本論文は, 並列Lispシステムとその実現方式, 特に並列構文の効率的評価法であるスティール評価法の実現とその実験評価について論じたもので, 7章からなる.第1章は「序論」である.第2章の「並列Lisp言語PaiLisp」では, 並列Lisp言語PaLispと並列Lispプログラムの実行上の問題を述べている.第3章の「マルチスレッド方式によるPaiLisp
インタプリタ
の実現」では, 並列構文の評価法としてEager Task Creation(ETC)を採用し, マルチスレッドを用いて実装したPaiLisp
インタプリタ
PaiLisp/MT(ETC)の実現について述べている.第4章の「スティール評価法に基づくPaiLisp
インタプリタ
の実現」では, 伊藤教授提案の様々な並列構文の効率的評価法であるスティール評価法(SHE)と, Halsteadら提案のfuture構文の効率的評価法Lazy Task Creation(LTC)のPaiLisp/MT(ETC)を基にした実現について述べ, SHEがプロセス過剰生成問題を解決する優れた並列評価法であることを論じている.第5章の「PaiLispのプログラミング環境」では, 簡便なPaiLispコンパイラや逐次Schemeプログラムの制約的自動並列化システムの試作について述べている.第6章の「PaiLispシステムの実験評価と応用」では, 共有メモリ型並列計算機DEC7000上で実現した3つの評価法(ETC, SHE, LTC)を備えたPaiLisp/MTシステムを実験評価し,
インタプリタ
, コンパイラともスティール評価法がETCやLTCより優れていることを示している.第7章の「結言」ではまとめと今後の課題について述べている.
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