ヒート
アイラン
ド強度の発達に関して、風は重要な役割を持っており、Oke(1976)の観測結果からも、風速が大きくなるにつれ、ヒート
アイラン
ド強度が小さくなる傾向が見られる。しかし、風速約2m/sでヒート
アイラン
ド強度が最大となる傾向も見られる(榧根,1960; 榊原ほか,1998; 榊原,2000; 野林・林,2009)。ヒート
アイラン
ド強度がこのような風速依存性を示す原因として、ヒート
アイラン
ド循環による影響(中川,2011)や、力学的混合による影響(榊原ほか,1998; 榊原,2000; 野林・林,2009)が示唆されているが、これらの原因を裏付ける根拠は説明されていない。そこで本研究では、ヒート
アイラン
ド強度の風速依存性に影響を与える要因について解析を行った。 茨城県つくば市駅付近を市街地とし、地上とビルの屋上にて気温観測を行った。筑波大学陸域環境研究センターを郊外とし、圃場内の気象観測塔のデータから、気温、正味放射量、地上顕熱フラックス、風速のデータを使用した。解析期間は2010年から2011年の冬季夜間である。市街地と郊外の気温差をヒート
アイラン
ド強度、上空30mと地上の気温差を逆転強度とし、以降の解析で使用した。 その結果、ヒート
アイラン
ド強度は風速約2m/sで最大となる傾向が見られ、市街地・郊外の逆転強度に関しても同様の傾向が見られた。特に郊外の逆転強度とヒート
アイラン
ド強度は相関係数が高く、一対一に近い対応関係であることから、ヒート
アイラン
ド強度の風速依存性には、郊外の逆転強度が影響していると考えられる。特に最大ヒート
アイラン
ド強度が出現する風速1.5~3.0m/sの風束帯に関して、ヒート
アイラン
ド強度がばらつく原因を調べるために、ヒート
アイラン
ド強度の増加に対して、郊外の逆転強度や、逆転強度に影響を与える要素がどのように変動するかを調べた。その結果、ヒート
アイラン
ド強度の増加に従い、郊外の逆転強度の増加や、郊外の地上風の減少、郊外の地上顕熱フラックスの0への収束が確認できた。この結果から、ヒート
アイラン
ド強度が小さい場合は熱交換によって、ヒート
アイラン
ド強度が大きい場合は冷気溜りによって郊外の気温が低下しており、郊外での冷却度合がヒート
アイラン
ド強度の大小に影響を与えていると考えられる。
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