10人の健常者(平均21歳)を対象とし,2時間の持続的着座姿勢を維持させ腰痛,腰の張り,疲労感,臀部の痺れをLumbar supportのない椅子,Lumbar supportのある椅子,CPMの3つの状態でのvisual analogue scalesを用いて比較検討した.Lumbar supportのない椅子と比べLumbar support付きでは腰痛と全身の疲労感は有意に改善したが,CPMではさらに臀部のしびれも有意に改善した.また追加実験によりCPMによる全身の動きは骨盤の動きに比べ,頭部や下腿で動きが軽微なこと,さらにCPMにより座面の臀部表面の接触圧分布が有意に変化することを明らかにした.CPMは長時間の着座に伴う腰痛,疲労感,臀部の痺れを包括的に改善する機器として発展する可能性がある
  • ─仙骨神経障害症候群─
    高野 正博
    2005 年 11 巻 1 号 p. 186-192
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    従来,仙骨痛,仙尾関節痛,尾骨痛などと言われる慢性疼痛の症状があった.しかしよく診察すると陰部神経に沿って圧痛ある硬結を触れ,この痛みの部位と性質は患者の訴えと一致することが分かった.この中には肛門括約不全の症例が多く肛門内圧も有意に低下し,また排便障害の症例も多く,直腸肛門機能障害がみられる.加えて過敏性腸症候群様の腹部症状もみられる.以上,直腸肛門痛,括約不全,排便障害,腹部症状を四症状とし,仙骨神経障害をもととするsyndromeがあることが分かり,これを仙骨神経障害症候群と名づけた.これら四徴のお互いの合併率は50~90%で,さらには腰椎の症状や治療歴も高率で,MRIでも腰椎病変を60%に認める.治療としてはバイオフィードバックを含む保存療法と理学療法の組み合せにより,症状の消失が32%,軽減が44%,計76%に効果が得られている.今後,この症候群のさらなる病態の解明が必要とされる.
  • ―椎体終板軟骨の輝度変化と腰痛との相関について―
    大鳥 精司, 高橋 和久, 男澤 朝行, 井上 玄, 伊藤 俊紀, 守屋 秀繁
    2005 年 11 巻 1 号 p. 193-197
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    椎間板線維輪以外の椎体軟骨終板にも感覚神経線維が存在し,終板の変性は腰痛の原因となることが報告されている.今回,前方固定術例の術前MRIの椎間板と終板の変性を検討した.対象は椎間板性疼痛と診断され前方固定術を施行し,除痛がなされた成績良好な症例47名であった.手術前のMRIの椎間板変性の程度,椎体軟骨終板の輝度変化(T1強調画像にて低輝度を呈するType A,高輝度を呈するType B)を検討した.当該椎間不安定性との相関も検討した.軟骨終板の輝度変化は正常群,14例に対しType A群14例,Type B群19例であった.MRIの椎間板変性の程度は正常群で有意にその程度は低かった.椎間不安定性は有意に正常群に大きかった.軟骨終板の輝度変化正常例は椎間板の変性の程度が低いが,椎体間の不安定性が強いために腰痛を生じていると考えられた.しかしながら椎体間の不安定性が安定化していても,軟骨終板の輝度変化異常例では,軟骨終板の変性の程度が強く,それが腰痛の原因となっていると考えられた.
  • 森 英治, 芝 啓一郎
    2005 年 11 巻 1 号 p. 198-203
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症に対するpedicle screw併用後側方固定術後9年以上経過し,直接検診できた31例(男10例,女21例,平均手術時年齢59.8歳,平均観察期間10.8年)を対象として長期成績を調査した.骨癒合率は100%であったが,術後得られた矯正位は保持されていなかった.平均改善率は54.1%であった.術後経過としては,隣接高位問題にて再手術を要した6例(再手術前平均改善率10.6%),隣接高位関与症状あり7例(平均改善率24.2%),隣接高位異常可動性あるも関与症状なし5例(同64.6%),隣接問題なし13例(同66%),と隣接高位問題に呼応して成績が分かれた.前2者の成績不良群には観察時固定角が小さい,後弯位すべり型が多いなどの傾向があり,小さな固定角や後弯位すべりは固定隣接高位問題の危険因子の1つではないかと示唆された.
  • 金村 在哲, 井口 哲弘, 三浦 寿一, 佐藤 啓三, 笠原 孝一, 栗原 章
    2005 年 11 巻 1 号 p. 204-209
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/12/14
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症に対して,非固定広範椎弓切除術と固定併用術との手術成績を経時的変化を含めて検討した.対象は非固定群209例と固定群60例で,固定群の半数は変性すべり症であった.結果として,非固定群で有意に手術時間が短く,術中出血量が少なかった.改善率では,両群とも経時的にやや成績の低下はみられるものの,長期まで比較的良好な成績が維持されており,固定術併用の有無で最終調査時および経時的な改善率に有意差はなかった.変性すべり症に限ってみても,各時期で有意差はみられなかった.また腰痛点数で検討すると,全症例および変性すべり症とも,短期,中期では非固定群の方が有意に点数が高かった.以上より,症例を選択して手術を行えば,非固定広範椎弓切除術は手術侵襲も少なく,固定術に勝るとも劣らない手術成績をあげることができると考えられた.
feedback
Top