ドイツの空間整備政策は,先進国の代表的な地域政策として研究されてきた.本発表では,ドイツの地域政策の法的基礎をなす空間整備法から空間整備政策の理念を見出し,ドイツの社会資本整備の現状を考える.この空間整備法は,ドイツの地方分権体制に基づいて,市町村や州が政策主体となることを規定し,さらにそれは全体空間と部分空間を環境に配慮しながらバランスよく発展させることを規定している.したがって空間整備法は,空間整備政策が市民の福祉を高めるような生活空間をどのようにつくるのかという哲学を示しているのである.ドイツでは,空間整備法に基づいて社会資本整備が展開されているわけであるが,生活関連の
インフラストラクチャー
の整備が単に生活空間の高質化だけを目的としているのではない.
インフラストラクチャー
の整備は,生活空間の高質化を実現するとともに,それによって経済立地における非経済的な立地因子を改善することを通じて,経済活動の立地誘引ともなりうる.すなわち,生活空間の高質化は下部構造としての地域経済を経済立地によって活性化し,それが地域経済への波及効果となり,生活空間をさらに豊かにすることを可能にするのである.こうして
インフラストラクチャー
の整備は,産業関連と生活関連というように区分して考えるのではなく,生活空間を軸にして考える必要がある.ドイツの
インフラストラクチャー
は多様であるが,本発表では生活空間に直接関係する都市におけるインフラ整備の事例を紹介する.対象地域は,ドイツのいくつかの都市であるが,インフラ整備によって生活空間の高質化を実現するとともに,新たな経済立地によって地域活性化を図ったことを明らかにする.
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