日本養豚学会誌
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51 巻, 3 号
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原著
  • 小林 栄治, 西尾 元秀, 古川 力
    2014 年 51 巻 3 号 p. 143-151
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    DNAマーカー情報を近交度評価に利用するため,3世代にわたる実験家系を用いて,親(P)世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせが雑種第2 (F2)世代のホモ型マーカー割合(マーカー近交度)に与える影響を検討した。71頭のF2 世代においてゲノム全体に分布する364個のマーカーによるマーカー近交度は0.404±0.059(平均±標準偏差)であった。P世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせにおける平均マーカー近交度は,AA×ABが0.574,AA×BBが0.521,AA×BCが0.376,AB×ABが0.514,AB×ACが0.382およびAB×CDが0.239であった。また,マーカー近交度の頻度分布は二項分布により算出した期待値の分布と差がなかった。さらに,全マーカーを用いたマーカー近交度とP世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせにより分類したマーカー近交度との間の相関係数を算出した結果,AA×BC(相関係数0.81),AB×CD(同0.74)およびAB×AC(同0.68)の組み合わせで大きかった。以上のことから,マーカー近交度は新たな近交度の指標となり得ると考えられた。ただし,マーカー情報を利用した近交度の評価においてはマーカーの持つ情報量が評価値に影響することから,マイクロサテライトマーカーのように対立遺伝子数が多く,多型の程度の高いマーカーを選択する必要があることが示された。
  • 大西 知佳, 佐藤 正寛
    2014 年 51 巻 3 号 p. 152-158
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    乳頭数と繁殖形質(総産子数,生存産子数,離乳頭数)の遺伝的パラメーターを推定し,乳頭数による相関反応を利用したときの繁殖形質の改良の可能性について,家系選抜指数を用いて検討した。乳頭数の推定遺伝率は0.41,繁殖形質のそれは0.06∼0.09の範囲であった。乳頭数と繁殖形質との遺伝相関は高く,0.62∼0.78の範囲で推定された。選抜候補個体との血縁係数が1/4以上の個体の情報を利用した選抜の正確度および遺伝的改良量の期待値は,繁殖形質を直接選抜したとき0.15∼0.18および0.09∼0.15,乳頭数の選抜による相関反応を利用したとき0.47∼0.59および0.37∼0.39,繁殖形質と乳頭数の同時選抜のとき0.49∼0.60および0.37∼0.41であった。以上の結果より,本集団では繁殖形質を効率的に改良するために乳頭数の相関反応を利用することの有効性が示唆された。
  • 石田 藍子, 芦原 茜, 小林 裕之, 勝俣 昌也
    2014 年 51 巻 3 号 p. 159-167
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    近年利用が広がっている飼料用米2品種(実験1:ふくひびき,実験2:モミロマン)のアミノ酸含量を測定し,回腸末端カニューレを装着した育成豚を用いて,回腸末端アミノ酸消化率をそれぞれトウモロコシと比較した。アミノ酸含量はトウモロコシに比べて,ふくひびき,モミロマンともにロイシンおよびアラニン含量が低値,アルギニン含量が高値となった。ふくひびきは,すべてのアミノ酸の回腸末端消化率およびその平均値にトウモロコシと差がなかった(実験1)。モミロマンはイソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン,バリン,アスパラギン酸,チロシンで回腸末端消化率がトウモロコシよりも低かった(P<0.05)。モミロマンの非必須アミノ酸の回腸末端消化率の平均値はトウモロコシと差がなかったが,必須アミノ酸の回腸末端消化率の平均値はトウモロコシより低く(P<0.05),全アミノ酸の回腸末端消化率の平均値はトウモロコシより低かった(P<0.05)。以上より,飼料用米の利用にあたっては品種ごとのアミノ酸含量およびアミノ酸の消化性を考慮する必要性が示唆された。
資料
  • 鹿熊 俊明
    2014 年 51 巻 3 号 p. 168-175
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    経営診断における豚枝肉販売単価の個人差は大きく,多くの養豚経営診断事例から収益の変動係数が大きくみられる。分娩回数が平均以上で子豚生産頭数の多い農場,肉豚生産原価が低くて技術指標がグループの中でトップクラスの農場であっても出荷時期の販売単価が低いために,収益は必ずしもトップクラスであるとはいえない場合がある。枝肉単価が収益性の格差を大きく左右しているが,どのような要因に影響を受けているのであろうか。生産,流通,可処分所得,気温などに関する25変数を用いて,その相関行列および主成分分析から変動要因の関連性や動向について検討した。その結果,豚枝肉上物価格は同中物価格,肥育豚生産費,子豚購入価格,CIF輸入豚肉価格との間に正の相関があり,牛肉消費量,鶏肉消費量,豚肉推定出回り量,豚肉輸入量,可処分所得,豚肉消費量との間に負の相関がみられた。主成分分析の結果,第I主成分は豚枝肉流通要因,第II主成分は豚肉生産要因,第III主成分は気温と枝肉規格要因,第IV主成分はさんま漁獲量と所得要因,第V主成分は牛肉消費要因の5合成変量を抽出した。食肉流通統計から東京都中央卸売市場(以下東京市場という)のデータからは,豚枝肉1 kg当たり単価は月別にみると短期間に大きく変動し,夏期は高騰して秋期·冬期に低迷するなど出荷時期による季節間の格差がみられる。夏期の高温で繁殖成績が悪くなることによって春先の子豚が減少して高騰し,また,夏期の高温下の肉豚生産性の低下によって豚枝肉価格はさらに高騰し,秋期に涼しくなって肉豚出荷量が回復すると枝肉価格が下落する。このような季節に伴う生理的変化により,豚枝肉価格は周期的変動を呈している。その他にはBSE,口蹄疫,鳥インフルエンザ等海外悪性伝染病発生,さらには福島原発事故の影響による代替需要がみられ,豚枝肉価格は鶏肉と牛肉の需要量に大きく影響を受けることがある。
  • 祐森 誠司, 味埜 美紀, 池田 周平
    2014 年 51 巻 3 号 p. 176-182
    発行日: 2014/09/30
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
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