本調査分析は, 農林漁業金融公庫融資事業の農業総合施設資金, 農業経営基盤強化資金 (L資金) などを借り入れて規模拡大途上または規模拡大をした平成8年度における養豚一貫経営体57戸を対象とした。
経営概要は, 母豚飼養頭数114.6±76.5頭, 農業総収入73,222±42,964千円, 養豚所得14,976±12,647千円, 母豚1頭当たり肉豚出荷頭数18.63±2.81頭, 枝肉上物率59.1±9.6%, 飼料要求率3.13±0.37の養豚経営であった。借入金は長期借入金42,063±34,261千円, うち公庫資金27,334±22,482千円であった。
「養豚経営と技術」の関係について主成分分析を行った結果, 第1主成分: 繁殖・経営因子, 第2主成分: 所得既成因子, 第3主成分: 出荷技術因子, 第4主成分: 経営規模因子, 第5主成分: 経営管理者因子, 第6主成分: 資金借入因子を把握することができた。その結果, 第1主成分に繁殖技術と所得既成に関する項目が複雑に絡み合っており, これを分離してみた方が適切であると思われたので Varimax 法で分析した。
第1因子は, 母豚1頭あたり養豚費用, 同全飼料費, 同肉豚販売高, 同肉豚出荷頭数, 同哺乳開始頭数, 年間分娩回数などが主要な項目であった。母豚1頭当たり肉豚販売高をあげるためには, 同肉豚出荷頭数, 同哺乳開始頭数, 年間分娩回数の増大など技術的なことが関与しており, 新しい合成変量は繁殖技術因子とした。第2因子は, 母豚1頭当たり農業所得, 養豚所得が主要項目となっており, 母豚1頭当たり肉豚出荷頭数, 同販売高が関係しており, 所得既成因子とした。第3因子は, 収益に関する1kg枝肉単価, 肉豚販売価格が主要な項目となっており, 出荷日齢などがこれに関係しているので, 出荷技術因子とした。第4因子は, 養豚専業率と母豚飼養頭数が主要な項目となっており, 規模に関わるものとみられるので経営規模因子とした。第5因子は, 専従者の年間労働日数, 枝肉上物率が主要な項目となっており, 肉豚飼料単価が関係しているので, 技術管理能力を重視した経営管理者因子といえる。第6因子は, 資金借入金合計や肉豚飼料単価が関係しており, 資金借入因子とした。
これら6つの因子の構成項目から8項目を選び, その平均値と標準偏差から各項目に5段階の評価基準を作り, 経営診断に当たって経営状況の把握が容易にできるような判定基準表を作成した。選んだ8項目は, 母豚1頭当たり肉豚販売頭数, 1kg当たり枝肉単価, 母豚1頭当たり養豚所得, 同借入金残高, 同肉豚出荷頭数, 肉豚販売単価, 肉豚飼料単価, 飼料要求率とした。
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