1979年5月下旬から8月上旬まで,名古屋大学構内に100×130mの調査地を設置し,マークした個体の追跡によってセグロ
アシナガバチ
の採餌行動を観察した。
創設期における女王の採餌距離は平均39.4mで,採餌場所はコロニー間で重なり合っていた。働きバチの採餌距離は平均48.2mで,同一コロニー内の働きバチ間でも採餌場所は重なり合っていた。以上のことから,コロニーレベルでは,コロニー間に採餌なわばりは存在せず,また,コロニー内の個体間で採餌場所が分割されることはないと考えられた。
しかし個体レベルでは採餌行動に一定の規則性が認められた。残肉回収の必要のある大型の餌を狩った場合,ハチはその次の餌の探索で再び採餌成功場所の近くに飛来(再飛来)したが,小さな餌を狩った場合にはこうした行動は示さなかった。
女王の探索時間は働きバチの探索時間より短い傾向があった。これには,創設期に見られる他巣女王による幼虫の盗み(共食い)や,アリのような天敵からの巣の防衛と緊急に必要な(水のような)資源の搬入の必要性が影響していると考えられた。
以上の結果について,フタモン
アシナガバチ
の観察結果との比較を行い,
アシナガバチ
の採餌行動の特徴づけを試みた。
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