モロッコ王国におけるハンセン病対策は, 国立中央病院と14の地域機関が担当し, これらは各保健所とも協力して, 本病に対する偏見の除去に努めてきた. 国内のNGO (AMAAF)は, 患者と患者家族の生活全般を援助し, 彼らの社会的地位の向上に貢献した. 当国の治療方針は, 独自の多剤併用療法とその後のDDS単剤治療を組み合わせたもので, 導入以来16年経過した現在まで, 同治療での再発者はみられていない. 1980年に推定された高い有病率に比して, 近年0.4/10,000と著明に低下した理由として, 本病患者に対する偏見の消失と上記治療方針の有効性に基づく自主的な受診の促進が, 早期治療による感染源の減少をもたらしたことによると考えられた. しかし山岳地帯には多発地帯が残存し, 今後も強力な対策維持が必要である. 当国ハンセン病対策活動は, いまだ多数の患者を抱える近隣西アフリカ諸国に対して, 1つの規範となる可能性が考えられた.
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