乳清タンパク質の酵素分解物が有する食肉製品への発色促進効果について検討を行った。この分解物は, 乳清タンパク質濃縮物 (タンパク質を80%含有, 以下WPC80と略記) を基質とし, 65℃で30分間低温殺菌した後, 市販の食品用酵素剤を用い50℃, 16時間の条件で分解して粉体化することにより調製した。試作ソーセージ (塩化ナトリウム2%および亜硝酸ナトリウム100ppm添加) の発色率によってL-アスコルビン酸ナトリウム (0.1%) とWPC80酵素分解物 (5%) の発色促進効果を比較したところ, ほぼ同じであった。ゲルろ過/HPLC法で分析した結果, 酵素処理により乳清タンパク質の大部分は分子量1,000以下のペプチドに分解されていることが示された。またWPC酵素分解物のエタノール抽出画分において, 低分子量であるほど発色促進効果が高いことが認められた。ミオグロビンの加熱モデル系による実験で, WPC80酵素分解物の濃度が増加するほど発色率は上昇する一方で, 残存亜硝酸塩量は減少する傾向がみられた。エリソルビン酸ナトリウム (NaEry, 0.1%) 添加時と比べ, WPC80酵素分解物は同程度の発色促進効果を示した。赤血塩法による還元力の測定で, NaEry では加熱のはじめの段階で還元力は高かったが, 加熱により減少した。WPC80酵素分解物の還元力は, はじめ低かったが, 加熱により次第に増加する傾向を示した。亜硝酸塩の分解量はNaEryが最も多かった。また, WPC80酵素分解物がミオグロビンの熱変性を最も促進し, 変性ミオグロビンの発色度も最も高い値を示した。本実験結果から, 低分子量 (主に分子量1,000以下) のペプチドからなる乳清タンパク質酵素分解物は, 加熱時に還元力が増加することに加え, ミオグロビンの熱変性を促進することによって, 発色を促進している可能性が示唆された。
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