同所的に生育する花外蜜腺をもつカラスノエンドウと花外蜜腺をもたないスズメノエンドウにおいて、アワヨトウ幼虫を用いたbioassayにより化学的防御の強さを推定し、また両種の株上の昆虫群集を比較し、化学的防御と
アリ
防御による被食防衛の効果を推定した。 スズメノエンドウにくらべカラスノエンドウ葉中のC/N比は低く、アワヨトウ幼虫の摂食活性は高かった。したがって、スズメノエンドウよりもカラスノエンドウでは化学的防御が弱く、葉食性昆虫にとって良的な資源であると考えられた。野外のスズメノエンドウの株上にはほとんど
アリ
はみられなかったが、カラスノエンドウ株上には、アミメ
アリやトビイロケアリ
、クロヤマ
アリなどのアリ
類がみられた。
アリ
がいない場合にくらべ、
アリが頻繁に訪れるカラスノエンドウ株上には葉食性昆虫やアリ
を随伴しないアブラムシの個体数が少なかった。さらに
アリ
はカラスノエンドウの主要な植食者であるアルファルファタコゾウムシの幼虫を排除するため、カラスノエンドウの花外蜜腺は
アリ
防御の機能を持つと考えられた。しかし、
アリ
の誘引効果はカラスノエンドウ生育地間で大きく異なり、全体の約66_%_のカラスノエンドウにしか
アリ
はみられなかった。
アリ
がいた場合でも、スズメノエンドウにくらべ植物上の植食性昆虫の個体数は多い傾向がみられた。このように被食防衛の側面からみると、他の防衛戦略にくらべ花外蜜腺による
アリ
防御は、それほど効果的ではないと考えられた。これらの結果から、カラスノエンドウの
アリ
による被食防衛の意義について考察した。
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