日本養豚学会誌
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56 巻, 4 号
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原著
  • 川村 英輔, 高田 陽, 今村 弥生, 松原 英隆
    2019 年 56 巻 4 号 p. 127-138
    発行日: 2019/12/16
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー

    豚舎由来の臭気に寄与するふん由来の臭気成分を明らかにするため,以下の解析を行った。試験Iとして豚ふんに含まれる悪臭成分を溶媒に抽出·濃縮した濃縮溶液をゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で分画し,得られたGPC分画液は,ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC-MS)で分析した。官能試験で豚舎,豚特有の悪臭と感じられた分画には,悪臭防止法の特定悪臭物質以外の悪臭成分としてイソ酪酸,フェノール,p-クレゾール,インドール,スカトール,3-フェニルプロピオン酸を含有していた。次に試験IIとしてpHを5,7,9に調整した豚ふんを夏季の豚舎スノコ下の温度条件である30°Cに保持し,揮散した臭気をアセトンに吸収しGC-MS分析した。どのpHにおいても上記5物質が検出され,豚ふんに由来する悪臭成分が固相から気相に揮散することが明らかとなった。試験IIIとして飼料が異なる神奈川県内の3養豚場の肥育豚のふんに含まれる悪臭成分を溶媒に抽出·濃縮した濃縮溶液及び肥育豚舎の悪臭の一定量をアセトンに吸収した溶液をGC-MS分析したところ,ノルマル酪酸,ノルマル吉草酸,p-クレゾール及びスカトールが検出され,豚ふん由来の悪臭成分が豚舎の悪臭の一要因であることが明らかとなった。

  • 門脇 宏遠, 大澤 剛史, 石井 和雄, 井上 慶一
    2019 年 56 巻 4 号 p. 139-148
    発行日: 2019/12/16
    公開日: 2020/03/06
    ジャーナル フリー

    生存産子数は母豚の生産持続性を改良する上で最も重要な形質の1つであることから,最適な統計モデルで解析する必要がある。このため,生存産子数について,産次を共変量とし,LEGENDRE多項式に異なる次数を当てはめた産次変量回帰モデル(RRM)を用いた遺伝的パラメータの推定を試みるとともに,生存産子数の育種価評価に一般的に利用されているモデル[単形質モデル(STM),反復記録モデル(RPM)および多形質モデル(MTM)]による結果と比較検討した。分析に用いたデータは豚遺伝的能力評価により収集されるランドレース種(L種)および大ヨークシャー種(W種)の1∼6産目までの生産頭数の成績(それぞれ55,857件および34,024件)および血統記録(それぞれ11,035頭および6,722頭)である。RRMは,農家を母数効果としたモデル(RRM1)と農家×産次を母数効果としたモデル(RRM2)の2種類を検討した。また,どちらのモデルも相加的遺伝効果(A)および恒久的環境効果(PE)に,産次に対する切片,1次および2次のLEGENDRE多項式をあてはめた。推定された各産次の分散成分の推移は,両品種ともRRM1よりもRRM2の方が全産次を通じて滑らかな推移を示し,MTMから得られた推移に近似した。さらに,遺伝率や遺伝相関もRRM1よりRRM2の方がMTMに近似した。各産次の分散成分の推移と固有値の寄与率から,両品種ともAは2次項まで,PEは1次項(L種)および2次項(W種)までをLEGENDRE多項式に当てはめるのが妥当であることが確認された。また,RRM2では,固有値の寄与率から生存産子数の遺伝的な変動は切片で約90∼92%説明でき,1次項以降の遺伝曲線によって,約8∼10%を産次毎の遺伝的な変動として説明できることが示唆された。

技術ノート
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