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クエリ検索: "アビシニアコロブス"
34件中 1-20の結果を表示しています
  • 松田 一希, 橋本 千絵, 五百部 裕, 湯本 貴和, Baranga Deborah, Clauss Marcus, Humme Jürgen
    霊長類研究 Supplement
    2021年 37 巻
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アビシニアコロブス
    Colobus guereza)は、アフリカに最も広く分布するコロブス類の一種である。その分布域の広さから、同種内においてもその分布する地域によって、多様な採食行動が報告されている。 私たちの研究チームは、ウガンダ共和国のカリンズ森林保護区に生息する、本種の採食行動を調査している。私たちは、
    アビシニアコロブス
    の一群を人付けし、延べ4300時間以上もの本種の行動観察を30カ月間実施した(2013年11月~2016年4月)。行動観察に加え、調査地内の食物資源量を見積もるための毎木調査、植物フェノロジーに関する調査も行った。その結果、カリンズ森林の
    アビシニアコロブス
    は、 31種類の植物種を調査期間中に摂取し、強い葉食性(採食時間の87%)であることがわかった。最も好んで採食した植物は、アサ科エノキ属のCeltis durandiiの若葉であり、全採食時間の58%を占めていた(Matsuda et al. 2020, Primates)。本発表では、これらの基礎的な採食データと植物資源量のデータをもとに、
    アビシニアコロブス
    が採食する葉の選択性を、その栄養素、硬さ、牛のルーメン液を用いて計測した消化率といった観点から検討する予定である。

  • *河野 穂夏, *山田 一憲, *中道 正之
    霊長類研究 Supplement
    2014年 30 巻 P14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/28
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    神戸市立王子動物園で飼育されている
    アビシニアコロブス
    Colobus guereza)集団を2011年12月から2012年10月まで11カ月間観察し、2頭の成体メスによる3回の出産を記録した。
    アビシニアコロブス
    の妊娠期間は約160日であるが、出産直前になっても妊娠メスの腹部が大きく膨らむことはなく、出産前に外見で妊娠を判断することは困難であった。また、
    アビシニアコロブス
    の繁殖に季節性はないと言われており、発情時に特有の音声を発したり、性皮が明らかに腫脹することもないため、観察からメスの繁殖状態を推察することは難しい。本研究では、出産日から逆算し、妊娠状態とメスの社会行動の関連を検討した。妊娠していないと推察される期間には83%であった成体メスと集団内の他個体との接触率は、出産の2カ月前には40%まで減少した。集団内のどの他個体とも接触および近接していない割合は、妊娠していないと推察される期間には4%であったが、出産の2カ月前には41%まで増加した。これらの傾向は、対象となった3回の出産いずれにおいても確認された。これらの結果から、
    アビシニアコロブス
    のメスは妊娠、出産といった繁殖状態によって、集団内の他個体との関係性を変化させている可能性が示唆された。さらに、成体メスの行動を観察することによって、外見からだけでは判断できないメスの妊娠を推察できる可能性が示された。
    観察期間に、集団には4頭から7頭の未成体が存在した。誕生時期が異なる5頭の子の行動を月齢ごとに解析すると。子が母親に抱かれている割合は加齢に伴って顕著な減少を示したが、子ども同士での社会的遊びの生起率は加齢に伴う増減を示さず。5頭の子で観察月ごとに似た傾向を示した。社会的遊びは子ども同士で同期していること、社会的遊びの生起率は少なくとも28カ月齢までの子の発達段階を示す指標とはならないと考えられた。
  • *大井 裕典, *山田 一憲, *中道 正之
    霊長類研究 Supplement
    2013年 29 巻 P-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/14
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     霊長類の多くの種で成体メスが自分の子以外の子に興味を示し,触ったり抱いたりする行動が見られる.これらの行動は infant handlingと呼ばれており,様式や頻度は種によって様々である.この違いは種の寛容性の違いが影響していると考えられている(Paul, 1999).
    アビシニアコロブス
    Colobus guerezaは infant handlingを頻繁に行うことが知られているが,なぜ頻繁に起こるのかは明白にされていない.カニクイザル Macaca fascicularisなどでは,成体メスが母親に毛づくろいすることで,その後に infant handlingが起こりやすくなる(Gumert, 2007).本研究では,
    アビシニアコロブス
    の infant handlingが毛づくろい行動によって促進されているかを検討した.
     王子動物園(神戸市)の
    アビシニアコロブス
    集団(成体オス 1頭,成体メス 3頭,子 2-4頭)のうち観察期間に子がいた成体メス(母親)2頭を対象とし,groom,infant handlingなどの行動を全生起法で記録し,行動の連鎖解析を行った.2011年 7月-2012年 8月の 38日間行い,総観察時間は 64時間であった.
     成体メスは他個体の子を handlingする直前に有意に高い頻度で母親に毛づくろいを行っていたが,成体メスが子を handlingする時間と,infant handlingの直前に成体メスが子の母親に行った毛づくろい時間との間に有意な正の相関はみられなかった.infant handlingの直前に子の母親に毛づくろいをしなくても子を handlingすることもあった.成体メスは直前に毛づくろいをすることでより容易にhandlingを行える可能性があるものの,子を handlingする対価として母親に毛づくろいを行っているわけではない可能性が示唆された.むしろ母親に毛づくろいをすることによって,毛づくろいを受けた母親が抱いている子を離すことが多いため,子の handlingが容易にできたと考えられた.
  • 奥村 太基, 菊田 恭介, 根本 慧, 坂口 慎吾, 廣川 類, 綿貫 宏史朗, 打越 万喜子, 松田 一希, 伊谷 原一
    霊長類研究 Supplement
    2016年 32 巻 A01
    発行日: 2016/06/20
    公開日: 2016/09/21
    会議録・要旨集 フリー

    コロブス類では、母親以外のメス個体が赤ん坊の世話をする、「アロマザリング」と呼ばれる行動が頻繁に見られることが知られている。本行動には、群れ内のメスの出産経験の有無、メス間の血縁度に加え、アカンボウの年齢が影響しているといわれている。

    アビシニアコロブス
    の新生児の毛色は純白で、成長とともにオトナ同様に毛色が黒みがかっていく。本発表では、日本モンキーセンターの
    アビシニアコロブス
    新生児(2015年7月12日出生)の観察をとおし、本種のアロマザリング行動のパタンが、新生児の成長にともなう毛色の変化とともに、どのように変わっていくのかを報告する。新生児の行動観察は、2015年7月から2016年1月の延べ40時間(合計64日、10~100分/日)おこなった。新生児の行動は、連続記録の個体追跡法で記録し、同時に毛色の変化を定量化するため定期的に新生児の写真を撮影した。行動観察の結果、観察期間終盤には、新生児の毛色はオトナ個体とほぼ同様な程度にまで黒みがかり、単独での行動頻度も増加した。母親が新生児を抱く頻度は、新生児の成長(毛色の変化)と顕著な関係性は見られなかった。一方で、アロマザリングの頻度は新生児の成長過程、特に毛色の変化にともなって大きな変化が見られた。つまり、新生児の毛色がオトナの毛色に近づくにつれ、母親以外のメス個体が新生児を世話する頻度が減少していった。本結果は、
    アビシニアコロブス
    における新生児の特殊な毛色が、母親以外の個体からの注目を集め、新生児への世話行動を促すシグナルになっている可能性を示唆している。

  • *橋戸 南美, 糸井川 壮大, 早川 卓志, Amanda D MELIN, 河村 正二, Colin A CHAPMAN, 松田 一希, 今井 啓雄
    霊長類研究 Supplement
    2018年 34 巻 B02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/22
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    旧世界ザルには,種子や果実食傾向の強いオナガザル亜科,複雑な胃をもち葉食傾向の強いコロブス亜科が含まれる。一部の葉には毒性を示す二次代謝産物が含まれており,動物は苦味受容体(TAS2R)によりこれらの物質を検知して食物選択をしている。これまでに旧世界ザルを対象にした全苦味受容体遺伝子(TAS2R)の多様性解析を行った。その結果,コロブス亜科の多くのTAS2Rはオナガザル亜科と同様に保存的進化傾向を示す一方で,一部のTAS2Rは多様化していることが明らかになった。これまでの研究では生息地の異なる種間で比較を行っていたため,採食行動の違いと味覚の違いを直接的に比較することは困難であった。そこで本研究では,同所的に生息する旧世界ザルを対象にした苦味受容体遺伝子とその機能の種間比較を行うことで,味覚と採食行動の関係を直接的に比較した。ウガンダ共和国キバレ国立公園に同所的に生息する旧世界ザルを対象とした。これまでにベルベットモンキー(Chlorocebus aethiops),アカコロブス(Procolobus badius),

    アビシニアコロブス
    Colobus guereza)のフンから抽出したDNAを用いて,約30種類の全苦味受容体遺伝子の配列を決定した。また,アカコロブスや
    アビシニアコロブス
    は,βグルコシドの一種で毒性の高い青酸配糖体を含む葉を食べることが報告されている。そのため,βグルコシドを受容するTAS2R16に着目して,細胞アッセイによる受容体機能解析を行った。βグルコシドの一種であるサリシンに対するTAS2R16の反応性を調べたところ,
    アビシニアコロブス
    のTAS2R16はアカコロブスやベルベットモンキーに比べて,有意に反応性が低いことが明らかになった。3種における苦味受容体レパートリーおよびTAS2R16の反応性の多様性について,3種における食性や消化能力の違いに着目して議論する。

  • 中道 正之
    霊長類研究 Supplement
    2021年 37 巻
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    高齢メスの行動特徴として社会的関わりの減衰、あるいは社会的孤立傾向が、マカク属のサル類で報告されている。しかし、勝山ニホンザル集団のα(第1位)メスは、30歳を超える超高齢であるにもかかわらず他個体との近接や毛づくろいの頻度は全く低下しなかった。このメス(正式名称:Bera53’71、通称Pet)は、16歳の時にαメスだった母ザルの死亡でαメスとなり、32歳で集団からいなくなるまで(死亡と推測)、αメスであり続けた。周囲5m以内に他の個体が一頭もいない「単独」の生起率(20分毎に記録)は、24歳から29歳までのメスでは35%から50%であるのに対して(Nakamichi, 1984)、Petが28歳、 31歳、32歳の時の値は7%から12%という低い値であり、社会的孤立傾向が認められなかった。31歳、 32歳の時も、4頭すべての娘、1位から3位までの中心部オスとの5m以内の近接をそれぞれ10%から20%の高頻度で行っていた。Petの毛づくろいの生起率は22歳の時も、31歳、32歳の時も30%前後で変わらなかった。しかし、22歳では毛づくろいをするよりも受けることが多かったが、31歳、32歳では逆に、毛づくろいを行うことの方が多くなった。特に、近縁メスと中心部オスへは毛づくろいを行うことの方が顕著に多かった。32歳の時に行った追跡観察(10分×143回、23時間50分)から、Petが他個体に接近する回数は、他個体から接近される回数よりも多く、Petが毛づくろいを開始するのは、毛づくろい請求を受けた時や毛づくろいのお返しとしてよりも、自発的に開始することが多かった。逆に、Petが毛づくろいを受ける際は、他個体からの自発的な毛づくろい開始よりも、Petの毛づくろい請求に基づくものが多かった。しかし、Petの毛づくろい請求の77%は失敗していた。以上から、αメスという高位であるためPetは他個体への積極的な接近、毛づくろいの自発的開始や請求が可能で、これが彼女の社会的孤立傾向を防ぎ、かつαの位置の維持に役立ったと思われる。

  • 石塚 真太郎
    霊長類研究 Supplement
    2021年 37 巻
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    アロマザリング行動は、霊長類で広く見られる。これまでに様々なアロマザリング行動のレパートリーや、養母となる個体の特徴が報告されてきたものの、アロマザリング行動を引き起こす社会的・生理的要因については、未だに不明である。本発表では、ニホンザルのメスによる綿密なアロマザリング行動2 事例の詳細について報告する。2事例は異なる個体群で観察され、運搬、毛づくろい、授乳などの養育行動が観察された。2事例のアロマザリング行動は、養母の出産の20日あるいは29日前に開始し、最大84日間継続した。本研究では、ニホンザルのメスがアロマザリング行動として授乳を行うこと、出産直前の個体が養母になり得ることが初めて示された。これらの行動が生起した要因としては、餌付けによって養母の栄養状態が良好であったこと、出産直前であるため養母の養育行動関連ホルモンの濃度が上昇していたこと、養子の生物学的母親が消失していた可能性が考えられる。本事例は、霊長類のアロマザリング行動が生起する背景を理解する上で重要である。

  • 霊長類研究
    2020年 36 巻 2 号 83-86
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/23
    ジャーナル フリー
  • 星野 智, 島田 英里, 髙橋 勇太, 八代田 真人
    動物の行動と管理学会誌
    2022年 58 巻 2 号 48-65
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    日本国内の動物園における樹葉サイレージの活用を目的に,比較的よく利用される常緑樹2種(シラカシ,スダジイ)および落葉樹1種(ソメイヨシノ)の樹葉をサイレージ調製し,調製過程における栄養成分および発酵性状の変化を比較するとともに,飼育下の有蹄類2種および霊長類4種に給与した際の飼料としての受け入れ度合い(受容度)を評価した。栄養成分のうち,中性および酸性デタージェント繊維(P<0.001),灰分(P=0.011)およびCa(P=0.030)含量では調製過程に伴う経時的な増加が,非繊維性炭水化物(P<0.001)および細胞内容物(P<0.001)含量では経時的な減少が確認された。樹葉3種ともに調製過程での顕著なpHの低下や乳酸生成は確認されなかったが,変敗も確認されなかった。各動物種が示す受容度は,サイレージ調製前後で顕著に変化はしないものの,動物種によって受容度が異なったため,動物種ごとに給与する樹種を選定する必要があるだろう。

  • 武真 祈子, Bitencourt Aparecida, Saunier Euziane, Jesus Rogério, Rodorigues Aline M., Koolen Hector HF., Barnett Adrian A., Spironello Wilson, 湯本 貴和
    霊長類研究 Supplement
    2021年 37 巻
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    果実の果肉は多くの霊長類が好む食物である.霊長類は,果肉と葉,果肉と昆虫など,果肉とそれ以外の食物を組み合わせた食性を持つことが多い.そのため,食性の種間比較をする際には果肉以外の部分が注目されることが多く,共通部分である果肉利用の種差はほとんど検討されてこなかった.しかし,果実には多様な形質があり,霊長類側の体サイズや栄養要求も様々である.そのため,どんな果実の果肉を選択するかという点にも種ごとに異なる戦略があると考えられる.本研究では,主に果肉と種子を食べるキンガオサキと,主に果肉と昆虫を食べるコモンリスザルの果肉選択基準の違いを解明することを目的とした.2019年3月から2020年2月の間,フリーレンジングのサキ二群とリスザル一群を追跡し,スキャンサンプリング法で採食物を記録した.二種が果肉を利用した果実および利用しなかった果実について,形態(果実と種子のサイズ,固さ,重量,種子の数),果肉中の栄養成分(粗タンパク質,粗脂質,炭水化物,粗灰分,中性デタージェント繊維),果肉中のフェノール含有量を測定した.これらの測定値を説明変数として,サキとリスザルそれぞれの果肉選択に与える影響を一般化線形モデルによる多変量解析で検討した.サキの果肉選択にはタンパク質含有量が影響しており,タンパク質がより多い果肉が利用されていた.一方リスザルでは,灰分がより少ない果肉が利用されていた.霊長類のタンパク源として一般的なのは葉と昆虫だが,サキはそれらをほとんど食べないことが知られ,代わりに種子を食べることでタンパク質を摂取していると考えられてきた.本研究の結果から,種子を食べることだけでなくタンパク質の多い果肉を選択することもサキの採食戦略の一部であることが示唆された.このように,種ごとの採食戦略の違いは特徴的な食物利用に限らず,普遍的に利用される食物である果肉の選び方にも現れるということが明らかになった.

  • *末續 野百合, 沓掛 展之
    霊長類研究 Supplement
    2004年 20 巻 P-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/30
    会議録・要旨集 フリー
    恒常的集団を形成する霊長類においては、個体間の葛藤を調整し長期的な社会関係を維持する仕組みが進化してきたと考えられる。その一つに、儀式的なあいさつ行動がある。本研究では東京都恩賜上野動物園(U群10頭)および横浜市立野毛山動物園(N群6頭)の飼育
    アビシニアコロブス
    Colobus guereza)を対象に、あいさつ行動と思われる3種の抱きつき行動(over-head-mount;以下OHM、mount;以下MT、embrace;以下EM)を調査し、以下の予測を検討した。(1) 抱きつきが親和的な個体間の結束を強める機能を持つならば、親密な個体間および血縁個体間で多く行われると予想される。(2) 抱きつきが個体関係の非対称性に関連するならば、抱きつきの方向性には個体間関係の非対称性が見られると予想される。(3) 抱きつきが仲直り・緊張軽減の機能を持つならば、攻撃交渉直後に集団内で抱きつきが高頻度で行われ、抱きつき後に体を掻くなど個体のストレスの指標である自己転位行動が減少すると予想される。観察された事例の過半数で直後にグルーミングが行われたことから、抱きつきが親和的な行動であることが示された。抱きつき回数と近接頻度・グルーミング回数・血縁度の相関は見られなかった。OHM・EMは年少個体から年長個体に対して多く行われ、月齢差との正の相関が見られた。また攻撃直後に、U群では1割、N群では3割の場合で攻撃の参加個体を含む抱きつきが行われた。これらのことから、抱きつきが年長個体に服従を示し社会関係を保つと同時に、個体の緊張を軽減する機能を持つことが示唆された。さらに他オトナオスが隣接して飼育されているN群のオトナオスはオトナメスに対して多くの抱きつきを行い、抱きつきが配偶者防衛として機能する可能性も考えられた。
  • 村田 浩一
    日本野生動物医学会誌
    1997年 2 巻 1 号 53-57
    発行日: 1997年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    抗ヒトCRPモノクローナル抗体による免疫多層フィルム法でサルCRP値の測定を試みた。試料として飼育下の霊長目6属12種47個体から採取した血清もしくは血漿67検体を用いた。マカク属, オナガザル属, テナガザル属およびチンパンジー属の健康個体はすべて1.0mg/dlを示した。よって, この境界値を本法によるCRP陽性値とするのが適当と考えた。抗ヒトCRP抗体を用いた本法によるCRP測定は簡便かつ迅速であり、霊長目の動物の臨床診断に利用できる。しかし, 腸炎や肝炎などを呈した疾病個体に1.0mg/dl以下の値のものが認められ, ヒヒ属では健康個体にも関わらずCRP高値を示していた。本法による診断と応用については, 動物種もしくは属別の検討が必要である。
  • ウガンダ・カリンズ森林からの報告
    橋本 千絵, 古市 剛史, 田代 靖子
    霊長類研究
    1999年 15 巻 2 号 129-134
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    Six primate species including chimpanzees (Pan troglodytes schweinfurthii) inhabit the Kalinzu Forest Reserve located in southwestern Uganda. Following an extensive survey of Uganda by Kano in 1992, Hashimoto carried out a population estimate for chimpanzees in the Kalinzu Forest in 1992-1993, and found that the density of chimpanzees was considerably high. Since 1997, we have conducted several studies to reveal relationships between habitat use by primates and forest types; including population census of chimpanzees by nest counts, biomass census for diurnal mammals, vegetation census, census for assessment of fruit abundance, and direct observations of chimpanzees and monkeys. We distinguished 4 forest types in the study area: mixed mature forest, Parinari dominant mature forest, Parinari dominant secondary forest, and Musanga dominant secondary forest. We found high population densities of primates including chimpanzees in Musanga dominant secondary forest where fruit of Musanga leo-errerae is available throughout the year. There was also a high density of chimpanzees in mixed mature forest, probably sustained by diverse fruits available for different season. A mixture of various vegetation types including both primary and secondary vegetations may support high density of primates in the Kalinzu Forest. However, too much human activities such as intensive logging and hunting may cause an unrecoverable damage for primates and other animals. Further studies will help to find out a manner of sustainable land management to maintain fauna and flora in the Kalinzu Forest.
  • 五百部 裕, 田代 靖子
    霊長類研究 Supplement
    2015年 31 巻 A14
    発行日: 2015/06/20
    公開日: 2016/02/02
    会議録・要旨集 フリー
    演者らは、既存の調査路を繰り返しゆっくり歩き直接観察した調査対象種を記録するという方法で、タンザニア共和国マハレ山塊国立公園やウガンダ共和国カリンズ森林において、中・大型哺乳類の生息密度を推定してきた。この方法の最大のメリットは、新たに調査路を切り開く労力がいらず、極めて低コストで調査対象種の生息密度を推定できることであり、定期的に資料を収集することで生息密度の変化も把握できることにある。一方で、同じルートを何回歩けば、信頼できる資料が収集できるのかといった点は検討されてこなかった。そこで本研究は、カリンズにおいて、比較的短い間隔で二つの時期に資料を収集し、この方法の問題点を検証した。小乾季の中ほどにあたる2014年2月と大乾季の終わりの8月に現地調査を行った。この調査では、長さ2.5kmのセンサスルート6本(うち1本は1.5km)を利用して、センサスルートを歩きながら発見した哺乳類種を記録するという方法によって生息密度の推定を行った。1日に二つのルートを歩き、2月はそれぞれのルートを3回ずつ、8月は4回ずつ歩いた。調査期間中に直接観察できたのは、オナガザル科霊長類5種(レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキー、アヌビスヒヒ、
    アビシニアコロブス
    )と森林性リス(種不明)、ブルーダイカーであった。このようにして得られた資料を用いてこの方法の問題点を検証するとともに、1997年度にほぼ同様の方法で行われたセンサス結果と比較し、カリンズの中・大型哺乳類の生息密度の変化を考察する。
  • *蔦谷 匠, *橋本 千絵, *米田 穣
    霊長類研究 Supplement
    2014年 30 巻 P21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/28
    会議録・要旨集 フリー
    生物体組織の炭素・窒素安定同位体比(それぞれδ13C値・δ15N値と表記)は,C3植物や陸上動物など大きなカテゴリーごとに,また植物では部位ごとに特有の値をとる.食物および消費者の体組織を同位体分析することで,それらの食物ごとの摂取比率を定量的に推定できる.本研究では,野生霊長類の食物摂取比率を定量的に復元することを目的に,ウガンダ・Kalinzu森林において,霊長類3種の糞と,食物となる動植物の同位体分析を行なった.2013年7-8月の1ヶ月間(乾季)に採取した試料を対象とした.
    植物において,平均的な果実(10種)のδ13C値は葉・髄・若芽(15種)にくらべて5‰程度高く,δ15N値には有意差は見られなかった.昆虫・鳥類・哺乳類など動物のδ13C値・δ15N値は植物より高く,生態系の栄養段階上昇にともなう効果と考えられる.糞では,チンパンジー(Pan troglodytes, n = 4),ロエストモンキー(Cercopithecus l'hoesti, n = 4),アヒシニアコロフス(Colobus guereza, n = 6)の順にδ15N値が高くなり,δ13C値には有意な差が見られなかった.他の霊長類において食物と糞の同位体比の差を調べた先行研究を参考にすると,本研究の結果は,この時期のチンパンジーの食性の大部分が果実によっていたことを示唆する.また,ロエストモンキーでは昆虫食,
    アビシニアコロブス
    では腸内発酵によって,それぞれ糞のδ15N値がチンパンジーより増加していると考えられる.
    今後,サンプルサイズ・対象を増やし,雨季にも調査を実施する必要がある.行動観察の結果もあわせて検討することにより.多種の霊長類が共存するKalinzu森林における食生態を多面的に復元する計画である.
  • *五百部 裕, *田代 靖子
    霊長類研究 Supplement
    2014年 30 巻 A11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/08/28
    会議録・要旨集 フリー
    ウガンダ共和国カリンズ森林において、中・大型哺乳類の生息密度に関する調査を行ったので、その結果を報告する。
    カリンズでは、1992年以来、チンパンジーを中心とした霊長類の社会・生態学的研究が行われている。こうした一連の研究の中で、この地域の生態系や霊長類と他の哺乳類の種間関係の基礎的な情報を収集することを目的として、1997年度に中・大型哺乳類を対象とした生息密度に関する調査が行われた。その結果、樹上性オナガザル類の生息密度は、植生によって異なることなどが明らかになった。
    一方2000年代に入って、チンパンジーを含む昼行性霊長類に救荒食物(フォールバック・フード)として1年を通して果実が利用されているMusanga leo-erreraeが大量に枯死したり、この地域で伐採活動を行っていた製材会社が撤退したりといった変化があった。そこでこうした変化によって、中・大型哺乳類の生息密度がどのように変化したのかを明らかにすることを目的として、2014年2月に現地調査を行った。
    この調査では、長さ2.5kmのセンサスルート6本(うち1本は1.5km)を利用して、センサスルートを歩きながら発見した哺乳類種を記録するという方法によって生息密度の推定を行った。1日に二つのルートを歩き、調査期間中にそれぞれのルートを3回ずつ歩いた。調査期間中に直接観察できたのは、オナガザル科霊長類5種(レッドテイルモンキー、ブルーモンキー、ロエストモンキー、アヌビスヒヒ、
    アビシニアコロブス
    )と森林性リス(種不明)であった。このようにして得られた結果を1997年度の調査結果や、ほぼ同様の方法で行ったタンザニア共和国マハレ山塊国立公園で得られた中・大型哺乳類の生息密度に関する結果と比較する。
  • 久世 濃子, 金森 朝子, 山崎 彩夏, 田島 知之, 蔦谷 匠, Mendonça Renata, Bernard Henry, 木下 こづえ
    霊長類研究 Supplement
    2021年 37 巻
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/22
    会議録・要旨集 フリー

    東南アジアに生息する大型類人猿のオランウータンは野生下での出産間隔が6~9年(平均7.6年)であり,霊長類の中で最長である(van Noordwijik et al. 2018)。2017年の日本霊長類学会における我々の発表では,オランウータンは少なくとも栄養状態が悪い時に初期流産している可能性は非常に低いことを報告した。本研究では,2019年に発生した2度目の大規模な一斉果実季の前後のデータを追加し,次の3つの仮説を検証した:(1)もともと(同じ土地を利用している)雌の妊娠が同調しており,一斉結実期にタイミングが合う場合も、合わない場合もあるのか、(2)雌は果実生産量が上がった後に妊娠するのか、(3)果実生産量が上がる前に妊娠しているのか(果実生産量の上昇をあらかじめ予測しているのか)。調査地はボルネオ島マレーシア領サバ州ダナムバレイ森林保護区内のダナム川の両岸2km2の一次林で,2005年3月~2020年3月に計180ヶ月間,毎月平均15日間,オランウータンを探索及び追跡し,直接観察により妊娠の有無を記録した(陰部の腫脹によって妊娠を判別し,ヒト用簡易尿検査キットも補助的に用いた)。また1ヶ月に1回計11kmの調査路を歩き,落下果実量を調査した。その結果,7頭の雌の妊娠12例中9例が,2010年(5例)と2019年(4例)の大規模な一斉結実季があった年に観察され,それ以外の年の妊娠は3例のみだった。3例中2例は小規模な 一斉結実があった年に妊娠しており,残り1例は出産直後に第一子を失った雌の2回目の妊娠であった。 また2019年の一斉結実期の妊娠のタイミングは,ほとんどが一斉結実期前だった。以上により,仮説(1),(2)は否定され,仮説(3),すなわち雌の妊娠は果実生産量が上がる前に成立することが支持された。 発表では,一斉結実を予測している可能性やその方法について考察する。

  • 岩本 光雄
    霊長類研究
    1987年 3 巻 1 号 59-67
    発行日: 1987年
    公開日: 2009/09/07
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  • 松田 一希
    心理学評論
    2016年 59 巻 1 号 114-117
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/04/13
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    Non-human primates live in a variety of habitats and exhibit diverse social systems. They vary in demographics (group sizes and age-sex class composition); as well as social cohesiveness. Therefore, inter and intra-specific variations in the behaviours of wild primates are commonly observed, resulting in difficulties with generalizing species- or group-specific behaviours. Despite this, studies investigating general patterns of primate behaviours and social systems often receive much attention in high impact journals, with a disproportionate decrease in priority for descriptive and/or case studies, such as observations of predation events on primates, or anecdotal descriptions of unique behaviours. This seems to ignore the fact that most comprehensive models for primates, such as socio-ecological models, were formulated based on long-term accumulation of simple descriptive studies and/or case studies. The general academic values for scientific publication need to be re-examined, with a suggested priority shift back towards the publication of basic scientific information, in order to contribute to further development in the field of primatological science.

  • 五百部 裕
    霊長類研究
    1997年 13 巻 3 号 203-213
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/09/07
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    Hunting and meat-eating behavior by the genus Pan are reviewed from the perspective of the prey species. These behaviors have been reported for wild chimpanzees (Pan troglodytes) at 14 study sites, and include all three sub-species of the chimpanzee, in population from West to East Africa in environments from savanna to rain forest. The main targets of hunting and meat-eating by chimpanzees are non-human primates: of 12 study sites where prey species were identified, non-human primates other than chimpanzees were hunted or eaten by chimpanzees at 11 sites. Hunting and meat-eating by wild bonobos (Pan paniscus) have been reported at three study sites. The targets of hunting and meat-eating were restricted to small mammals such as flying squirrels or infant duikers. Interspecific relationships between the bonobos and sympatric nonhuman primates, which are the main targets of hunting and meat-eating by chimpanzees, were non-antagonistic. The common ancestor of Pan and humans may have acquired its meat-eating habit in a forested environment since gorillas and orangutans do not hunt. It seems that hunting and meat-eating played an important role in human evolution after the appearance of Homo.
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