大雨時の降雨域の構造をしらべるため,日本でもっとも多雨地域として知られている尾鷲付近を選び,尾鷲測候所内にドップラーレーダ,垂直走査レーダ,ミリ波レーダを設置し,雨滴・永晶核・海岸線付近の風・雨量等の地上測器を用いて観測を行った.昭和46年8-9月間の観測資料のうち,今回は台風23号に伴う降雨帯が尾鷲付近を通過した際の大雨について,名古屋レーダ資料等を用いて降雨域の垂直・水平構造について解析した,
台風降雨帯の通過に伴う尾鷲付近の8月30日の日雨量は約470mmに達し,尾鷲の南海上では層状性の帯状エコーのなかに発達したセル状エコー(高度約8,000m)が散在し,これらが尾鷲付近に接近した際強い降雨を観測した.特徴的な垂直構造としては,エコー頂高度約3kmの下層積雲の存在である.この積雲は8m/s程度の上昇流を示して密に分布し,比較的強い降雨の続いた時間帯では,これら下層積雲の間でも1~2m/sの上昇流が観測され,強い降雨を持続させる原因となっていることが明らかになった.これらの下層積雲の水平分布をしらべると,尾鷲付近の海岸線にほぼ平行に分布し地形の影響をうけて発生・発達していることも明らかになった.
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