日本腰痛研究会雑誌
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最新号
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  • 中野 昇
    1999 年 5 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1955年札幌医大の整形外科に入局したが, 一期生のため先輩がおらず, 腰痛の治療に苦労した. 1958年米国ケンタッキー州ルイヴィル大学に留学し, スパーリングやレザマンから腰痛の治療, 特に日常生活の姿勢と腰痛に関して学んだ. 帰国後姿勢性腰痛症として腰痛の治療を行った. 初回腰痛で受診し, 再診した患者について調査をした. これら腰痛患者の71.8%が1週間以内で改善し, 2週間以上通院したのは28.2%であった. 再診までの平均期間は4.9年で, この間日常生活の姿勢に注意しただけで, 腰痛体操や鎮痛剤の投与も受けていなかった. 腰痛出現時のアンケート調査で, 男性では重量物挙上37.2%, 前屈位姿勢の持続34 .2%, 女性では前者が40.8%, 後者が46.8%で姿勢と関係あり, この腰痛は男性で78.4%, 女性で85.7% が2 週間以内で軽快しており, 日常生活の姿勢に注意するだけで, 腰痛の治療にも予防にも効果があった.
  • 5-year prospective study
    李 俊熈, 星野 雄一, 刈谷 裕成
    1999 年 5 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腰痛発生の危険因子を検討するために5年間のprospective studyを行った.対象は腰痛も腰痛歴もない男女63名 (19~49歳) で, 調査項目は年齢, 身長, 体重, 運動と喫煙の習慣, 椎間板変性 (MRI), および体幹筋力 (E/F比: 等運動性運動にて測定した屈曲ピークトルク値に対する伸展の比) である.5年後に腰痛発生について再調査し, 各調査項目の腰痛発生への寄与を多変量解析で比較した.5年間に腰痛が発生した例は男13例 (39%), 女19例 (63%) であった.偏回帰係数の絶対値はE/F比が男女とも最も大きく (男: -0.40, 女: -0.46), 腰痛発生を予測する最適の因子の組み合わせ (ステップワイズ法) ではE/F比のみが選択され, 男では1.10, 女では1.01未満だと腰痛が発生するという判別式が得られた (的中率: 61%, 70%).屈曲筋力に対して伸展筋力が低いことが腰痛発生に最も寄与していた.
  • 小島 洋, 花井 謙次, 荻久保 修, 大角 淳一, 林 良美
    1999 年 5 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腰痛の診断は画像技術の進歩により急速の進歩をとげた.しかし原因の判然としない腰痛は依然として多い.われわれは, 1997年12月以来, MRI所見を確証するためMooneyとRobertsonのシステムに従った腰痛患者のPain drawingを行ってきた.目的: Pain drawingによって病状の予想が可能であるかを明らかにする.方法: 腰痛患者にPain drawingを記入させそれをscore sheetを用い採点し, その点数におけるPain drawingのMRI画像との一致を検討する.結果: scoreの低いものにおいてPain drawingはMRI画像とよく一致した.考察: Pain drawingは非常に簡便で疼痛のスクリーニングとして有用であり, ある程度は病状の予想が可能であると思われた.
  • 腰痛からみた分析
    稲岡 正裕, 山崎 勇二, 細野 昇, 多田 浩一, 米延 策雄
    1999 年 5 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    人間ドックを受診し頸椎と腰椎のX線検査を受けた641人 (うち295人は腰痛保持者) を対象に, X線所見における, 変性変化や異常所見の同時出現性を調査し, 腰痛保持者では, 頸椎にも特徴があるかを検討した.頸椎と腰椎の単純X線像における異常所見の同時出現性と腰痛との間に有意性を認めるものが存在した.特に, 椎間腔の狭小化においては, 頸椎と腰椎ともに椎間腔狭小化のある98人中, 腰痛ありのものが62人 (63%) であるのに対し, 頸椎と腰椎ともに椎 間腔狭小化のない310人では, 腰痛ありのものは122人 (39%) であった.頸椎と腰椎の椎間腔の狭小化は加齢とともにその同時出現性が高くなるが, 年齢, 性にかかわらず, 腰痛群で頸椎, 腰椎の両方に同時に出現する傾向を認め, 腰痛発現に全身因子, 脊柱全体の素因が関与する可能性を示唆する結果となった.
  • 関矢 仁, 萩原 秀, 杉本 直哉, 刈谷 裕成, 星野 雄一
    1999 年 5 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腰痛を主訴とする患者40名を対象とし, 従来の膝下に三角枕を置いての牽引法 (三角枕法) と, 箱型の枕により股および膝関節を90゜に屈曲しての牽引法 (90゜法) を行い, 腰痛に対する効果を比較検討した.牽引後に腰痛が「消失」ないし「改善」と回答したものが三角枕法では65%, 90゜法では80%であり, 両群間に有意差がみられた.三角枕法に比べて, 90゜法がより効果的であると思われた.
  • 元文 芳和, 白井 康正, 宮本 雅史, 金田 和容, 中井 文彦, 柴田 靖章, 小野寺 剛, 杉山 修
    1999 年 5 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    仙腸関節炎は比較的稀な疾患であり, また, 多彩な症状を呈するため腰部疾患と誤診されたりして診断に難渋することが多い.今回われわれは仙腸関節炎3例を経験した.2例は化膿性関節炎, 1例はseronegative spondyloarthropathy (ベーチェット病) による関節炎であった.化膿性仙腸関節炎2例は抗生剤にて, ベーチェット病によるものはステロイド剤にて治療し, 良好な結果を得た.仙腸関節炎は原因もさまざまであり, 治療法も異なるため, 早期診断が重要である.しかし, 仙腸関節の特殊性により診断が遅れがちである.仙腸関節炎は比較的稀な疾患であるが, 激しい臀部痛を訴える症例の, 鑑別診断の1つとして認識すべきである.
  • 武本 俊彦, 橋本 俊彦, 水村 珠青
    1999 年 5 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    平成5年4月から平成10年3月に当院で手術された腰椎変性疾患110例中固定術が施行された男性12例, 女性12例, 計24例について検討した.平均手術時年齢は55歳 (27~74歳) で, 変性すべり群 (DO) 11例と変性狭窄群 (DS) 13例であった.術式は椎弓切除術+PLF単独16例 (66.7%) で, PSF併用例はDO群の5例とDS群の3例, 計8例であった.骨癒合判定でsolid unionはPSF併用群が7例 (87.5%) であったのに対して, PLF単独群では11例 (68.8%) であった.またnon unionはPLF単独群の1例に発生し, 再手術が行われたが成績は不良であった.しかしながらnon union以外の症例では疾患別や骨癒合判定別および術式別にみても有意な相違はみられなかった.腫瘍や外傷を除くとPSF法は不安定性の高度な変性すべり症や多椎間固定例が適応と考えられ, これ以外の多くの腰部脊柱管狭窄症では徐圧術+PLF単独で治療可能と考えられた.
  • 末綱 太, 牧野 明男, 毛糠 英治, 和田 誠之, 中井 倫子
    1999 年 5 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    われわれは若年者の腰椎分離症に対してsegmental pedicle screw wire fixation(PSW法)を7例に行い, wire破損を1例, 偽関節を1例に認めた.PSW法は固定力が振れに対してやや弱い点および外固定期間が長くなる欠点があった.そこで, それらの欠点を補うため, pedicle screwとrodを用いた後方固定を行い, 分離部はPSW法と同様に固定する改良法を考案した.今回, PSW法7例の成績と2例に行った改良法の手術手技と成績について報告した.本改良法の利点は強固な固定で一度椎間のSegmentalな動きを止めるが, 骨癒合が得られ, 抜釘後再びSegmentalな動きを回復できる点である.改良法で行った2例とも良好な骨癒合が獲得された.外固定も短期間で, 慎重になる必要もなく, 術後2日目からの歩行も可能であった.以上より, 長期の外固定を維持しにくい若年者の腰椎分離症に対し, われわれの改良法はPSW法に代わる方法と考える.
  • 3例報告とその病態の考察
    矢吹 省司, 菊地 臣一, 緑川 博文, 星野 俊一
    1999 年 5 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    血管性腰痛の3例について報告し, その病態について考察した.症例1は50歳の男性である.動脈造影により腹部大動脈に限局して著明な狭窄を認め, 経皮的血管拡張術を行い腰痛と間欠破行は消失した.症例2は70歳の男性である.両側の総腸骨動脈から外腸骨動脈に著明な狭窄を認め, 右腋窩動脈から両側大腿動脈へのバイパス術を行い腰痛と間欠跛行は軽減した.症例3は70歳の男性である.主訴は腰痛である.8年前に閉塞性動脈硬化症に対して左大腿動脈レーザー形成術と右大腿動脈から膝窩動脈へのバイパス術を受けた既往があった.理学所見や画像所見から血管性腰痛と診断した.以上の3例の経験から, 間欠跛行を示すが, 神経学的異常所見を認めず, posturalfactorがなく, 閉塞性動脈硬化症を伴っている症例の腰痛は, 血管性腰痛の可能性がある.腰椎には何ら手をつけずに血管に対する処置のみで軽快・軽減する腰痛が存在する事実は, 血管性腰痛という概念を支持する.
  • 薗田 恭輔, 永田 見生, 井本 浩樹, 安部 淳
    1999 年 5 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    第4腰椎に発生した良性骨芽細胞腫に対して, 観血的治療を施行したので, その臨床経過を報告する.症例は1976年生まれの男性で, 以前より腰痛を時に認めるも放置, 1995年より徐々に腰痛増強し, 1996年, 前医受診.CT等の画像診断にて第4腰椎の骨腫瘍を指摘され, 生検にて良性骨芽細胞腫の診断を受けたが, 腰痛改善したため以後経過観察となった.しかし約1年の間に腫瘍の急速な増大を認め, さらに腰痛再発したため, 手術目的にて当院紹介入院となった.腫瘍は第4腰椎の右椎弓部に存在し, 1年の経過でサイズが約4倍に増大していた.手術は腫瘍を完全摘出後, 第3腰椎から第5腰椎間の右側のみにISOLA pedicle screw systemによる固定術と棘突起間wiringを行い, 左椎弓に腸骨片を移植した.術後経過は良好で, 術後1年の時点で, 骨癒合は完成し, また再発も認めていない.
  • 高山 螢, 伊藤 博志, 岩間 徹, 木下 朋雄, 木下 知子, 藤森 信広
    1999 年 5 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 1999/10/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    神経損傷を伴わない脊椎圧迫骨折11例に対しspinal blockを行った.使用薬剤は1%塩酸メピバカインまたは1%リドカイン3mlに, リン酸デキサメタゾンナトリウム注射液1.9~3.8mgを併用し, 高齢者には適宜減量した.ブロック施行後, 3時間は骨盤低位約45度で安静とした.ブロック翌日には体幹ギプス固定を行い全例が歩行可能となった.痛みの評価にはNRS5点法を用い, ブロック前後のペインスコアより改善率を求めた.spinal block後48時間における改善率は65%で施行前ペインスコア4.8点のものがいずれも1~2点となり, 満足度が高い方法である.全例にMRIを施行したが破裂骨折は1例もなかった.平均入院期間は12日間で, 受傷後平均9カ月間を観察したが, 腰背痛は, 著明に改善されていた.合併症は軽度の頭痛が1例以外重篤なものはなかった.急性期の圧迫骨折に対する速効的かつ強力な除痛法として試みられてよいと考えられる.
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