さきに,モミ属および五葉松類の植栽試験について報告したのであるが,ひきつづいてオウシュウト
ウヒ
の植栽成績をとりまとめた。ト
ウヒ
類の導入試験はストローブマツなどとおなじように1908年来試験地が設定され,オウシュウト
ウヒ
(Picea Abies KARST.)のほかに小面積試験地としてカナダト
ウヒ
(P.canadensis B.S.P.),エンゲルマント
ウヒ
(P. Engelmanii ENGELM.),朝鮮ハリモミ(P. koraiensis NAKAI)プンゲンスト
ウヒ
(P. pungens ENGELM.),シトカト
ウヒ
(P. sitchensis CARR.)の植栽記録があり,とくにオウシュウト
ウヒ
は郷土樹種であるエゾマツ(P. jezoensis CARR.),アカエゾマツ(P. Glehnii MAST.)よりはるかに多く200ha以上に植栽された。オウシュウト
ウヒをのぞく他のトウヒ
類は生育が悪く,カナダト
ウヒ
がわずかに残在するだけで,すべて枯損消滅している。オウシュウト
ウヒ
は1940年ぐらいまでの植栽記録があり,なかでも,もつとも多く植栽されたのは大体1930年ぐらいまでで,この頃からトドマツ(Abies sachalinensis MAST.)エゾマツ植栽が多くなつている。この事情については,種子が南方系だつたとか,手当り次第にどこでも植えたために成績が悪かつたということがいわれているが,このオウシュウト
ウヒ
を植えていない時期が第2次大戦中で,この時期の植栽面積もそれほど多くないこともあつて,現在では,不成績の原因をただす資料はない。そのご1954年に発生した15号台風や1956〜57年にかけての寒害では樹高10^mにも達するものまで,場所によつては全林被害をうけ,これらの被害木には2次的な虫害なども発生したので,残存するものも大半が伐採または伐採予定となつている。調査にあたり,御援助をいただいた演習林長宮脇恒教授,測定を手伝つていただいた現地派出所職員の方々にあつく感謝の意を表します。
抄録全体を表示