人工乳後期市販飼料に配合したホタテガイ外套膜酵素分解物(酵素分解物)給与が肥育豚の発育,枝肉形質および肉質に及ぼす影響について検討した。21日齢で離乳後,2週間程度馴致飼育を行った約35日齢(体重約10 kg)の三元交雑去勢豚(LWD)を供試豚とした。供試豚は体重約30 kgまで市販の人工乳後期飼料と,同飼料に乾物換算で酵素分解物を5%配合した飼料をそれぞれ給与した対照区と試験区に分けた。その後は,体重約30~70 kgを肥育前期,70 kg以降を肥育後期として,両区とも共通の各期市販飼料を給与した。体重115 kgまで到達した供試豚は,12時間以上の絶食後,慣行法によりと畜し,枝肉とした。人工乳後期では,1日平均増体量(DG)が対照区に比べ試験区で高い傾向を示した(P<0.1)。飼料摂取量には両区に差はみられず,結果的に飼料要求率は対照区に比べ試験区で有意に低い値となった(P<0.05)。肥育期では,前期DGには両区間に差はみられなかったものの,後期および肥育期間全体のDGが対照区に比べ試験区で高い傾向を示し(P<0.1),115 kg到達日齢も短い傾向を示した(P<0.1)。一方,肥育前期および後期,肥育期間全体の飼料摂取量と飼料要求率には両区間に差はみられなかった。枝肉では,と体長と背腰長Iが対照区に比べ試験区で長い傾向を示し(P<0.1),背腰長IIが対照区に比べ試験区で有意に長い値を示した(P<0.05)。加熱損失,せん断力価は両区間に差はみられなかった。以上の結果から,人工乳後期飼料に配合したホタテガイ外套膜酵素分解物の給与は,人工乳後期のみならず肥育後期の増体を高め,枝肉を長くする効果がある可能性が考えられた。
ブタの系統造成では,相対希望改良量を達成するための方法として,家系選抜指数から育種改良したい形質に対する重み付け値を算出し,各形質における予測育種価と重み付け値との積和を指標とする選抜が行われてきた(従来法)。本研究では従来の方法に代わり,育種価のBLUPに対する重み付け値を算出するプログラムを開発した。本プログラムは,サイズの大きな逆行列を算出するとともに,連立1次方程式を繰り返し解くことで重み付け値を算出する。本プログラムを用いることにより,相対希望改良量の達成を育種目標としたブタの系統造成などの選抜において,従来法よりも大きな改良効果の得られることが期待される。