日本養豚学会誌
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原著
  • 日巻 武裕, 東山 雛乃, 山本 徳則
    2025 年62 巻4 号 p. 81-92
    発行日: 2025/12/21
    公開日: 2026/03/17
    ジャーナル フリー

    ブタ人工授精(AI)において,希釈保存された精液の品質のばらつきは,妊娠率や分娩子数に影響を及ぼす要因の1つである。一方,近年,ブタ精子をブタ脂肪組織由来幹細胞(pADSC)と共培養すると精子の運動性が改善することが明らかとなった。そこで,本研究では,pADSCを凍結破砕し,細胞内容物の抽出ろ液による精子前培養がブタ精子の生存性,運動性および受精能に及ぼす影響を検討した。実験1では,精子前培養液に種々濃度のpADSC破砕ろ液をそれぞれ10%添加し,精子の生存性と運動性に及ぼす影響を検討した。生存率は,前培養を行う直前に比べるといずれの試験区でも有意な低下がみられたが,前培養を行った後では,200×104 cells/mL添加区が,無添加区,10%PBS(-)添加区,50×104 cells/mL添加区と比較して有意に増加した。前進運動率についても,前培養を行う直前に比べるといずれの試験区でも有意な低下がみられたが,前培養を行った後では,200×104 cells/mL添加区が,無添加区,10%PBS(-)添加区,50×104 cells/mL添加区と比較して有意に増加した。実験2では,無添加または200×104 cells/mLのpADSC破砕ろ液を10%添加した培養液でそれぞれ前培養した精子を用いて体外受精した。受精状況は,精子侵入率,平均侵入精子数および雄性前核形成率において,200×104 cells/mL添加区が有意に増加した。発生状況は,胚盤胞形成率において,200×104 cells/mL添加区が有意に増加した。以上の結果から,200×104 cells/mLのpADSC破砕ろ液の10%添加が前培養におけるブタ精子の生存性,運動性,受精能ならびに発生能を改善させることがわかった。本研究で得られた知見を,ブタ希釈精液の保存法やAIに応用することにより,効率的な産子生産やブタAIのさらなる普及・発展に貢献することが期待される。

  • 山本 千晶, 寺田 圭, 大竹 正剛, 岡部 修一, 大塚 誠
    2025 年62 巻4 号 p. 93-100
    発行日: 2025/12/21
    公開日: 2026/03/17
    ジャーナル フリー

    本研究では,豚ロース部分肉の保存過程における多周波数インピーダンス法の有効性を検証し,インピーダンス値比と保存日数,mK値(修正K値;mK=(HxR+Hx)/(IMP+HxR+Hx)と定義されるATP分解度指標)およびうま味成分(グルタミン酸含量)との関連性を明らかにした。豚肉は適切な環境での保存により品質が向上するが,多くの小売店では保存による美味しさの変化を考慮せず,商品回転を重視した販売が行われている現状がある。本研究では,豚ロース部分肉に多周波数インピーダンス測定法を適用し,高低2種類の周波数(100 kHzおよび2 kHz)を用いたインピーダンス値比と各種指標の関係を調査した。インピーダンス値比(2 kHz/100 kHz)はmK値との間に強い負の相関(r=-0.87)が,うま味成分であるグルタミン酸含量との間にも強い負の相関(r=-0.82)が認められた。加えて,インピーダンス値比と保存日数との間にも強い負の相関(r=-0.89)が示された。これらの結果から,保存過程では保存日数の経過に伴いインピーダンス値比が低下するとともに,mK値とグルタミン酸含量が上昇するという一貫したパターンが得られた。特に,インピーダンス値比とグルタミン酸含量の高い相関は,本手法が単なる保存期間の推定だけでなく,保存に伴ううま味成分の増加という品質面の評価にも有効であることを示している。多周波数インピーダンス法は,豚肉の保存状態を総合的かつ非破壊的に評価できる技術として,従来の経験や勘に依存していた主観的な評価方法や,時間と費用のかかる化学分析に代わり,小売店や流通現場において客観的かつ数値的な品質評価を可能にするツールとなり得ることが示された。

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