DNAマーカー情報を近交度評価に利用するため,3世代にわたる実験家系を用いて,親(P)世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせが雑種第2 (F
2)世代のホモ型マーカー割合(マーカー近交度)に与える影響を検討した。71頭のF
2 世代においてゲノム全体に分布する364個のマーカーによるマーカー近交度は0.404±0.059(平均±標準偏差)であった。P世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせにおける平均マーカー近交度は,AA×ABが0.574,AA×BBが0.521,AA×BCが0.376,AB×ABが0.514,AB×ACが0.382およびAB×CDが0.239であった。また,マーカー近交度の頻度分布は二項分布により算出した期待値の分布と差がなかった。さらに,全マーカーを用いたマーカー近交度とP世代におけるマーカー遺伝子型の組み合わせにより分類したマーカー近交度との間の相関係数を算出した結果,AA×BC(相関係数0.81),AB×CD(同0.74)およびAB×AC(同0.68)の組み合わせで大きかった。以上のことから,マーカー近交度は新たな近交度の指標となり得ると考えられた。ただし,マーカー情報を利用した近交度の評価においてはマーカーの持つ情報量が評価値に影響することから,マイクロサテライトマーカーのように対立遺伝子数が多く,多型の程度の高いマーカーを選択する必要があることが示された。
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