関西新空港の建設など,大阪湾では大規模な臨海部開発構想が目白押しである。その多くは,高度成長期に主流であった基礎資源型工業用地の造成とは異なり,神戸のポートアイランドなどに代表される都市型複合開発である。これらは,公害の元凶とされた前者に比べ問題が少ないように思われている。しかし,大規模な埋め立てによることから,水域面積の減少による気温の上昇,水質浄化力の低下など環境への影警も無視できない。一般には,低コストで自治体財政への寄与が大きいと思われているが,国庫補助などが考慮されていないことによる誤解であり,むしろ財政負担を増大させる危険もある。また,これらの開発でつくられた住宅地は,人工島という形態や複合開発のしわ寄せを受け,居住者に生活不便を強いることになっている。とりわけ,周囲を外貿コンテナ埠頭で囲まれたポートアイランドや大阪南港ポートタウンでは,危険物問題が深刻である。さらに,マリーナなど海洋レジャー施設の建設による海難事故の増加が懸念される。このような問題にもかかわらず事実上開発が野放しにされている状況は,計画や管理の非民主性に由来する。沿岸域の民主的計画管理の枠組みを早急に確立する必要がある。
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