長野県白馬村周辺の山岳地において発生した5つの雪崩の破断面での積雪断面観測と1999/00~2003/04冬期に実施した6つの定点での積雪断面観測結果(140ピット)を基に対象地の雪崩発生に関わる積雪特性について考察した.破断面の観測によると,雪崩の発生原因は,新雪の弱層(2例),表層付近に形成されたこしもざらめの弱層(1例),凍結したざらめと新雪との弱い層境界(1例),地面付近に形成されたこしも・しもざらめ(1例)によるものであった.定点での断面観測により新雪,表層のこしもざらめによる弱層および弱い層境界は対象地内の広域で観測された.新雪による弱層は観測期間において最も高頻度で年により較差なく観測されたのに対し,表層のこしもざらめによる弱層および弱い層境界は観測される頻度が低く,年により較差もみられた.一方,地面付近に形成されたこしも・しもざらめは吹き払い地において局所的に形成されるが,高頻度で年により較差なく観測された.過去10冬期の気象データから北米において使用されている雪崩気候区分を試みたところCoastalに区分され,観測結果を支持する結果となり,この区分が日本の山岳地にも適用できる可能性があることが示唆された.
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