本論文では,汎惑星表層環境進化の解明を最終目標とした戦略的重力天体探査プログラムおよびその一翼を担う火星探査の科学的意義と推進戦略を述べる.戦略的重力天体探査プログラムでは,太陽系天体の水の起源・化学進化・分布を明らかにすることにより,各天体における水環境システムの解明を目的とする.特に,国際競争・国際協働が盛んな将来火星探査計画においては,科学的意義に加え,探査を取り巻く国内外の状況も鑑み探査戦略を策定する必要がある.そこで本論文では,表層環境進化と密接な関わりが示唆される火星浅部地下圏に対象を絞った探査を提案したい.
日本惑星科学会誌『遊・星・人』2018年第27巻第3号に掲載された記事『マンガン酸化物と室内実験から示唆される初期火星の酸化的表層環境』[1] に於きまして,記述ミスが1ヶ所ありました.以下の通り,お詫びして訂正致します.尚,この訂正による,実験結果や議論への影響はございません.
惑星探査データの解析により,固体惑星・衛星の内部構造とその進化に関する研究が進められている.そこでは地球物理学の古典的な「問題」が重要な役割を果たしているが,地球研究の解法がそのまま使えることは少ない.全球的な海が厚い氷に覆われた氷衛星における潮汐,内部熱進化を無視できないほど長い時間スケールで起こる月惑星地形の粘性緩和,時間とともに厚さの変わる対流性の氷地殻を持った氷天体の熱進化.筆者はこれまでこれらの問題に対して定式化の段階まで遡って取り組み,様々な知見を得ることができた.しかし,どのアプローチにも課題は残されている上,ここで取り上げるのは地球物理学における諸問題のほんの一握りにすぎない.今後も古典的な地球物理学的問題は惑星科学における研究課題を提供し続けるであろう.
毎度おなじみ無保証の原稿である.本稿に関連していかなる損害が発生したとしても,筆者は一切責任をとらない.
金星大気の全球的な流れを計算する数値モデル「AFES-Venus」とそれを用いた数値実験・データ同化について紹介する.AFES-Venusは,金星大気の惑星規模筋状構造や周極低温域,大気安定度の地方時依存性などの再現に成功している.AFES-Venusでは,高度55 km付近に低安定度層を導入したことと,空間解像度を高めたことによって,傾圧不安定の発達が計算されるようになった.数値実験により,傾圧不安定の発達が,金星大気の現実的な風速・温度場の再現にとって重要であることが分かってきた.また我々は,AFES-Venusを用いたデータ同化システムも開発しており,「あかつき」による観測を反映した現実的かつ時空間的に偏りのない金星大気のデータセットの創出や,個々の観測の重要度評価による観測計画立案への貢献も目指している.
2018年11月,「はやぶさ2」のミッションは,その前半が終了した.2018年6月27日に目的地である小惑星リュウグウに到着し,リモートセンシングによる観測は一通り終了した.また,小型ローバMINERVA-II1と小型着陸機MASCOTをリュウグウ表面に降ろすことにも成功し,これらからのデータの取得もできた.ただし,サンプルを採取するためのタッチダウンは,2019年に延期となった.これは,リュウグウ表面の至る所に岩塊が存在しており,安全に着陸できる十分に広い場所が見つからなかったため,探査機のより高精度なナビゲーションが必要になったためである.ここでは,「はやぶさ2」の誕生の経緯からミッション前半までをまとめてみることにする.
系外惑星が数多く発見され,ハビタブルゾーンにある地球型惑星も見つかり始めている.それらの惑星大気の観測も検討されているが,現行の計画で対応する可視近赤外域では観測が困難である.低温度星のハビタブルゾーンでは深紫外線輻射が強く,それによって高層大気が広がっている可能性がある.高層大気の観測には深紫外線領域での観測が有効であり,主星輻射強度も同時に観測することができる.本稿では,系外惑星大気と深紫外線輻射に関する解説を行い,現在検討中の観測計画について紹介する.
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