特産物の肉質向上とエコフィード活用を目的として,デュロック×ニホンイノシシ(
Sus scrofa leucomystax)の一代雑種であるイノブタを用い,発育,肉質に対するリジン含量が低くなったパン主体飼料給与と性の影響を調べた。10頭のイノブタを2群に振り分け,一方には市販の肉豚肥育用配合飼料(対照区:リジン0.60%)を,他方には低リジンのパン主体飼料(低リジン·パン飼料区,リジン0.42%)を給与した。飼料摂取量,日増体量は低リジン·パン飼料区が対照区に比べ低下した(DG 0.46 vs 0.29,
P<0.05)。枝肉重量,枝肉歩留,背脂肪厚は去勢が雌より増加する傾向を示した。胸最長筋の筋肉内脂肪含量は,対照区2.47%であるのに対し,低リジン·パン飼料区では3.97%と増加した(
P<0.01)。胸最長筋の脂肪酸組成では,低リジン·パン主体飼料によりC16:0,C18:0がやや低下し,C16:1,C18:1がやや増加した。また,C18:2は雌が去勢雄よりわずかに増加した。剪断力価,調理損失は低リジン·パン飼料区が対照区よりやや増加したが,性の影響は認められなかった。以上の結果より,デュロック×ニホンイノシシの一代雑種であるイノブタの筋肉内脂肪含量は通常2.5%程度で,リジン含量の低いパン主体飼料を給与すると,飼料摂取量,日増体量が低下するものの,筋肉内脂肪含量が4%近くまで増加すること,さらに性の影響では,雌より去勢の方がやや日増体量が優れ,背脂肪厚が厚くなる傾向にあり,背脂肪の融点がやや低くなることが分かった。
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