本研究は、これまでわが国では研究例の少なかったカリグラフィの歴史に着目し、その発達過程を追いながら、手書き書体の特徴をとらえることを目的とする。古代から17世紀に至るまで、ローマン・ラスティック体、アンシャル体、ハーフ・アンシャル体、
インシュラー体
、カロリング朝小文字体、ゴシック・クアドラータ体、ヒューマニスト体、カッパープレート体への発達を追い、個々の時代における書体の特徴を考察した。カリグラフィの発達は、大文字と小文字の分離による可読性の獲得と、書写の速度の向上という大きな二つの機能を備えるとともに、手書きによる優美な曲線を描いてその時代の様式を形づくった。これら繊細な特徴には、活字書体にはない文字の本質が潜んでいると結論づけた。
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