発情最終日を0日として,8~10日(試験1)と11~13日(試験2)の3日間,プロスタグランジンF
2αを反復投与し,発情周期の短縮効果と繁殖性を検討した。
試験1 ; 正常な発情周期を営むランドレース種および交雑種の経産豚あるいは未経産豚を用い,PGF
2α投与群10頭,対照群10頭を供試した。PGF
2α投与群の豚には,前回の発情最終日を0日(Day0)として8~10日の3日間,午前9時と午後5時に計6回,PGF
2α(ジノプロスト15mg/3m
l /回 合計90mg/18m
l )を耳根部筋肉内に投与した。対照群には,同様の方法で生理食塩液を投与した。PGF
2α投与群の平均発情開始日は,Day14.2±0.4と対照群(19.5±0.7)に比較し有意(p<0.01)に短縮された。PGF
2α投与群の血中プロジェステロン(P)濃度は投与後1~2日から減少し,Day12以降は平均1ng/m
l の低値で推移した。PGF
2α投与により誘発された発情時に交配を実施したところ受胎率90%で,1頭のみ不受胎であった。2頭はDay5に開腹手術を行い卵巣の観察を行うとともに胚採取を行った結果,黄体数はそれぞれ13個,11個で,採取した胚の数はそれぞれ12個,8個と胚の発育ステージも正常の範囲であった。分娩母豚7頭の妊娠期間,産子数,生時体重は,それぞれ平均で115.1±1.2日,10.6±1.9頭,1.4±0.3kgで標準的な成績であった。
試験2 ; PGF
2α投与時期をDay11~13の3日間とした以外は,試験1と同様の方法で行った。供試豚は正常な発情周期を営む交雑種10頭を用い,PGF
2α投与群,対照群それぞれ5頭とした。前回の発情最終日を0日として,PGF
2α投与群の発情開始日はDay16.4±0.6と,対照群のDay19.6±0.6に比較し有意(p<0.01)に短縮された。PGF
2α投与群のP濃度は,投与開始翌日(Day12)から減少し,Day13以降は平均1ng/m
l の低値で推移した。また,PGF
2α投与により誘発された発情時に交配を行い,全頭受胎した。その繁殖成績は,妊娠期間,産子数,生時体重それぞれ平均で114.6±0.9日,9.6±2.5頭,1.2±0.2kgといずれも標準的な成績であった。
これらのことから,黄体開花期である8~13日の間の3日間に1日あたり8時間の間隔でPGF
2αを反復投与することで,黄体は早期に退行し,PGF
2α投与により誘発された発情においても正常な繁殖性であることが示された。
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