本研究では、全国の信用金庫が取り組む、市民による創業や地域活動を生み出すための支援業務の動向を把握し、その支援メニュー数の多さ等から多摩信用金庫を先進事例として抽出し、支援業務の展開経緯、動機、意図を分析した。その結果、第一に、創業や地域活動を生み出す支援のプロセスに着目すると、金融機関の本業である法人化への経営相談・支援業務だけでなく、創業等に興味を持った人に向けた萌芽段階の支援から、活動が始まる前の活動啓発といった初動段階まで展開していることがわかった。第二に、支援対象となる活動や地域の幅に着目すると、個人や特定組織への活動支援から、地区レベルのコミュニティ形成支援、さらには、観光的手法を用いて複数・広域的地域の活性化へと範囲を広げながら展開していることがわかった。また、信用金庫内の業務的位置づけとして、CSR(社会的責任)としての地域貢献というだけでなく、支援目的や対象を明確化し、中期的には法人化・事業化へつながることを期待することで、信用金庫内の人的資源を割いていると考えられる。その実績はまだ数例であるが、今後の信用金庫によるまちづくりへ貢献方法として意義があると考える。
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