日本腰痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-1863
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6 巻, 1 号
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  • 川口 善治, 金森 昌彦, 石原 裕和, 長田 龍介, 木村 友厚
    2000 年 6 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    アグリカン遺伝子(AG)の多型性が腰椎椎間板変性およびヘルニア発症のリスクになり得るかを検討した.64名の20歳代女性を対象とし,腰椎MRIにて椎間板変性とヘルニアを検討した.AGの多型は,末梢血からgenomic DNAを抽出し,コンドロイチン硫酸鎖結合部で反復配列(VNTR)の多型が存在する領域をPCR法で増幅後,電気泳動を行い分析した.AGの多型は,VNTRの最も少ないアレル18から最も多い29までの8種類が確認された.椎間板変性数およびそのレベルとAGの多型を検討したところ,少ないVNTRを持つものに多椎間の椎間板変性および上位腰椎の変性が多く認められた.一方,ヘルニア椎間数およびヘルニアタイプとの関連は認めなかった.以上より,AG多型の少ないVNTRを持つものは,若年期より椎間板変性を起こしやすいリスクがある可能性が示された.しかし椎間板ヘルニアとは関連がなかったことから,ヘルニアの発症にはこれ以外の要因が関与していると考えられた.
  • 見松 健太郎, 吉田 徹, 笠井 勉
    2000 年 6 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    visual analogue scale(VAS)と日整会腰痛治療成績判定基準(腰JOA)との関係について比較検討をした.急性腰痛を訴えた外来患者54名を調査した.初診時のVAS,腰JOA,年齢,性別,職業の調査をした.結果,腰JOAの腰痛の項では,時々の腰痛や常の腰痛では,疼痛の程度は10点のうち1∼8点まで種々であった.腰JOAの総点29点とVASとの相関はr=0.51とかなり良い相関を示した.しかし,疼痛は腰JOAだけでは不十分であることが判明した.すなわち,腰痛の評価には腰JOAだけでなくVASが疼痛の直接評価に有用であった.
  • 松田 清嗣, 土井田 稔, 丸井 隆, 水野 耕作
    2000 年 6 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    われわれは腰椎椎間板ヘルニアに対して1994年より顕微鏡視下ヘルニア摘出術を行っており,その術後成績を,従来行われてきたLOVE法と比較検討した.調査項目は手術時間,術中出血量,離床までの期間,在院日数,JOAスコア,調査時の腰痛の程度である.手術時間,出血量ともに統計学的に有意な差は認めなかったが,離床までの期間,調査時の腰痛の程度に関しては,顕微鏡下ヘルニア摘出術の方が有意に優れていた.顕微鏡下ヘルニア摘出術は離床や入院期間が短く,良好な術後成績が得られていた.特に腰痛の改善度は従来のLOVE法より優れており,軟部組織への侵襲が小さいことが大きな要因の1つと考えられた.
  • 増本 眞悟, 今井 健, 角南 義文
    2000 年 6 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰椎変性すべり症の保存例27例と手術例68例を臨床症状と画像所見を中心に比較検討した.まず,症状は単根性の場合,重症度が軽く予後良好群が多かったが,馬尾性では1例を除いた全例が手術群であり保存的治療に抵抗していた.また入院時JOA scoreも予後と有意に相関し特に15点満点では6点以下が予後不良の1つの目安になると思われた.すべり度,不安定性,腰椎alignmentと重症度,予後との間に有意な相関関係を認めなかった.CTM計測値では,関節突起間距離,硬膜管面積,黄色靱帯内側の脊柱管面積は症状と相関しいずれも馬尾性で小さかった.すべり部下位椎弓上縁における骨性脊柱管面積は症状および予後と相関し,変性すべり症においてもdevelopmentalな要素が症状および予後に関与していた.また,神経根症例のみでは外側窩前後径が予後と相関し,外側窩前後径5 mm以下は予後不良の1つの指標になると考えた.
  • 笠井 謙和, 安達 公, 蛯原 有男, 田辺 賀則, 中澤 俊之, 二見 俊郎
    2000 年 6 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症の36名を対象とし,1997年7月以降に施行した椎弓還納式脊柱管拡大術(還納群)と,それ以前に施行した椎弓切除術(切除群)の臨床結果を比較検討した.改善率は還納群が70.0%,切除群が59.5%であった.還納群で,術後入院期間は有意に短縮されており,また術後6カ月の腰痛スコアが有意に優れていた.還納群において,還納椎弓の脱転例•偽関節例を認めず,術後平均4カ月で片側以上の骨癒合を得た.椎弓還納式脊柱管拡大術の短期成績は良好であり,腰部脊柱間狭窄症に対し有用な手術術式と考える.
  • 中村 潤一郎, 腰野 富久, 斎藤 知行, 中澤 明尋
    2000 年 6 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    胸腰椎破裂骨折23例に対しZ-Plateを用いて脊椎前方除圧固定術を施行した.手術時年齢は平均44.2歳(16∼79歳),経過観察期間は平均1年10カ月(8カ月∼3年10カ月)であった.術中,術後に重篤な合併症はなく,全例骨癒合が得られた.調査時の腰痛は,なし11例,あり10例,評価不能2例であった.後弯角は3°の矯正損失を認めた.modified Frankel分類による神経症状の改善は,悪化例はなくEを除くと一段階以上改善したのは13例であった.Z-Plateは設置が容易,MRIが撮像可能など利点が多い.椎体後方に挿入する螺子に伸長力を加えて矯正する構造のため後弯矯正がやや不十分となりやすい.また4椎体以上の広範固定には不向きであるが,胸腰椎破裂骨折の手術的治療に有用であった.
  • 松本 學, 森 亮一, 木下 厳太郎, 丸岡 隆, 圓尾 宗司
    2000 年 6 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,サルモネラ菌による化膿性脊椎炎を経験したので報告する.症例は15歳女子で腰痛を主訴として来院した.既往歴には,アトピー性皮膚炎,9歳時に肺炎があり,家族歴には特記すべきことはなかった.3カ月くらい前から腰痛があり近医を受診した後,民間療法を受けていたが軽快せず来院した.体幹の可動域制限がみられたが,神経脱落所見はなかった.初診時の血液検査所見はWBC 6,970/μl, RBC 371×104/μl, CRP 3.5 mg/dl, 赤沈120 mm/時間であった.単純X線像でL3/4の狭小化および椎体終板の不整像を,MRI所見ではL3•4椎体はT1Wで均一な低輝度を示し,T2Wで淡い高輝度を示した.針生検術を施行し,椎間板からサルモネラ菌が検出された.硬性コルセットを装着させ,抗生剤投与にて約2カ月で腰痛は消失し,血液検査所見も正常化した.サルモネラ感染症もre-emerging infectious diseaseとして考えておく必要がある.
  • 山屋 智康, 安達 公, 蛯原 有男, 田辺 賀則, 二見 俊郎, 塚本 行男
    2000 年 6 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    腰部脊柱管狭窄症(以下LCS)の術後経過において腰椎不安定性や腰痛が出現する例は少なくない.この問題を改善するためわれわれはポリ-L-乳酸ピンを用いた椎弓還納式脊柱管拡大術を考案し臨床応用を行い,今回その成績について検討した.従来,椎弓切除術の適応となるような症例においても,直視下に十分な除圧を安全に行うことができ,また椎弓を還納固定することで後方要素を温存できた.本法では椎弓切離の際ノミを用いるが硬膜や神経の損傷はなく,CTで確認した還納椎弓の90.9%に骨癒合を認めた.固定術を併用した症例では本法導入以前に比べて固定椎間数が減少し,隣接椎間変性の予防や手術侵襲の軽減に結びつく可能性を示唆した.JOAスコアの改善率は80.2%で,特に腰痛の改善率が91.3%と優れていた.後方要素を温存し得る本法は高度の狭窄を有するLCSに対して有用な術式であると考えられた.
  • 小久保 安朗, 前沢 靖久, 古沢 修章, 内田 研造, 馬場 久敏
    2000 年 6 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2000年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル フリー
    当院看護職員345名(有効回答率89.0%)を対象にアンケート調査を行い,腰痛発生の危険因子を分析し,腰痛の予防と対策について検討した.日本産業衛生協会理事会腰痛委員会による腰痛診断のための問診用紙を改変しアンケート調査を行った.現在腰痛がある,あるいはときどきある者は49.2%であり,このうち20∼24歳での発症は58.9%と最も多く,経験年数の少ない若年者に腰痛が多く発症していた.取り扱う重量が40 kg以上と答えた職員は全体の約50%であり,患者の体位交換や移動介助の際に中腰姿勢や腰のねじれが加わり腰痛が発症していた.一方,腰痛予防対策をしている職員の割合は低く腰痛予防への意識が低かった.1人で扱う重量を減らすなどの工夫を行う一方で,就職直後から積極的に腰痛予防の技術を指導することが必要であると考えた.
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