マツアワフキ
Aphrophora flavipesの幼虫期の生態を,東京大学演習林田無試験地(東京都田無市)に植栽された6年生のアカマツ12本,クロマツ13本で1984年に調査した。幼虫は4月末から5月末にかけて孵化し,孵化開始後約60日で最初の成虫が出現した。幼虫の頭盾幅を測定したところ,齢間で重なりが見られたが,体格も同時に考慮すると5齢期を区別できた。幼虫の作る泡は新梢と1年枝に限って見られ,前者ではとくに基部に初期の幼虫が,後者では末端部に後期の幼虫が多く存在した。一つの泡にしばしば複数の幼虫が潜み,平均値は終始1より有意に大きく,幼虫には集合する傾向があった。枝階別の垂直分布を調べると,6月に入ってから大きな変化があり,幼虫が枝から枝へ移動していることが示唆された。枝階に基づいて層化して求めた枝1本あたりの平均密度は5月21・22日頃にピークに達し,アカマツで7.8匹,クロマツで6.7匹であった。RICHARDS-WALOFF法によって求めた枝1本あたりの孵化個体数は,アカマツで10.5(木1本あたりでは290匹),クロマツで14.0(木1本あたり328匹)であった。1日あたり生存率はアカマツで0.990,クロマツで0.970と比較的高かった。調査木上に見いだされた捕食性昆虫は泡の中に侵入せず,捕食例は確認できなかった。
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