現代のバイオリン製作者と演奏家が追及して止まない至高の音を実現した名工
アントニオ
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ストラディバリ
。その音作りの職人的技術は謎が多いと言われるが,背景には素材の化学と物理が音響を支えてきた科学的根拠がある。小氷期の気候で育った緻密な木材を使い,その木質に合わせた厚み分布の調整,そして木質を保存するための天然ニスの調製と塗布。これらの要素が1つになり,数百年の乾燥を経て比類ない音質につながっている。それでも多くの神秘の部分がバイオリン研究の対象となっている。本稿ではその音作りに秘められた化学を紹介する。
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