アシロ目
アシロ科のシロチョウマン属はインド洋と西部太平洋に分布し, 水深40-823mからトロールで採集されている.本属魚類は揚網時に損傷を受けやすく, アシロ科の他の属に比べ同定が困難である.本研究では280個体の標本に基づき分類学的再検討を試みた.Cohen and Nielsen (1978) による本属の標徴形質のうち, 第1鰓弓の発達した鰓耙の数は14-41本に, 胸鰭鰭条数は20-26本に訂正される.上篩骨と涙骨が嗅房をとり囲むこと, 7-15本の擬鯉があること, 背鰭始部が第1-4脊椎骨上方かそれより前方にあることと, 耳石の形態を標徴形質に加えた.本属は
argenteum種群と
macropus種群に2分される.前者は腹鰭が1軟条からなること (後者では2軟条), 基鰓骨中央部に1歯帯があること (2歯帯), 腹椎骨が11個であること (12-13個), 背鰭始部が通常第3-4脊椎骨の上方にあること (通常第1脊椎骨の上方かその前方) で後者と異なる.前者は
G. argenteum, G. lucidumと, 本論文で新種として記載した
G. effulgensを含む.後者は
G. macropus, G. longipes, C. oceanium, G. japonicumを含む.本属の模式種である
G. argenteumについては耳石もより詳細に記載した.
argenteum種群内では眼窩径, 擬鰓数, 胸鰭鰭条数と, 耳石の形態により種が識別される.
macropus種群内では, 発達した鰓耙の数, 尾椎骨数, 胸鰭鰭条数, 腹鰭長, 擬鯛数, 背鰭と臀鰭始部での体高, 眼窩径により種が分離可能で,
G. longipesは擬鰓の色彩と耳石の形態も特異的である.フィリピンから得られたG. effulgensは, 眼窩径が頭長の29.0-31.0%であること, 擬鰓が7-8本であること, 耳石は薄く背縁に明瞭なくぼみがあることで種群内の既知種と異なり, 新種として記載した.
G. macropusの後模式標本と副後模式標本を指定した.
G. joponicumシロチョウマンはKamohara (1936) により記載されたが, 後年Kamohara (1954) はこの種を
G. ocearniumの同物異名とみなし, 以後両種の分類に混乱が生じた.しかし, 両種問では眼窩径, 臀鰭始部の背鰭鰭条との相対位置, 体高にわずかの重複が認められるにすぎず, また, 発達した鰓耙の数と鰓耙の総数が異なり,
G. japonicumは有効種と認められる.本種の模式標本は第2次世界大戦中に焼失しており, 戦後蒲原が模式産地で採集した標本から新模式標本を選定した.
G. oceaniumには新和名ニセシロチョウマンを与えた.現生種7種の類縁関係と分布を図示し, 検索表を提示した.
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