日本養豚学会誌
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43 巻, 2 号
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原著
  • 神山 佳三, 岩村 祥吉, 染井 英夫, 丸山 朝子, 内藤 昌男
    2006 年 43 巻 2 号 p. 39-48
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    発情最終日を0日として,8~10日(試験1)と11~13日(試験2)の3日間,プロスタグランジンFを反復投与し,発情周期の短縮効果と繁殖性を検討した。
    試験1 ; 正常な発情周期を営むランドレース種および交雑種の経産豚あるいは未経産豚を用い,PGF投与群10頭,対照群10頭を供試した。PGF投与群の豚には,前回の発情最終日を0日(Day0)として8~10日の3日間,午前9時と午後5時に計6回,PGF(ジノプロスト15mg/3ml /回 合計90mg/18ml )を耳根部筋肉内に投与した。対照群には,同様の方法で生理食塩液を投与した。PGF投与群の平均発情開始日は,Day14.2±0.4と対照群(19.5±0.7)に比較し有意(p<0.01)に短縮された。PGF投与群の血中プロジェステロン(P)濃度は投与後1~2日から減少し,Day12以降は平均1ng/ml の低値で推移した。PGF投与により誘発された発情時に交配を実施したところ受胎率90%で,1頭のみ不受胎であった。2頭はDay5に開腹手術を行い卵巣の観察を行うとともに胚採取を行った結果,黄体数はそれぞれ13個,11個で,採取した胚の数はそれぞれ12個,8個と胚の発育ステージも正常の範囲であった。分娩母豚7頭の妊娠期間,産子数,生時体重は,それぞれ平均で115.1±1.2日,10.6±1.9頭,1.4±0.3kgで標準的な成績であった。
    試験2 ; PGF投与時期をDay11~13の3日間とした以外は,試験1と同様の方法で行った。供試豚は正常な発情周期を営む交雑種10頭を用い,PGF投与群,対照群それぞれ5頭とした。前回の発情最終日を0日として,PGF投与群の発情開始日はDay16.4±0.6と,対照群のDay19.6±0.6に比較し有意(p<0.01)に短縮された。PGF投与群のP濃度は,投与開始翌日(Day12)から減少し,Day13以降は平均1ng/ml の低値で推移した。また,PGF投与により誘発された発情時に交配を行い,全頭受胎した。その繁殖成績は,妊娠期間,産子数,生時体重それぞれ平均で114.6±0.9日,9.6±2.5頭,1.2±0.2kgといずれも標準的な成績であった。
    これらのことから,黄体開花期である8~13日の間の3日間に1日あたり8時間の間隔でPGFを反復投与することで,黄体は早期に退行し,PGF投与により誘発された発情においても正常な繁殖性であることが示された。
  • 梶 雄次, 阿部 正八郎, 水上 暁美
    2006 年 43 巻 2 号 p. 49-56
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    植物性飼料中のフィチン酸は亜鉛(Zn)と結合し不溶性の塩を形成するため,飼料中Znの一部は豚で利用できない。したがって,フィチン酸分解酵素フィターゼ(Phy)を飼料に添加することによってZnの利用性が改善される。しかし,その定量的な効果については豚での報告がない。そこで,トウモロコシと大豆粕を主体としたZn欠乏飼料(Zn 27.7mg/kg : 基礎飼料)とこれにPhyを350,700,1050,1,400U/kg添加した飼料およびZnを20,40mg/kg添加した飼料の計7種類を調製して,Phyの無機Zn代替効果を明らかにするため試験を実施した。28頭のランドレース種去勢豚(6週齢,開始体重9.6kg)を各区に4頭割り当て単飼不断給餌で4週間の飼養試験を実施し,3週目に採血を行った。ZnあるいはPhy添加量(独立変数)と,飼料摂取日量(FI),増体日量(DG),飼料要求率(FCR),血清中亜鉛濃度(SZn),血清アルカリフォスファターゼ(ALP)活性(従属変数)の全ての組合せで回帰式(直線回帰式あるいは非線形回帰式)を当てはめ,飼料中に添加したPhyとZnの関係式を導き,PhyによるZn代替量を算出した。その結果,基礎飼料にZnを添加すると添加量の増加にともなって,FIおよびDGは有意 (1次回帰 (L) : P<0.01,2次回帰 (Q) : P<0.01) に増加し, FCRは有意に減少 (L : P<0.05)した。SZn(L : P<0.05)およびALP(L : P<0.01)は有意に増加した。一方,基礎飼料にPhyを添加すると添加量の増加にともなって,FIおよびDGは有意(L : P<0.01,Q : P<0.01)に増加し,FCRは有意に減少(L : P<0.01,Q : P<0.05)した。SZnおよびALPは有意(L : P<0.01)に増加した。発育成績3項目(FI, DG, FCR)から推定されたPhy(U/kg)のZn(mg/kg)代替量の平均値から : Zn=0.0535+0.0337Phy-0.0000129Phy2 (r2=0.99),血清成分2項目(SZn, ALP)から推定されたPhyのZn代替効果の平均値から : Zn=-0.6259+0.0062Phy+0.0000066Phy2 (r2=0.99)の関係式が得られ,Phy500(U/kg)は発育成績に対して13.68,血清成分に対して4.12mg/kgの無機亜鉛を代替することが可能であると推定された。
  • 池田 周平, 鈴木 伸一, 祐森 誠司, 栗原 良雄
    2006 年 43 巻 2 号 p. 57-70
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    本試験では低CP飼料を自由摂取した肥育豚と体脂肪蓄積抑制に有効であることが知られている制限給餌法で飼育した肥育豚の成長ならびに枝肉成績について比較検討を行った。供試飼料は日本飼養標準・豚(1998年版)肥育後期(70~115kg)のCP量を2.2%単位低減し,アミノ酸要求量を満たすように不足する塩酸L-リジンを添加した。対照区では制限給餌とならないように前日の飼料摂取量を参考に少量の残餌があるように給与量を調節した。試験区は対照区の前日摂取量を参考に体重補正して対象区の85%量を1日2回に分けて給与した。試験は単飼とし,自由飲水の条件で室温25±2℃の空調室内で行った。測定項目は体重(増体量),飼料摂取量,飲水量,体各部位の発育値,消化率(試験終了直前),胸最長筋の化学成分と背脂肪の化学的性状とした。試験開始平均体重が対照区70.8±2.1kg,試験区70.3±1.2kgから終了時平均体重の対照区106.9±1.9kg,試験区106.5±1.5kgに達するまでに要した日数は対照区41日,試験区55日となり,試験区が14日長かった。試験区の1日当たりの飼料摂取量は対照区の85%量と設定していたが,対照区2.78±0.17kgに対し試験区は2.26±0.04kgと約81%量となった。制限割合が想定以上に大きかったことから肥育日数の延長,飼料摂取量の増加(10kg/頭),飼料効率の低下を招くこととなった。体長,胸深,胸幅の伸びは試験区が有意(P<0.05)に小さかった。粗脂肪の消化率は試験区が有意(P<0.05)に高かったが,可溶無窒素物,ADFは逆に試験区が有意(P<0.05)に低かった。屠体成績では背脂肪の肩部,腰部が試験区で有意(P<0.05)に薄くなった。また,供試飼料のアミノ酸組成を分析した結果,対照区でリジン,トレオニンの摂取量が不足し,試験区ではこれらに加えて含硫アミノ酸,トリプトファン,分岐鎖アミノ酸の摂取量も要求量を下回った。しかし,制限給与とした場合には脂肪蓄積に対してこれらアミノ酸量の不足による影響を上回る脂肪蓄積抑制の効果が認められたと考えられた。
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