日本養豚学会誌
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33 巻, 3 号
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  • 今田 哲雄, 鈴木 義邦, 風間 繁, 川村 信雄
    1996 年 33 巻 3 号 p. 81-87
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    養豚一貫経営39戸を養豚所得階層別に区分し, その経営実績を対象に枝肉1kg当たり生産費に対する構成要因について比較検討し,次のような結果を得た。
    1. 高位階層における枝肉1kg当たり生産費を目的変量とする重回帰式は次のとおりで, 説明変量は増体1kg当たり飼料費 (X1), 年間分娩回数 (X2), 育成率 (X3), 事故率 (X4), 飼料要求率 (X5), 固定資産 (X6) の6項目であった。
    Y=1.94X1-46.11X2-4.08X3+3.03X4-50.77X5+0.09X6+688.98 (R=0.970)
    2. 低位階層における枝肉1kg当たり生産費を目的変量とする重回帰式は次のとおりで, 説明変量は増体1kg当たり飼料費 (X1), 減価償却費 (X2), 更新率 (X3), 子豚哺乳頭数 (X4), 事故率 (X5), 飼料要求率 (X6) の6項目であった。
    Y=2.18X1+0.0014X2+0.72X3-7.04X4+4.60X5-119.19X6+504.62 (R=0.893)
  • 宮脇 耕平, 保科 和夫, 伊東 正吾
    1996 年 33 巻 3 号 p. 88-96
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ウェットフィーディングにおける飼料と水との同時混合摂取が, 肥育豚の採食行動や飼槽の利用性に及ぼす影響を解明するために, ビデオ録画装置を用いて採食行動の24時間連続調査を行った。
    1日の総採食時間は, 従来型セルフフィーダーにより給餌し飼槽とは別の場所で分離給水した対照区に比べ, 自然落下型ウェットフィーダーで給餌給水したウェット1区 (W1区), および飼料切出し型ウェットフィーダーで給餌給水したウェット2区 (W2区) では約60%と有意に短縮した。一方, ウェットフィーダーで飼料のみを給与したウェットドライ区 (WD区) では対照区との差は認められなかった。1日の総採食回数には給餌器による有意差は認められなかった。1回平均採食時間は, W1およびW2区では対照区の約50%と有意に短縮したが, WD区では差は認められなかった。採食行動に及ぼすウェットフィーダー1頭口飼養頭数の影響は, 総採食時間および平均採食時間において認められ, 飼養頭数の増加に従いいずれも有意に短縮した。飼槽利用率は, 1頭口15頭飼育では対照区よりも有意に高く, 7.5頭飼育では差が認められず, 5頭飼育では有意に低かった。飼槽空き時間率はW1およびW2区が対照区よりも有意に高く, 特に1頭口5頭飼育では昼間の空き時間が大きかった。
    本研究の結果から, 本飼養法の適正飼養頭数は1頭口当り8~10頭と推察された。
  • 伊藤 米人, 近藤 ゆり, 鈴木 博, 内山 京子
    1996 年 33 巻 3 号 p. 97-103
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    東京都畜産試験場飼養の雄豚の中に無精子症の雄豚2例 (No. 1, No. 2) が発生した。この雄豚が無精子症になるまでの精液性状の経過を取りまとめた。No. 2には無精子症になった後hCGを投与して, 血清中テストステロン濃度および精液性状の変化を検査した。また, 屠殺時に精巣の組織学的検査を行った。No. 1, No. 2とも生後54か月齢で無精子症となった。No. 1は無精子症になる前の11か月間は精子濃度0.5~2.3×108/mlの範囲, 総精子数20.0~299.0×108の範囲で少なかった。No. 2は無精子症になる18日前までは正常であったが, 8日前には精子濃度1.4×108/ml, 総精子数224.0×108となり急激に無精子症となった。運動精子率は生後40か月齢以降変動が大きく, 51か月齢からは低い傾向であった。No. 2にhCGを投与した後の血清中テストステロン濃度は, 投与後1, 2および3日目までは13.6, 8.6および9.6ng/mlと高値が続き6日目では0.76ng/mlと投与前と同様の低い値となった。hCG投与後の精液性状は, 31日目に精子濃度0.05×108/ml, 総精子数5.0×108の精子が射出され, 81日目に精子濃度1.96×108/ml, 総精子数166.6×108の精子が射出された。No. 1の乗駕欲は全期間を通じて良好であった。No. 2の乗駕欲は無精子症になる以前から悪い傾向であったが, hCG投与後1か月以降は特に悪かった。No. 1の精巣の組織は, 間質組織が多くの部分を占め精細管は萎縮していた。精上皮のほとんどは精祖細胞が見られるのみであったが, まれに精子形成がされている精細管も観察された。No. 2の精巣の組織は, 正常豚のそれとほぼ同様であった。
  • 特に人工授精に関連して
    Lawrence A. Johnson
    1996 年 33 巻 3 号 p. 104-111
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    豚の人工授精の初期の利用が1930年代に始まったことは一般的に知られている。日本は豚人工授精応用の創始国であった。その方法は広く世界的に用いられた。伊藤, 丹羽, 工藤 (Ito, Niwa and Kudo) は千葉市に所在した国立畜産試験場で1938年に研究を開始し, 豚用人工膣を考案して, 精液採取の方法を発展させ, 精液注入器の原型も作った (1948)。これらの初期の研究成果により, 日本の技術は他の多くの国々に広まった。そして現在も世界的に用いられている。丹羽とその共同研究者達 (Niwa and his colleagues, 1955) は豚精液の保存に卵黄クエン酸ソーダ液の利用を報告し, 又一般的に牛精液の保存に用いられた5℃よりも15℃保存を推奨した。Polge ら (1956) は又豚精液用の適当な保存液を用いて保存し, その後利用された。
    豚の人工授精の利用は引き続き世界的に発展したが, アジアやヨーロッパではそれぞれの国の応用に向く技術が広く普及し, 今日世界の他の地域に比べて人工授精によって繁殖される雌豚の割合が最も高い。
    アメリカの例では, 過去2年間に非常な成長を示し現在人工授精によって繁殖される雌豚の数は25%に近い。それは3年前の5%以下からの上昇である。
    今日, 液状精液は雌豚に対する精液配布の優勢な方法として続いている。そして, 人工授精によって繁殖されている雌豚の数は世界で1,200万頭から1,500万頭と推定される。いくつかの精液保存液が用いられている。現在最も多い保存液は Beltsville TS (BTS) で, 3~4日間以上使用可能で世界的に広く利用されている。他の保存液としては Androhep と Modena が6日間まで精液保存が出来ると認められる。それぞれの保存液には特別な利点がある。これらはすべて実際上使用まで大体18℃で保存する。
    凍結精液は, 主として1つの国又は州から他へ特別な血統を導入するために使われている。1975年商業的規模でそれが開始されて以来, 世界の50ヵ国以上で利用されている。凍結精液での分娩率は50~65%である。これは液状精液や自然交配に比べて子豚生産において不満足である。従って凍結精液の利用には限度がある。
    新しい繁殖技術の進歩は, 豚の人工授精を広める上にも多くの変化があることを示唆する。将来は非外科的移植技術の発達による胚移植の積極的な活用が有望となるだろう。オランダや日本, 米国での最近の研究は非常に現実性のある技術となっている。
    ベルッビル精子性支配技術 Beltsville sperm sexing technology を用いて性の選別 (予知) Sex preselection を行えば, 管理の融通性を改善すると同時に大きな育種的利点を得る新しい機会が得られる。その技術とは, XとY豚精子のDNA含量の違いによって精子をフローサイトメトリーに振り分ける技術である (Johnson, 1991)。
    体外受精も又今後5年以内に商業的生産に用いるところまで近づいている。
    1930年代に日本においてなされた小規模な人工授精の開始以来, 1990年代の今日の人工授精の利用までに, われわれは, その利用が著しく増加し, 又著しく改良されたことを見ることが出来る。 今後10年以内に世界の雌豚の75%は人工授精によって繁殖されるであろう。又多くの新しい繁殖技術は今後5年以内に適用されることになるだろう。
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