(1)K-1801にUVを照射し,セルレニン感受性を指標として野生型
FAS2がホモ化された株を10株取得した。
(2)総米50 gの小仕込み試験により,野生型
FAS2がホモ化した株を評価したところ,アルコール分はK-1801とほぼ同じで,酸度が上昇した株が多くみられ,リンゴ酸,コハク酸,酢酸生成量が増加していた。また,野生型
FAS2がホモ化した株のカプロン酸エチル生成量はK-1801より大幅に減少し,酢酸イソアミル生成量は大幅に増加した。
(3)アルコール分,酸度がK-1801に近く,酢酸イソアミル生成量が高い株(GL-11)と,K-1801との混合醸造を様々な比率で行ったところ,下記の結果が得られた。
・いずれの仕込みにおいても,もろみの重量はほぼ同じように減少した。
・それぞれの菌株の割合はもと立て時から上槽時までほぼ維持されていた。
・酸度はほぼ同じで,各有機酸も数十mg/L程度の差に収まり,味の成分に大きな違いは出なかった。
・カプロン酸エチルなど香気成分は混合比率によりバラエティーに富んだものとなった。
・官能評価では味の評価に明確な傾向はみられなかったが,香り,特にカプロン酸エチル生成量の違いはしっかり認識された。
・以上の結果より,K-1801とGL-11との混合醸造は,K-1801がもつ味のバランスを大きく変えずに香気成分のバランスだけを変化させることができる醸造方法であることが示された。
抄録全体を表示