パプアコムラサキ,Apaturina erminiaはモルッカ諸島,ニューギニア島,ソロモン諸島に産する広域分布種である.本種はermineaと綴られることが多いが,Cramer(1779)の原著ではerminiaとされているので注意を喚起したい.ビスマルク諸島からもApaturinaに所属する個体群が知られ,最も古くはニューブリテン島を基産地とするApaturina erminea[sic]var.neopommeraniaがHagen(1897)により記載されている.ビスマルク諸島産のneopommeraniaについてはerminiaと別種と認める説があり,たとえばザイツのFruhstorfer(1913)やユンクのカタログでのStichel(1938)は別種の立場を,また最近のD'Abrera(1977)などではneopommeraniaをerminiaの亜種として扱っている.著者の見解としては,パプアコムラサキ,A.erminiaは,少なくとも北モルッカ,南モルッカ,ニューギニア,ソロモン諸島の4地域でそれぞれ顕著な固有の変異集団があると見なされ,ビスマルク諸島だけを独立種として扱うことには同意できない.さてその後,ビスマルク諸島に所属するニュー
アイルランド島
にもパプアコムラサキが産することがFruhstorfer(1904,1913)により記述されたが,「A.erminiaの新亜種」あるいは「A.neopommeraniaの地域変異型」と表記されたにとどまり,命名されなかった.1938年に出版されたユンクのカタログにおいて,Stichel(1938)は「Bryk氏によりニュー
アイルランド島
産のA.neopommeraniaに対して亜種名elzuniaが与えられる予定である」と記述し,その出版が同年内に行われることを予告したが,実際にはBrykによる命名は翌1939年の出版物においてなされた.ニュー
アイルランド島
産のパプアコムラサキ,A.erminiaに対して,Morita&KawamuraがFutao誌第27号(1998)において新亜種sorimachiiを与えている.しかしながら,同島産の本種には,上述したようにBryk(1939)により亜種名elzuniaが与えられている.したがって,sorimachiiはelzuniaのjunior synonymであると結論される.
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