原始惑星系円盤中のガス面密度分布を観測的に決定することは,惑星系形成過程を議論する上で極めて重要であるが,これまでは有効な手法がなかった.我々は,これまで見過ごされてきた効果である輝線の圧力広がりを用いると,ガス面密度分布が精度良く測定可能であることを見出した.さらに,アルマ望遠鏡による観測により,3つの原始惑星系円盤において圧力広がりによる輝線ウィングを初めて検出するとともに,ガス面密度を推定することに成功した.これらの円盤には惑星系形成に十分な量のガスが存在することが明らかになったほか,ガス圧力極大へのダスト集積などの重要な物理過程が実際に起きていることが示された.本稿では,提案手法を解説するとともに,これまでの観測結果を紹介する.
欧州宇宙機関の木星圏探査機JUICE (JUpiter ICy moons Explorer)に搭載されている科学機器の一つに,サブミリ波分光計Submillimetre Wave I nstrument (SWI)がある.深宇宙探査の歴史の中でサブミリ波(テラヘルツ波)の電磁波を用いた惑星観測はこれまでに例がなく,SWIが世界で初めての試みとなる.新たな目(波長) で探査する木星やガニメデ,エウロパ,カリストなどの氷衛星はどのような姿を見せてくれるのだろうか? 本稿ではSWIが新たに拓くと期待される木星圏の姿(科学目標),それを達成するためのSWIの測器詳細,そして,2024年8月にJUICEが行ったLEGA(月・地球重力アシスト)におけるSWI測器性能の実証について述べる.
火星周辺には,黄道光ダストに代表される惑星間ダストのみならず,フォボス・ダイモスや火星自体に由来する微小粒子が存在する可能性が以前から指摘されてきました.しかし,その存在はこれまで間接的な証拠にとどまり,実態は明らかではありませんでした.日本のMMX探査機に搭載されるCMDMは,こうしたダストを初めて直接・定量的に観測し,火星圏ダスト環境の実態解明に大きく貢献することが期待されています.
火星衛星探査計画(MMX)探査機搭載レーザー高度計(LIDAR)は探査機の高度を計測する装置で,装置の視野内に天体が含まれている際には継続的に測距を行う.測距可能範囲は100 mから100 kmと3桁に及び,測距の精度は高度100 kmでも1 m以下の見込みである.
本稿では,若手研究者の視点から,中国・北京で開催された金星大気研究に関する国際ワークショップへの参加体験を振り返ります.発表やセッションでの議論を通じて得た学びに加え,研究者同士の対面での交流や現地での出来事などを交えながら,感じたことを率直に綴りました.つらつらとした記録ではありますが,最後まで読んでいただけたら幸いです.
惑星科学を始めとした様々な分野において,離散要素法や粒子法といった粒子を用いたシミュレーションが行われている.その結果を可視化する際にはParaViewやPOV-Rayなどが用いられている.特にPOV-Rayは使いこなすことができれば現実顔負けのフォトリアルな可視化を行うことができるものの,テキストベースでの可視化のため,カメラ角度設定などの操作に困難が伴う.そこで本稿ではそれに代わるツールとして3DCGソフトウェアのBlenderを紹介する.Blenderを紹介する記事や書籍などは多数存在するが,そのほとんどはゼロから対象を作成するものであり,シミュレーション結果を可視化する手法を解説するものはほとんどない.特にBlenderを使用したことがない人でもフォトリアルな可視化を行えるような手順を紹介したい.
2024年2月27日から3月1日までで行われた第16回惑星探査データ解析実習会の内容を報告します.今回のテーマは「PDS Analyst’s Notebookと会津大学・月火星箱庭構想によるローバ走行トライアル体験」の二本立てでした.前半はNASA / PDS Geosciences Node Associate DirectorのThomas Stein講師を会津大学にお招きしてPDS A nalyst’s Notebookについて解析者側と開発者側の両方について学びました.後半は第十四回に実施した月面ローバ探査のためのSLAM体験を雛形にして福島県南相馬市のロボットテストフィールド福島においてローバ走行トライアルを体験しました.オンラインによる参加者も交えてのハイブリッド形式で開催されました.
2025年2月に行われた第17回月惑星探査データ解析実習会の内容を報告します.今回のテーマは「はやぶさ2のGISデータ解析」でした.オンサイト会場は宇宙科学研究所とし,オンラインによる参加者も交えてのハイブリッド形式で開催されました.神戸大学,東北大学,北海道大学,東京大学,総合研究大学院大学,高知工科大学,会津大学,国立天文台,宇宙科学研究所,産業技術総合研究所の10機関から学生からシニアまで幅広い世代の16名が参加し,三日間の日程の中で座学と実習,各自のテーマによる成果の報告を行いました.
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら