本稿は、コンテンツツーリズム領域における実証的データの一層の積み増しを目指して、アニメーション映画「耳をすませば 1 」のモデル 地とされる東京都多摩市聖蹟桜ヶ丘 2 を事例とし、同地を訪れたファンを対象 に行った アンケート調査を通して、モデル地訪問行動の実態ならびに他 の 作品の受容についての把握を試みた。
調査の結果、多 摩市を訪れる「耳をすませば」ファンは年間1万人以上に達すると推定される。女性が約 6 割、 30 歳以下の若い世代が 9 割近くを占めており、居住地は全国にまたがっている。全体の約 3 割が(特に男性の約 4 割が)複数回訪問するリピーターであり、異性のパートナーやグループを組んでの複数名での訪問も多い。
他の作品のモデル地も訪れてみた いと回答したのは 7 割ほどいるが、実際に訪問したことがあるのは約 3 割にとどまっており、発展の余地がある。他の作品に対する好感度では、世界観が似ていると考えられる作品への親和性が高く、作品によってファン層が大きく異なる傾向が認められる。地域振興を目指してモデル地同士が提携する場合、作品の方向性やファンの選好性に留意した取り組みの必要性を示唆している。
インターネット上のブログ や SNS 等で習慣的に情報を発信している層は、モデル地巡り、いわゆる「聖地巡礼」に対する関心も高い傾向が出た。関心が高まるほどモデル地への 訪問意欲や実際の訪問率が上昇しており、他のジャンルへの関心も高くなっている。 一層の データの蓄積が求められるところであるが、彼らのような積極的な情報発信者がコンテンツツーリズムの主要な体現者になっていくであろうと予測される。
抄録全体を表示