過沃素酸によるGlycolの酸化開裂反応を利用して,酸化後のキシローズ残存量から,ヘミセルローズの結合関係を調べた。ヘミセルローズとリグニンやセルローズとの結合及びヘミセルローズ自体の分枝を考慮して,アルコール・ベンゼン抽出木粉,1%NaOH処理木粉,ホロセルローズ, 1%NaOH処理ホロセルローズを試料として用い,樹種については広葉樹,アラカシ・アカメガシワ,針葉樹,スギ・アカマツに就て実験を行つた。
アルコール・ベンゼン抽出木粉と1%NaOH処理木粉の酸化後のキシローズ残存量の差は,
アセチル基
との結合により保護されたキシローズ量を示す。広葉樹については,
アセチル基
とキシローズの結合比が1 mol:1 molとすれば,少くとも
アセチル基
全量の50%はキシローズ或はヘミセルローズに結合していることがわかり,逆に,
アセチル基
全量の最大50%はヘミセルローズ以外の木材成分と結合していることになつた。ホロセルローズの酸化後のキシローズ残存量の観測値とホロセルローズ中の
アセチル基
含量から計算した残存すべきキシローズ量とを比較すると,観測値の方が相当小であり,その差に相当する
アセチル基
がキシローズ以外の他の成分と結びついていることを意味し,更に観測されたキシローズ残存量に値の中には,セルローズとの結合,ヘミセルローズの分岐により酸化から保護されたキシローズも含まれており,この量に相当するだけ,更に
アセチル基
の保護は減じ,従つて他の成分に結びついた
アセチル基
量が増し,かくて広葉樹においても
アセチル基
の相当量はヘミセルローズ以外の他の木材成分と結合していることが立証された。針葉樹については,木材の
アセチル基
含量が少量であり,しかもその中ヘミセルワーズには,少量即ちスギの場合
アセチル基
全量の33.6%,アカマツの場合9.5%しか結合していない結果となつた。これを観測値の面からみると,実験誤差範囲内の値であり,判然としたことはいい切れない。少くとも広葉樹に比べてより多い割合で,
アセチル基
はヘミセルローズ以外の木材成分と結合しているといえよう。
アルコール・ペンゼン抽出木粉とホロセルローズとの酸化後のキーシローズ残存量の上比較から,全樹種とも木材中のキシローズ全量の約20%はリグニンと結合していると言い得るに足る,注目すべき事実が知れた。
アラカシヘミセルローズの酸化後のキシローむズ残存量からはキシローズ全量の約2.8%は分岐により酸化から保護されていることが知れた。
ヘミセルローズとセルローズとの結合については,酸化後のキシローズ残存量の差が実験誤差範囲内の値を超えず,判然とした推論は得られない。
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