硫酸鉄 (FeSO
4) とビタミンC (Ascorbic acid: VC) により脂質過酸化誘起したブタ精子の15℃液状保存後の精子生存指数を調べた。さらに Hypotaurine (HT) を脂質過酸化誘起処置液に添加し, その後の液状保存後の精子生存指数も調べた。11頭の種雄豚より採取した精液の精漿を除去して, 脂質過酸化誘起処置液で精子数を3.0×10
8/m
lに希釈し, 38℃で1時間インキュベートすることによって脂質過酸化誘起処置をおこなった。この精子脂質過酸化誘起処置液は, VC 0.5mMとFeSO
4を0.01, 0.1もしくは1mM含む Modena を用いた。そして, 脂質過酸化誘起処置直後の Malonaldehyde (MDA) 生成量を分析した。これらの脂質過酸化誘起処置精子を15℃で液状保存し, 精子生存指数を処置直後, 保存後48, 96, 144, 192, 240および288時間目に調べた。また, FeSO
4 0.1mMを含む脂質過酸化処置液にHTを50mM添加して脂質過酸化誘起処置をおこない, 処置直後のMDA生成量および精子生存指数を調べた。さらに, この誘起処置精子を15℃液状保存し, その精子生存指数を処置直後, 保存後48, 96, 144, 192, 240および288時間目に調べた。0.1もしくは1mMのFeSO
4とVCによる脂質過酸化誘起処置によりMDA生成量が有意に増加した (P<0.001)。これらの脂質過酸化誘起処置精子の15℃液状保存後の精子生存指数は, 保存48時間目以降および処置直後から, 無処置精子よりも有意に低下した (P<0.05)。HT 50mMを含む脂質過酸化誘起処置においては, その精子生存指数は無処置精子と比較して有意な低下が認められなかった。しかし, HT 50mMを含む処置精子のMDA生成量はHT 50mMを含まない処置精子のものと比較し有意な差は認あられなかった。以上のことから, ブタ精液15℃液状保存前に脂質過酸化が生じた精子は, 保存後の精子生存指数の低下が認められた。また, 15℃液状保存前のFeSO
4 0.1mM脂質過酸化誘起処置液への50mMのHT添加は, 15℃液状保存後の精子生存指数の低下を抑制することが明らかになった。
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