臨界温度, 臨界圧力は化学プロセスの解析や設計に必須の物性である。したがって, 臨界温度, 臨界圧力については各種の推算法1)~4),6),8),9),15)が提案されているが,
i-アルカンを含め広く炭化水素の推算を行うためには異性体を区別する必要があり, このため標準沸点が多くの場合用いられている。本研究は物質の分子量と化学構造のみに基づいてアルカンおよび
アルケン
の臨界温度, 臨界圧力および標準沸点の推算法を示し, 既往の方法による推算結果と比較検討したものである。
まず
n-アルカン, 1-
アルケン
の臨界温度, 臨界圧力および標準沸点の基本推算式として分子量
Mのみを含むEq. (1) を採用した。また
i-アルカンならびに1-
アルケン以外のアルケン
(
cis-
アルケン
を除く) の基本推算式は, 化学構造式に基づいて計算する Platt 数
pおよび Wiener 数
wを含むEq. (2) を採用し,
cis-
アルケン
に対しては分子量のみを含む式を用いた。本研究で用いたアルカンおよび
アルケン
の臨界温度, 臨界圧力ならびに標準沸点の実測値はすべて Reid, Prausnitz および Poling の成書13)のデータベースを使用した。
20種の
n-アルカン (C
1~C
20) および44種の
i-アルカン(C
4~C
10) の臨界温度データを用いて Eq. (1) およびEq. (2) のパラメーターを決定した。
n-アルカンおよび
i-アルカンの臨界温度の推算式をEqs. (3), (4) に示す。推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.7K, 1.4K, 最大偏差は2.1K, 4.2Kであった。また16種の1-
アルケン
(C
2~C
18, C
16を除く) および20種の1-
アルケン以外のアルケン
(C
4~C
8) の臨界温度データに基づいてEq. (1) およびEq. (2)のパラメーターを決定した。1-
アルケン
および1-
アルケン以外のアルケン
の臨界温度の推算式をEqs. (5)~(7) に示す。推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.7K, 3.5K, また最大偏差2.1K, 10.7Kであった。同様にしてEqs. (1), (2) を用いて臨界圧力の推算を行った。
n-アルカンおよび
i-アルカンの臨界圧力の推算式をEqs. (8), (9) に, 1-
アルケン
および1-
アルケン以外のアルケン
の推算式を Eqs. (10)~(12) に示す。
n-アルカンおよび
i-アルカンの推算値と実測値との絶対算術平均偏差はそれぞれ0.017MPa, 0.027MPa, 最大偏差は0.045MPa, 0.066MPaであった。1-
アルケン
および1-
アルケン以外のアルケン
は絶対算術平均偏差はそれぞれ0.016MPa, 0.048MPaであった。また標準沸点の推算も同様にして行った。
n-アルカンおよび
i-アルカンの標準沸点の推算式Eqs. (13), (14), 1-
アルケン
および1-
アルケン以外のアルケン
の推算式をEqs. (15)~(17) に示す。
n-アルカンおよび
i-アルカンの推算値と実測値との絶対算術平均偏差が0.3K, 0.6K, 最大偏差は0.9K, 2.5K, 1-
アルケン
および1-
アルケン以外のアルケン
では絶対算術平均偏差はそれぞれ0.2K, 4.0K, 最大偏差が0.4K, 11.3Kであった。
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