エリコイド菌根はツツジ科植物内の特定の亜科の根中で表皮細胞のみに形成されるコイル状の菌根である. エリコイド菌根を形成する植物においてツツジ科植物についての研究は行われることが多いが,その他の科の植物についてはよく分かっていない. 本研究ではその代表例として特にツツジ目に含まれる
イワウメ科
のイワウチワ,オオイワカガミの菌根に着目した.
イワウメ科
の植物は従来の分類体系では1科でイワウメ目を作るとされていたが,DNA塩基配列データを加味した上で高等植物を分類したAPG植物分類体系ではツツジ目に入り,エゴノキ科やハイノキ科に近いとされる. 山地の岩場や高山でその姿を見ることが多い.
ツツジ科以外の植物においてもツツジ科植物と同じ種類の菌類が菌根を形成し,植物間の菌根ネットワークを作る例が近年見付かってきており(Bergero
et al. 2000など),
イワウメ科
でもそれが形成されることにより他の植物と養分のやり取りなどを行っている可能性がある.
これら
イワウメ科
植物の菌根の形態を調べたところ,菌糸コイルが形成されている根の太さなどに若干の違いはあるが,
イワウメ科
植物もツツジ科植物同様にエリコイド菌根様の菌根を形成し,そのコイルは表皮細胞に限定されていることがわかった. そこで菌根菌の同定を行い, また周辺に生育する樹木の根をサンプリングし,その根内の菌根菌を比較することで
イワウメ科
植物との間で菌根ネットワークを形成する可能性のある植物及び菌について調べた.
イワウチワは鳥取県においてレッドデータブックに記載されている種であり,その菌根について調べることはイワウチワの保全につながるであろうと推測される.
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