高層建物によって形成される景観と、写真や透視図による印象とは必ずも一致しない。その主な理由としては、写真や透視図が二消点法であったり三消点法であっても仰角を恣意的に決定しているために、実際に人が捉えた景観との問に大きな隔たりが生じているからである。本研究は透視投象法を形成する主要な要素として、主視線の仰角と視点距離・建物の高さ・形状の複合指標である有効対角画角との間の関係を明らかにすることを目的として、大判カメラにより仰角を段階的に変化させた写真と、人が同じ場所で受ける印象との差異を調べたものである。高層建物についての静的景観シミュレーションメディアとして有効な写真または透視図の構成について、次のような結論を得た。
(1) 二消点法と三消点法による写真を比較することで、高層建物には二消点法が不向きであり、仰角を適切な値とした三消点法がより優れていることが明らかとなった。
(2) 三消点法による写真または透視図に適切な仰角を有効対角画角の関数として提示した。
(3) 実験によって得られた「仰角が10゜以上であるものは不適切である」という仰角の限界についての考察は前項の関数からも検証した。
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