日本養豚学会誌
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48 巻, 1 号
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原著
  • 川村 英輔, 田邊 眞, 鈴木 一好
    2011 年 48 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2010/03/10
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    ふん尿分離型豚舎から排出される豚舎汚水の性状や汚水量等の調査を行い,ふん尿分離豚舎汚水からのリン回収の可能性を検討することとした。神奈川県内の13養豚場及び当センター内のふん尿分離型豚舎から排出される豚舎汚水の性状を調査したところ,豚舎汚水中のリン,マグネシウムの性状に対するpHの影響が明らかとなった。一つ目として,豚舎汚水中のpHと水溶性リン酸態リン濃度及びpHと水溶性マグネシウム濃度との間に負の相関が認められた。二つ目として豚舎汚水性状の年間調査から,pH,水溶性リン酸態リン及び水溶性マグネシウム濃度に季節変動が見られ,夏はpHが低く水溶性成分の濃度が高まり,逆に冬はpHが上昇し水溶性成分の濃度が低下する傾向が見られた。三つ目として水溶性及び結晶性リン酸態リンの構成割合は,夏に水溶性リン酸態リンが大部分を占めていたが,冬は結晶性リン酸態リンが大部分を占めていた。四つ目として豚舎汚水中の水溶性リン酸態リンと水溶性マグネシウムのモル比は,冬は1以上であったが,夏に1を下回る傾向が見られた。また,ふん尿分離豚舎汚水からのリン回収試験実施予定農場の汚水量を9月から翌年の5月まで調査したところ,気温の低下に合わせて9月から1月まで汚水量が減少した。1月以降は気温が上昇しはじめ,汚水量も増加する傾向が見られた。
    これらの結果から,ふん尿分離豚舎汚水は,水溶性リン酸態リン濃度が低濃度ではあるが,水溶性リン酸態リンの結晶化によりリン回収が可能であると判断できた。その際,水溶性マグネシウム/リン酸態リン比が1よりも小さい汚水の場合には,1に近づけるようマグネシウム源の供給が必要であることが明らかとなった。
  • 川村 英輔, 田邊 眞, 竹本 稔, 上山 紀代美, 鈴木 一好
    2011 年 48 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2010/03/10
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    塩ビ管を用いた簡易な構造のMAP回収装置を試作し,水溶性リン酸態リン濃度が低いふん尿分離型豚舎の豚舎汚水からリン結晶化法によるリン回収を試みた。反応槽下部からの曝気により反応槽内の豚舎汚水のpHを上昇させ,水溶性リン酸態リンを結晶性リン酸態リンに誘導することが可能であった。その際,曝気強度が大きいほど短時間でpHが上昇した。反応槽容積に対する汚水投入量とpH上昇時間の検討結果より,反応容積200lの本装置の場合,曝気強度30m3/m3・時の条件で汚水滞留時間1時間が必要であったことから,処理能力は約4.8m3/日であることが分かった。本装置での水溶性リン酸態リンの結晶化率は,pH 7.7, Mg/PO4-P比0.48の豚舎汚水を用いた場合,マグネシウム源を添加しない条件では41%であるが,反応後の処理水中の水溶性マグネシウム濃度が40mg/l以上になるようマグネシウム源を添加する条件では,結晶化率は75%まで向上することが明らかとなった。次にpH 6.94,水溶性マグネシウム/リン酸態リンのモル比は0.56,水溶性リン酸態リン濃度63mg/lの豚舎汚水を用いて,簡易型MAP回収装置のリン回収量を検討した。装置の運転条件は汚水滞留時間1時間,曝気強度45m3/m3・時,30%MgCl2溶液の添加量を汚水量の0.1%とし,MAP付着部材として槽内にステンレス製の網カゴを浸漬した。夏季の44日間のMAP回収量は,5.3kgであった。投入水溶性リン酸態リン1kgあたり0.61kgのMAPが回収できた。以上のことより本装置は,反応槽下部からの曝気によりリン結晶化反応に必要な汚水のpH上昇を図ること及びマグネシウム源を添加することで,水溶性PO4-Pの結晶化率を70%以上とすることが可能であった。この条件では水溶性リン酸態リン濃度が62.8mg/lの豚舎汚水1m3から38g/m3のMAPが回収可能であった。
技術ノート
資料
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