これまでに1万を超える小惑星の可視スペクトルが地上望遠鏡によって観測され,太陽系内の物質分布の全体像を理解するための重要なデータの一つとなっている.RyuguとBennuは,暗いアルベドを持つC型小惑星の中でも,異なるスペクトル型を持つ天体である.一方,炭素質コンドライト (C型小惑星起源と考えられている隕石群) の多様性の中で見ると,RyuguとBennuは似た物質で構成されている可能性が,帰還試料分析から示された.即ち,望遠鏡で観測される可視スペクトルの多様性は,必ずしも実際の物質多様性と対応しない可能性が浮き彫りになりつつある.本研究では,この原因を解明するため,「はやぶさ2」とOSI R IS -R Exに搭載された可視マルチバンド分光カメラの相互校正を行い,RyuguとBennuのリモートセンシングデータを高精度で比較した.その結果,カメラ間の感度に13%もの系統差があることが分かり,これを補正して初めて,RyuguとBennuの新鮮なクレーターは,非常に似たスペクトルを持っていることが明らかとなった.更に,クレーターの年齢とスペクトルの対応関係から,両天体のスペクトルは,同じトレンド線を正反対方向に進化したことが分かった.これらの結果は,両天体のスペクトルの違いが,形成後の宇宙風化に起因していることを示唆する.また,この結果は,C型小惑星がそのスペクトルの多様性から推測されるよりも,むしろ均質な物質で構成されている可能性を示唆している.そのため,太陽系内の物質分布を理解するには,スペクトル進化のメカニズムを解明することが不可欠であり,特に,静電浮遊による粒度分布の進化など,これまであまり注目されてこなかったメカニズムが重要である可能性がある.
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