本研究では豆腐および卵白ゲルを試料として,未加熱大豆油(泡延距離27mm),通気加熱20時間の油(泡延距離32mm)および同25時間の油(泡延距離40mm)を用いて揚げ操作を行い,揚げ物の品質について調べた.結果は次のとおりであった.(1) 揚げ油の変質度が進むにつれ,揚げ材料に対する揚げ油の浸透力が弱くなった.したがって,揚げ試料の水分が多く残り,吸油量が少なくなるが,逆に表面付着油率は高くなった.
(2) 揚げ油の変質度はテクスチャーにも影響を及ぼし,それが進むにつれて圧縮によるかたさおよび貫入によるかたさは低くなった.
(3) 組織学的な観察においても,変質度が進むにつれて表面付着油が増し,油の浸透力が弱くなることが確認された.
(4) 変質度が異なる油で揚げた試料の官能検査では,かたさ,
からっと
した揚がりおよび油っこさにおける分散にそれぞれ有意差を認めた.
(5) 揚げ物の品質は通気加熱20時間の油(泡延距離32mm)と25時間の油(泡延距離40mm)の間で明らかに異なり,この短時間での油の変質が揚げ物の品質を急激に低下させることが示された.
以上のように本研究では,揚げ油の変質度(油の泡延距離)と揚げ物の品質との間の関連性を具体的に明らかにした.したがって,外食産業の揚げ物の品質管理に関し,調理加工の現場においても判りやすい一つの指標を与えることができた.
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