日本腰痛学会雑誌
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最新号
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[巻頭言]
[特別企画]『腰痛研究のエビデンス・評価と臨床的展望』
  • ─日本語版について─
    藤原 淳, 野原 裕
    2009 年 15 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    Oswestry Disability Indexは世界で最も広く使用されてきた患者立脚型の腰痛疾患に対する疾患特異的評価法のひとつである.本評価法も2003年に正式に日本語に翻訳され,その信頼性や妥当性の検証もある程度なされてきた.本評価法の特徴は痛みのための身体的な機能障害の評価だけでなく,腰痛のための社会的な損失を評価する項目も含むため,代表的な健康関連QOLであるSF-36の精神面の項目ともよく相関する点にある.最近,計量心理学的にも十分配慮された優れた評価法が本国でも開発されたが,Oswestry Disability Indexのように歴史のある同じ評価法を使用し続けることにより,過去の膨大なデータと直接比較可能であることの利点も大きいものと考える.
  • 鈴鴨 よしみ
    2009 年 15 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    Roland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)は,患者自身が直接回答するPatient reported Outcomes(PRO)指標の1つとして位置づけられ,腰痛によって日常生活が障害される程度を評価する尺度である.「立つ」,「歩く」,「服を着る」,「仕事をする」などの日常の生活行動が腰痛のために障害されるか否かを尋ねる24項目に,「はい」,「いいえ」で回答してもらい,「はい」と回答した項目の数を加算して得点を算出する.RDQ日本語版は計量心理学的に十分な特性を持つことが検証されている.RDQは,1)項目と回答選択肢が少なく臨床で実施しやすいこと,2)全国調査により求められた基準値があること,3)すでに多くの研究に活用されていること,などが長所としてあげられる.一方で,1)少ない項目であるために個人を評価するには精度が不十分であること,2)精神面の影響を測定する項目が少ないこと,などが短所となりうる.目的に応じて尺度を選択することが重要である.
  • 宮本 雅史, 福井 充, 紺野 慎一, 白土 修, 高橋 和久, 廣田 良夫, 菊地 臣一
    2009 年 15 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    JOABPEQは従来のJOA scoreを改訂し,国際的に通用する評価基準とすることを目的として作成された.作業部会は日本脊椎脊髄病学会におかれ,2000年6月より作業を開始し,2007年5月に日本整形外科学会から発表された.基本的理念は,1)腰痛性疾患に特異的 2)患者立脚型 3)腰痛による機能障害,能力低下,社会的ハンディキャップおよび心理的問題などを多面的に評価する,4)信頼性と妥当性が証明できることである.作成されたJOABPEQの特徴は以下である.1)疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害および心理的障害の5つの因子からなり,因子ごとに重症度を100点満点で表し,値が大きいほど良好であることを示している. 2) 5つの因子は独立しているので因子ごとに別々に評価する. 3)基本的には順序尺度を基にしたものであり,ノンパラメトリットク的表現・解析を行う必要がある.
  • 紺野 慎一
    2009 年 15 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄の診断のゴールドスタンダードは存在しない.腰部脊柱管狭窄は画像のみでは診断できない.そこで,腰部脊柱管狭窄の診断サポートツールが開発された.医師用と自記式の患者用質問票の2種類ある.両者とも高い感度と特異度を有している.これらの診断サポートツールを使用することにより,患者の自己診断が可能であり,プライマリケアにおいて腰部脊柱管狭窄の診断に役立つと考えられる.
  • ─Roland-Morris Disability Questionnaire日本語版を用いて─
    伊藤 友一
    2009 年 15 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    これまでアンケート調査および腰痛検診にて介護士における腰痛の実態調査を行い,日常生活動作(ADL)に支障をきたすほどの器質的疾患を有する腰痛はなかったこと,一部の介護作業姿勢が腰椎に影響を及ぼしていることを報告した.今回,同じ施設でRoland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)日本語版を用いて腰痛の調査を行った.対象は,男性319人,女性575人,年齢は19歳から60歳であった.回答が得られたのは,892人(99.8%)であった.RDQ 0点が598人(全体の67.0%),1~2点が149人(16.7%),3~4点が70人(7.8%),5点以上が75人(7.3%)であった.質問の項目別にみると,腰痛を和らげるために,何回も姿勢を変えるが162人,腰痛のため家の仕事をするときは力仕事をしないようにしているが103人,ほとんどいつも腰が痛いが94人,腰痛のため,いつもより横になって休むことが多いが74人,腰痛のためいつもよりゆっくり階段を上るが74人,腰痛のため寝返りが打ちにくいが73人,腰痛のため靴下やストッキングをはくとき苦労するが68人と多かった.これに対し,腰痛のため,服を着るのを誰かに手伝ってもらうが2人,腰痛のためあまり食欲がないが4人,腰痛のため1日大半を座って過ごすが5人,腰痛のため,大半の間,ベッド(布団)の中にいるが6人,腰痛のため,いつもより人に対していらいらしたり腹が立ったりするが7人と少なかった.2次検診を希望したのが42人(4.7%)であった.調査の結果,QOLにかなりの支障をきたすほどの腰痛を有する者は少ないことがわかった.
  • 伊藤 俊一, 久保田 健太, 隈元 庸夫, 森山 秀樹
    2009 年 15 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    慢性腰痛に対する筋ストレッチングとセルフエクササイズの効果に関して検討した.
    研究デザインは無作為化対照試験とし,外来受診からの治療期間を最大3カ月間として,コントロール群と,SLRと体幹筋強化を行ったエクササイズ1(E1)群,SLRと体幹筋強化とさらに腰背部ストレッチング加えたエクササイズ2(E2)群として,3カ月後,6カ月各群の痛みと身体機能変化と健康関連QOLをご検討した.
    結果,E2群では痛みおよび身体機能は3カ月以内の改善を認め,E1群も6カ月では同様の結果を示した.痛みの軽減と最も関連が高かった項目は,体幹の柔軟性と伸展筋力であった.
    以上の結果,慢性腰痛にけるセルフエクササイズによる体幹伸展筋力強化と柔軟性の改善を優先しての外来でのフォローアップは,疼痛および身体機能改善と患者満足度の改善により効果的と考えられた.
  • 大川 淳, 榎本 光裕, 富澤 将司, 川端 茂徳, 四宮 謙一
    2009 年 15 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    表面筋電図を用いて腰背筋の筋活動を計測することにより,腰痛の存在を客観的に把握することができる.例えば,腰椎後弯症患者では,歩行時の表面筋電図計測により腰背筋の持続放電がみられるが,杖により正常例に近い筋活動リズムになる.また,急性腰痛患者では腰部固定帯の使用で前後屈時の腰背筋筋活動量が低下する傾向がみられる.慢性腰痛症においても同様の報告がなされている.こうした腰椎装具による腰背筋の筋活動低下効果が臨床的な有効性と関連している可能性がある.
    一方,筋活動低下は,長期装用による筋の廃用を危惧させるが,現時点では長期間の固定帯装用後の腰背筋筋力に関する研究は乏しい.側弯症装具による筋力・可動性低下が治療終了後も持続するとの報告や腰椎の分節運動を制限するには腰椎装具では不十分との報告を加味すると,腰痛症の治療目的や予防的な場面での固定帯の装着は急性期にのみ使用することが望ましい.
[特集]腰痛疾患に対するinterventional therapy―現在から未来へ―
  • 大鳥 精司, 高橋 和久
    2009 年 15 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    Nordinらは腰痛は20世紀を代表する災厄であり,米国では約500億ドル(2001年のGNPの0.5~0.6%)の出費が行われたと報告した.現在では,椎間板再生の基礎的研究をはじめとして,腰痛の病態・成因・治療にかかわる研究の多くが椎間板に向けられている.従来から,腰痛に対する手術として当施設では前方固定術を施行してきた.前方固定術からみた腰痛解析を通してさまざまな椎間板性腰痛の病態が解明されてきた.本章では,腰痛の機序から考えた前方固定術の意義というテーマで文献を踏まえつつ記載したい.
  • ─その適応と限界─
    玄 奉学, 佐久間 吉雄, 室谷 錬太郎, 朝倉 太郎, 早坂 豪
    2009 年 15 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症に対する,椎弓根スクリュー(PS)固定を併用した後側方固定術 (PLF) の術後成績と画像解析から適応と限界について考察した.対象は,術後5年以上経過観察した1椎間固定49例である.JOA scoreは術後良好に改善し,最終調査時も維持されていた.PLFでは,PSを併用しても術直後のアライメントは矯正損失を生じ,ほぼ術前の状態で骨癒合となる.後弯位癒合例も生じるがPSの制動効果で5度以内に収束され,臨床成績や隣接椎間障害発生には影響していなかった.通常経験する変性すべり症に対するPLFの治療成績は良好だが,高度のすべりや不安定性に対する1椎間固定には限界がある.一方,後方椎体間固定術(PLIF)は矯正維持の点で優位だが,隣接椎間障害や再手術を考慮すると,適応は前方支持を要する一部の症例に限定される可能性がある.不安定性の程度や病態に応じて各術式を適切に使い分けることが重要である.
  • ─術後背筋障害軽減を可能とした新しい腰椎後方再建術─
    種市 洋, 稲見 聡, 並川 崇, 竹内 大作, 岩井智 守男, 加藤 仲幸, 野原 裕
    2009 年 15 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎後方進入固定術の問題点として,展開に起因する背筋障害がクローズアップされている.これはいわゆる”fusion disease”と呼ばれる術後背部症状の遺残の原因となり,その予防に各種低侵襲手術が開発されている.正中展開と傍脊柱筋間アプローチ(Wiltse)を組み合わせた低侵襲アプローチにより椎体間固定術を行うmini-open TLIFの手術手技,learning curve,術後背筋障害軽減の実際を示す.
  • 佐藤 公治
    2009 年 15 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    低侵襲脊椎手術(MISS)用のインストゥルメントおよびインプラントが開発され,手術手技も多種工夫されている.アプローチは後方正中から外側筋間の片側進入両側除圧が行われるようになった.われわれは2003年からLSCSに対してMIS-PLIFを319例に行った.使用システムはSEXTANT143例,PathFinder113例,XIAprecision11例,MANTIS 6例,その他45例.手術方法はチューブレトラクターで開創し,片側進入両側除圧と1ケージと局所骨による椎体間固定,両側経皮的椎弓根スクリューとロッドで固定する.1椎間除圧固定の平均手術時間は107分,平均出血量は119 g.MISSの手術手技は従来法の延長でなく新たな脊椎手術法として位置づけられる.今後,MISS用システムが発展し多椎間症例に使用される.そのためには構造や使用法を熟知して自分の手術に応用していくことが重要である.
  • 小谷 善久, 鐙 邦芳, 三浪 明男
    2009 年 15 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    脊椎固定術による可動性の消失あるいは隣接椎間障害といった弊害を解決する治療法として,さまざまなMotion preservation technology(可動性温存治療技術)が臨床応用されるようになってきた.大別して人工椎間板(TDR),人工髄核,Dynamic stabilization,椎間関節置換,椎間板再生などがあげられる.
    人工椎間板技術については,前方全置換型腰椎人工椎間板の臨床治験が米国で行われ,臨床成績や合併症,適応疾患に関する議論が盛んになっている.これら第1世代の人工椎間板は許容されうる短期成績を収めている一方で,腰椎前方アプローチに関連する合併症やデバイスの脱転,転位に対する再手術の困難さ,適応疾患の狭さも表面化している.われわれが開発してきたbiomimetic three-dimensional fabric disc (3DF disc第4次モデル)は,頚椎前方置換と腰椎後方分割置換のデザインを有し,上記の問題を解決しうるデバイスとして厚生労働省の開始許可を得て,国際多施設臨床研究により評価される.
  • ─細胞移植療法のその先に─
    酒井 大輔, 持田 讓治
    2009 年 15 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    椎間板障害は腰痛のみならず,椎間板ヘルニア,すべり症などを誘引しうる重大な問題である.われわれは髄核細胞の質を評価するアッセイ系を確立,髄核細胞の“heterogeneity”とその特色を明らかにした.また元来,椎間板を構成する細胞数は少ないが,ヒト検体を当研究室で用いた臨床研究の検討の結果,その細胞数は年齢とともに減少,その活性度(細胞増殖能,基質産生能),構成細胞分画についても年齢と相関関係にあることを実証した.椎間板細胞の質を迅速に評価できるアッセイ系は再生医療を行う上でセルプロセッシングセンターでの細胞品質評価に有用なツールになると考える.
  • 西田 康太郎, 前野 耕一郎, 角谷 賢一朗, 由留部 崇, 張 鐘穎, 黒坂 昌弘, 土井田 稔
    2009 年 15 巻 1 号 p. 99-107
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰痛とそれに関連する疾患群は社会的にもいまだ重要な位置を占める.その原因の一つとして,椎間板の変性に由来するものが考えられているが,病態など不明の部分も多い.分子生物学的アプローチによる椎間板再生の研究は,当初増殖因子と呼ばれる蛋白質を用いた報告から始まり,これらをコードする遺伝子を直接細胞内に運び,細胞自身に蛋白を持続的に産生させようという遺伝子治療,さらには幹細胞などを用いた細胞療法への広がりをみせている.遺伝子治療の分野では,ウイルスベクターを用いない方法が応用され,RNA干渉と呼ばれる方法を用いて椎間板の変性を促進する因子を抑制することによって変性過程を遅らせるといった,より安全かつ予防的・長期的な観点からの治療が中心になろうとしている.
[投稿論文]
  • ─装具設計・製造の視点から─
    相羽 達弥, 山田 裕之, 岩嵜 徹治, 本田 忠, 藤野 圭司, 白土 修
    2009 年 15 巻 1 号 p. 108-116
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰痛症に対する装具療法の実態を明らかにすることを目的に,整形外科専門医へのアンケート調査,装具の効果に関する文献調査,装具の性能評価を行った.アンケート調査では回答者のうちおよそ80%が腰部固定帯・腰痛帯が有効であると回答し,腹腔外圧上昇(支持)と運動制限(固定)が疼痛軽減効果の機序であると考えていた.装具の呼称・定義に関する一致した見解は無かった.文献調査の結果,体幹装具の背筋活動に及ぼす効果が実証されていた.しかし,装具の効果に関する科学的根拠の高い論文は少なかった.軟性装具,腰部固定帯,腰サポーター(腰痛帯)の性能評価では,装具装着により30%~50%の可動域制限が生じ,腹腔外圧の上昇が見られたが装具の種類による大きな違いは無かった.軟性装具装着時の歩行効率指数は,他に比べて歩行効率が悪い傾向が見られた.装具の「固定性・運動制限」に固執せず,「歩行効率」という新しい視点からの分類・開発の必要性について言及した.
  • 加藤 慎也, 青田 洋一, 上杉 昌章, 國谷 洋, 高 倫浩, 齋藤 知行
    2009 年 15 巻 1 号 p. 117-121
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    神経根型腰部脊柱管狭窄症における神経組織の圧迫部位,圧迫形態,圧迫部位と椎間板との相対的位置関係をMRミエログラフィーで検討した.2003年4月から2008年7月までにMRミエログラフィーを撮像した椎間孔狭窄以外の神経根型腰部脊柱管狭窄症の48例を対象とした. 平均年齢は68.2歳,男性25例,女性23例であった.障害神経根は65根(L3 : 1,L4 : 10,L5 : 46,S1 : 8)であった.圧迫部位は全例椎間板高位に一致していた.圧迫部位は硬膜部が8根(L3 : 1,L4 : 5,L5 : 2,S1 : 0),硬膜管からの神経根の分岐部が57根(L3 : 0,L4:5,L5:44,S1 : 8)であった.圧迫部位に神経根の内方化を伴うものは30根(L3 : 0,L4 : 1,L5 : 25,S1 : 4)であり,内方化を伴わない外側陥凹部で前方方向の圧迫が35根(L3 : 1,L4 : 9,L5 : 21,S1 : 4)であった.
  • 青田 洋一, 齋藤 知行, 上杉 昌章, 加藤 慎也, 高 倫浩, 國谷 洋
    2009 年 15 巻 1 号 p. 122-131
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    長時間着座における腰痛を緩和するための持続受動運動(continuous passive motion: CPM)装置として椅子のlumbar support に収縮性エアバッグを設置したもの(腰CPM)がすでに市販されているがその効果は限定的である.われわれが独自に開発した装置は座面にもエアバッグを設置しlumbar supportと座面を連動運動させるものであり,一方の縮小時に他方が拡大する連動逆位相型と両者が同時収縮する連動同位相型とがある.いずれの動作様式も腰CPMより優れた腰痛予防効果を有している.今回,健常学生13人を対象としてエアバッグの各種収縮条件での全身の姿勢と座面上の圧分布を検証した.腰CPMと比較した連動型の長所は同位相型では骨盤の前方移動を抑制しつつ前方回旋を獲得できることであり,逆位相型では腰椎や骨盤傾斜角の変化量が有意に大きいことと推察された.
  • 木村 浩三, 岩貞 吉寛
    2009 年 15 巻 1 号 p. 132-138
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    マッケンジー法(MDT)は,1956年に理学療法士であるRobin McKenzie氏が考案した疼痛性の整形外科疾患に対する診断・評価・治療法である.科学的研究から有効性は証明されている.MDTは問診とメカニカル検査,その結果の分析からエクササイズを決定し,痛みや機能障害を改善させる診療体系である.今回,重度の歩行障害と神経根症を呈する腰椎椎間板ヘルニアに対してMDTを実施した.問診とメカニカル検査を行い,明らかなRed Flagsはないものの整復不可能なDerangementの特徴を示し,MDTの適応の可能性は低かった.しかし,段階的な負荷(F/P)や負荷のかけ方を変化(F/A)させたMDT評価により,短時間で良い反応が得られる運動方向(D/P)を探り,患者のセルフエクササイズを中心としたMDTを実施した結果,3週間ほどで著明に下肢痛や歩行機能障害が改善した.
  • 佐藤 公昭, 永田 見生, 芝 啓一郎, 小西 宏昭, 前田 健
    2009 年 15 巻 1 号 p. 139-144
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄診断サポートツールの妥当性を検証し,九州・沖縄版簡易問診票の有用性と問題点について検討した.まず,手術で確定診断が得られた280例(腰部脊柱管狭窄症138例,腰椎椎間板ヘルニア142例)に本サポートツールを用いた調査を実施した.結果は感度92.0%,特異度63.4%であり,ABIの項目は足背動脈の触診で代用可能であった.次いで,50歳以上の腰・下肢症状を有す外来患者201例(腰部脊柱管狭窄症116例,他疾患85例)に,本サポートツールと簡易問診票の双方の調査を実施した.簡易問診票の項目とこれに対応する本サポートツールの項目との合計点には高い一致性を認めた(κ係数0.77).本サポートツールの感度は97.4%,特異度は53.6%であった.一方,簡易問診票の感度は95.7%,特異度は31.8%であり,他の疾患を腰部脊柱管狭窄症とする可能性が高くなることが今後の検討課題である.
  • 森本 忠嗣, 小西 宏昭, 奥平 毅
    2009 年 15 巻 1 号 p. 145-149
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア(以下LDH)と変形性股関節症(以下OAH)に対するSLRテストで生じる臨床所見を比較検討した.対象はLDH102例,OAH141例である.両群とも手術施行例であり,両疾患の合併例は除外した.両群に対してSLRテストで生じる臨床所見を調査した.結果は,SLR角70度未満はLDH79%,OAH26%,疼痛誘発率はLDH83%,OAH25%であり,いずれもLDHで有意に高かった(P<0.01).誘発疼痛部位は,膝以下(臀部から膝以下までの疼痛)はLDH47%,OAH0%,臀部(臀部から大腿後面の疼痛)はLDH36%,OAH9%であった.本研究結果から,SLRテストの陽性率はLDHで有意に高く,LDHの診断におけるSLRテストの有用性が確認できた.しかしながら,両群ともSLRテストで臀部痛のみが誘発される症例があり鑑別に注意が必要である.
  • 上原 徹, 青木 一治, 友田 淳雄, 稲田 充, 松永 寛
    2009 年 15 巻 1 号 p. 150-156
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア(LHNP)と腰椎椎間関節症(LFS)に対する運動療法は,それぞれ腰椎伸展運動と屈曲運動で相反している.しかし両疾患の症状は類似することがあり,その運動療法選択には苦慮するケースもある.われわれはLFSに反応しやすい腿挙げテスト(KL-t)を考案し,その有用性について検討した.対象は,腰痛を主訴とし,それぞれの運動療法を行った外来患者73名である.KL-tは,壁を背に立ち,両大腿を交互に挙げるもので,施行後腰痛の軽減・消失があれば陽性,不変・悪化は陰性とした.有用性の検討は,運動療法開始前のX線像と,KL-t前後の脊椎アライメントの測定から行なった.結果,陽性46名のうち,40名(87%)がLFSであった.陽性者では,KL-t後腰椎の前彎が有意に減少しており,その原因として,腸腰筋の弛緩が腰椎前彎ストレスの減少に働いたからではないかと考えた.本研究から椎間板や椎間関節の変性変化が軽度で,運動療法選択に苦慮するようなケースには有用なテストと考えた.
  • 松井 誠一郎
    2009 年 15 巻 1 号 p. 157-164
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    日整会腰痛評価質問票(以下JOABPEQ)により107名の非特異的腰痛について調査を行った.非特異的腰痛患者はコントロール群に比して,すべての重症度スコアが有意差をもって低値であった.JOABPEQの各重症度スコアは互いに中等度以上の正の相関があり,腰痛のVASとの間にも中等度の負の相関が認められた.疼痛部位別に検討すると,多裂筋はいずれのレベルにおいても疼痛の有無によって疼痛関連障害に有意差を生じた.また上位の脊柱起立筋の疼痛の有無によってJOABPEQのすべての重症度スコアで有意差を認めた.
  • 秋山 寛治
    2008 年 15 巻 1 号 p. 165-172
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間関節部骨折は,関節突起部にも稀に生ず.当院スポーツ外来にて腰痛の原因を知る目的で行った腰椎レントゲンやCT検査で,椎間関節内骨変化を確認した患者の臨床経過や画像所見について後ろ向きに調査し,意義を検討した.下関節突起に骨片がみられた例は8例であった.6例は臨床所見と一致したが,2例では該当椎間関節部に症状を呈していなかった.上関節突起に骨片がみられたのは6例であった.このうち3例は,圧痛やKemp兆候が見られず,骨化障害の可能性も考えられた.椎間関節内骨折は,CTのみで所見が得られる場合があるため,症状の程度によってはCT検査を検討すべきである.ただし,CTのみで骨片を確認できる例の経過はおおむね良好であった.
  • 高 倫浩, 青田 洋一, 上杉 昌章, 加藤 慎也, 國谷 洋, 齋藤 知行
    2008 年 15 巻 1 号 p. 173-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    近年の脊椎カリエスのDoctor's delayの原因と傾向を調査するために,平成17年以降の4年間に当科で脊椎カリエスの治療を行った17例を検討した.Doctor's delay 群は7例あり,すべて結核の既往がなかった.また,他の疾患の診断のもと治療が行われていたものが多く,診断名は,骨粗鬆性圧迫骨折が4例,腰部脊柱管狭窄症が1例,腫瘍が1例,精巣上体炎が1例あった.これらの診断ですでに手術されていたものが5例あり,術前診断は圧迫骨折が4例,腰部脊柱管狭窄症が1例であった.Doctor's delay例では骨粗鬆性圧迫骨折の診断で手術が施行された症例が多かったが,術前の画像所見は典型的な骨粗鬆性圧迫骨折ではなかった.近年,圧迫骨折に対する手術が積極的に施行されるようになってきたが,術前に脊椎カリエスを鑑別することの重要性を再認識すべきである.
  • 伊藤 不二夫, 中村 周, 伊藤 全哉
    2009 年 15 巻 1 号 p. 180-189
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    経皮的内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術は局麻下での7mm切開の一泊手術であり,3手術法手順と適応について検討する.2007.4月以降2008.3月末で197例.男136例,女61例,平均48.8歳であった.L2/3~L5/S1;経椎間孔法112例,High iliac crestのL5/S1;経椎弓間法64例,外側ヘルニア;椎間孔外法21例を行った.移動上下各1.0 cm以上,不安定性存在,外側陥凹狭窄3mm以下,分離部骨増殖などは除外した.JOA scoreは術前(N=197)11.1,1 M後20.5,3 M後22.2,6 M後22.0,臀部下肢痛VASは術前7.2,1 M後2.1,3M後1.6,6 M後1.5と改善した.再手術は16名(8%)になされた.レベル誤認1例,出血による視野不明1例,血圧低下1例,疼痛強度のため全麻への変更2例,取り残し4例,再脱出4例(2%),術後発生の神経癒着3例であった.
  • ─Oswestry Disability Indexによる検討─
    梅野 恭代, 石田 和宏, 佐藤 栄修, 百町 貴彦, 吉本 尚, 柳橋 寧
    2009 年 15 巻 1 号 p. 190-196
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/19
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間板ヘルニア摘出術実施後,多くの症例は良好な経過をたどる.しかし早期に明らかな再発所見なく腰痛が出現,または遺残症状が悪化する症例もたびたび経験する.このような症例がどのようなADLを困難とするのか特徴を明らかにするため,Oswestry Disability Index(ODI)から検討した.対象は2007年5月~08年8月にヘルニア摘出術を実施した122例中,退院2週後の再来時にVisual Analogue Scaleで症状増悪が認められた10例であった.Control群は再来時に良好であった30例とした.検討項目はODIおよびsub-scoreとした.悪化群はsub-scoreの「座ること」について困難度で高値を示す例が多かった.また,再来時に「座ること」「物を持ち上げること」で困難度が高かった例では,“腰痛の悪化”,“早期の職場復帰”が関与していることが考えられた.症例に応じた適切な生活指導と運動療法により退院後の症状悪化を予防できる可能性が示唆された.
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